「何も言わずに〇してください」第1話
俺、早乙女大雅はどうやら転生したらしい。目を覚ますと、そこは見知らぬ場所だった。蜘蛛の巣だらけで窓一つもない部屋。
医者「……ハァやっと目を覚ましましたか…」
面倒くさそうな顔をしてため息をつく男。服装からして医療関係の人だろう…
医者「…全く、ほんとに懲りない方です ね…」
ここはどこだ?…何故俺は、知らない男に呆れられてるんだ?
医者「……とにかく、私はもう失礼します ね」
男は睨みながら、そう言う。俺はとにかく状況を整理しようと立ち上がる。
……と、体に激痛が走る
??「あ゙がっ゙ゔゔぁっ」
目の前が真っ暗になる。すると俺の頭に流れてくる…俺じゃない別の人の記憶。
思い出した…俺は
セトリック・クリストフ
愛称セト
俺の読んでいた小説の悪役
…この部屋にいるってことは、もう断罪された後か…。セトリックが断罪されたあとの話なんて、小説には無かったぞ…
……いわゆる忘れられた存在。
痛みに耐えフラフラしながら、やっとの事鏡の前に立つと…
何だよ……これ?
首には何度か自殺しようとした縄の跡。手首には痛々しい傷が沢山あった。よく見てみると身体中にも手首と同じような切り傷が見つかった。
いくら悪役でも、人を殺した訳でもないのに……ここまで追い詰められてたんだな…
とにかく他に助けを呼ぼう…いくら悪役で、国から見放された存在でも…一様貴族なんだから使用人の1人ぐらいいるだろ…
セト「あ゙ゔゔぁっ」
話そうとしたら次は喉に激痛が走った。……その理由は何となく分かる。首にあった縄の跡。
メイド「……」
メイド「…いつも通り…食事はここに置い ておきますね」
メイド「…気が向いたら食べてください
動けないと思いますけど…フフッ」
明らかに馬鹿にしてる話し方…
メイドは黙って部屋から出ていった。
それから俺は、今後どうするかを考えた。そこで1つ思いついたのが、
死んだら元の世界に戻れるんじゃね?
そうして俺は、セトリックが隠してた縄を首に巻きつけ自殺した。
そして
また
医者「ほんとに懲りない方ですね」
デジャブ?
俺は何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も自殺した。
でも結果は同じ
医者「ほんとに懲りない方ですね」
俺は毎回同じ時間に戻ってしまう。
メイド「ここに置いておきますね
ま、動けないと思いますけどフフッ」
そして、俺は今度は外に出てみることにした。服は…着替えがないからこの血の染みたボロボロに破れた服を着るしかない。
俺は、しばらく森の中を歩いていた。
そうすると、1人の男性と目が合う
ウィル「……セト様!?」
ウィリアム・シェイクスピア
愛称ウィル
この小説の主人公であり、この俺セトリックが愛した人。
ジル「ウィル!!その男から離れろ!!」
そう言って俺に剣の先を向ける男。
ジル・ヴィルヌーヴ
愛称ジル
ウィル「ジル!落ち着いて……セト様の体 を見て!!」
ジル「……ハッ黒魔法に手を出した者には当 然の報いだな」
そう言って、俺を上から見下ろす男。
*黒魔法*…悪魔と契約することによって手に入る魔力。昔、悪魔と契約した者によってこの国が滅びかけたことがあった。それからこの国以外でも黒魔法の使用を禁止されてる。
ウィル「……そ、それは……とにかく、セト様の体の傷が心配です… 」
そう言って、ウィルは俺に両手をかざす。そうすると、まるで魔法がかかったかのように綺麗な光が点る。
*聖力*…傷を治したり、神にお祈りを捧げたり、神託を聞く時に必要な力。使える者は限られている。極たまに平民でも聖力を持って産まれる子供がいる。ウィルもその1人である。
ウィルはこの国の聖王である。この力があれば、死んだ者以外の全ての傷を治せる程、歴代最強の聖力の持ち主だ。
ウィル「…そ、そんな……ぼくの聖力が効 かない…?」
ジル「ウィルの聖力が効かない事なんかあ
るのか!?」
ウィル「……セト様!
…………神殿に行きましょ う!!」
は?
そして結局…
神官1「あの者がここに来るなんて……」
神官2「神のお怒りを買うことになるぞ…」
ウィル「喋ってないないで、仕事をしなさ い!!」
神官1「せ、聖王様……申し訳ございま せん」
そして俺は、ウィルの部屋に連れてかれた。
ウィル「…セト様、僕から提案があります」
ウィル「シイナ国へ参りましょう」
*シイナ国*…他の国に比べて小さい国だが、聖力を持つ者が多い国。
ウィル「もしかしたら、セト様の傷を治せ る者がいるかもしれません!」
シイナ国……セトリックの婚約者が住まう国。
ジェラルド・フォード
愛称ジェド
……セトリックの婚約者であり、シイナ国の皇帝の2番手の権力者とされている。
そして、ジェドの持つ剣…魔法さえも打ち切る事が出来る聖剣。
……もしかしたら、ジェドの剣なら、俺を殺せるかもしれない…
その期待を胸に抱いて、俺はウィル達とシイナ国へ向かうことにした。
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