からくりピエロ
時計台の時計の針がゆっくりと動き、またひとつ、新たな時を刻み始めた。待ち合わせは、2時間前…彼はもう来ない。もうとっくにそんなことはわかっていた。ここに1人、つまり彼は…それが答えでしょ?といない彼に向かって僕は問うた。街ゆく人も、流れる雲も。その全てが、僕の事を嘲笑っているように感じられた。
ここで認めること。それは簡単なことのはずなのに、今の僕にとってはとても困難なことのように思えてしまう。ここで認めてしまったら、この恋の全てが終わってしまうのだ。でも、認めることで前に進めるのだ。なのに僕は…
やっぱり信じられない。信じたくない。と思ってしまう。これは紛れもない真実で現実なのに。やっぱり…君の中で、きっと僕は道化師のような存在だったのだろうか?否、きっとそうだ。
ああ、まるで今の自分はあの時のピエロのようだ。あそこでずっとずっと回って回って…そしていずれは回り疲れてしまう。周り疲れたら息が切れ、止まってしまうだろう。
そう…これが悲しい僕の末路なのだ。君という恋しくて愛しい人にだどりつけないままで…
例え僕にどんなことが起ころうとも、僕を乗せて何も知らないような顔して、地球は回る。あの時の時を刻みつける時計台のように、時間をも乗せて回る。1秒間だけ呼吸を止めて、その言葉を聞いた後、何も言えずに立ちすくむのは僕ただ1人だった。
君と僕が巡り会うこと。それは偶然でもあり、きっとどこかの運命なのだろう。知らない方がいいと知っていたのに知ってしまった。そう…君の温もりに。その笑顔も、その仕草も…今となっては僕が壊れてしまうだけの辛くて悲しくて、見たくないものとなってしまった。
回って回って回り疲れて…ああ…やっぱり息が…息が、止まる…
息が‥息が‥切れたの‥ああ、もうやめよう。此処でずっと待っていても、僕が壊れてしまうだけだ…
そう、僕は…君が望む都合の良いピエロのような存在だ。だったらもういっそ…君が思うままに操って好きなように動かしてよ…
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!