# 腐った果実は二度と実らない
irxs¦水病み¦自己肯定感低¦比較要素、疲弊的発言有¦OD¦嘔吐¦
※ 地の文多め
リクエストから失礼します。
水side
―――
深夜の1時半。
少し表情筋を柔らかくしよう、今が素を出せる時間帯だ。
水「 はああぁぁあぁ… 」
机に顔を突っ伏して項垂れる。
今日の出来事を長い長いエンドロールのように脳内で流す。いや、流すと言うより流れている、流れてしまっているの方が正しいか。
だがそもそも何が正しいのかすら曖昧な僕だ、何を考えたって正解には辿り着かないに決まってるでしょ
水「 … 」
あーだめだ、考えれば考えるだけ心が詰まる。
思い出したくもない部分も多いはずなのに、嫌と思えば思うほど気にして考えずにはいられなくなってしまう。
水「 気持ち悪くなってきた… 」
メンバーとの少ししたぶつかり、いや多分向こうは僕を心配して気にかけてくれたんだ、それを僕は上手く受け取れなくて勝手に被害者面をしているだけ。
―――
― 5時間前
桃「 いむ、ちょっとお願いごとがあるんだけど 」
今日ものびのびと編集編集、なんてパソコンとにらめっこをしていたら適当に投げてあったスマホに着信が入る。
滅多に鳴らない通知音にびっくりするなりスマホを手に取るとそこには “ ないちゃん ” と敬称略された社長からの着信だった。
いつもの声色と変わらず「 ちょっと会社来れる? 」という確認電話。
勿論断る義理もないし、なんなら行かないという選択肢の理由も見つからない為「 いいよ 」と急ぎ足で準備をした。
水「 …なんかミスでも犯した? 」
わけも分からずただ呼び出される。
それがどれだけの不安なの彼は分かってるのだろうか、僕がどんな気持ちでそれを受け取ったのか。
水「 …ま、考えたって無駄か 」
支度も済み急ぎ足で本社へと向かう。
予定の電車にも乗れ、ぼーっと流れる景色を眺めていたからかいつも以上に早く会社へ着いた感覚があった。
ただ着いたのは良いものの、どこへ行けばいいのか、待ち合わせの事も話していなかったので一本の連絡を入れる。
直ぐについた既読。彼からは “ 会議室で待ってて ” とのことなので必然的にだだっ広いオフィスで1人佇む時間が設けられた。
水「 …… 」
この時間が嫌いだ。
用件も言われずただ呼び出されてそこで待たされる。
どんな顔で僕に会いに来るのか、どんな声のトーンなのか、はたまた何人で来るのか、目つきはどうなってるのか、考えれば考えるだけ胸の鼓動が早まり食道が疼く。
水「 …それにしても、時間の問題かなぁ 」
大きなガラス窓から暗いオフィスに差し込む色とりどりな街灯。
それをバックにエモく感じる所もあるが、その灯りは僕とは対等になっている。
街灯に紛れる僕の影、一点を見つめながらただ機械的に過ぎてゆく時を感じながら突っ立っていると、一室にギィと音を鳴らしながら扉が開いた
桃「 いむごめん遅くなった!!自分から呼んでおいてほんとごめんな 」
ないちゃんの肩が小刻みに震えている。
きっと急いで来たからだろう、そんなないちゃんを咎める資格なんて僕にはない
水「 ううんっ、大丈夫だよ 」
今の彼の様子から見て大層な事ではなさそうだ、確率的に怒られるトーンでもなく何ともない感じ。
そんなちょっとした所にも安堵する。
水「 …で、お願いって何?何かあったの? 」
桃「 あーそうそう、あんさ、初兎が実家帰んなきゃいけんくて今週配信出来ないんよね、だから代わりに補って欲しくて 」
水「 今週…?えっ、それっていつ… 」
今週か
日にちによっては断らないといけない、でも断る事が出来ないんだよ。人様からの願いを無下にしたくないから、だからお願い被んないで
桃「 えーっとね、んー…3日、かな? 」
急いでメモアプリを開く。
あれ、3日っていう確か病院の予定が入っているはず。まずい、被ってしまった。
水「 っえーっと…その日、予定が入ってて… 」
17時に予約ではあるがとても混雑する所だ、配信には到底間に合わない。
それにこの日を逃したら僕が持たない、今この薬があるお陰で何気なく過ごせているのだから
桃「 ……予定、?配信は夜からだけど…どうしても無理な感じなの?それだったら全然いいんやけど 」
流石ないちゃん、僕にとって痛いところ、一般的から見て鋭いところを突く
水「 あっ、えっと、その日あそこの大学病院行かなくちゃいけなくてさ…w、ほら、あそこ混むじゃん?だから配信間に合わないんだよね 」
咄嗟に出た言葉が言い訳チックになってしまっているが嘘ではない。
ないちゃんも詰め寄る事はないに等しい理由だ、身体に関わるのだし、仮に配信をサボるにしてもこんなにわかりやすい大きな嘘はつかない。
桃「 大学病院…?え、いむ何かあったん? 」
水「 ……え 」
そうだ、そうだった。
大した怪我や病気だったら街のかかりつけ医にでも行くのが妥当、大きな理由がなければ大学病院に行く機会なんてそうそうない、怪しまれるのも匙はありすぎる。
水「 えっ……と… 」
桃「 …… 」
桃「 言えなきゃ言えないでいいよ 」
水「 ぇあ… 」
終わった、嫌われた、面倒くさがれた
そんな言葉がぐるぐる頭の中でループ再生し言葉が詰まってしまう。
喉に引っかかってる「ちょっとまって」が言えない
呆れられた、完全に。メンバーに隠し事なんて、
桃「 けどね、いむ 」
1歩僕に近づきじっと瞳を覗かれ、そんな行動が僕にとってズキっと心が痛み体が硬直してしまう。
ないちゃんはぽんと僕の頭に手を置き優しく優しく髪を撫でた。
水「 っ……? 」
彼が何をしたいのか僕には理解ができない。
急に呆れては頭を撫でて、ましてや愛犬を撫でるような優しい手つきでさ、
桃「 …あんま、無理すんなよ 」
桃「 メンバーだからじゃない、お前は家族のようなもんだからね 」
水「 …… 」
ないちゃんは柔い表情を見せながら僕を見詰めた。
でもそれはどこか寂しそうな、消えてしまいそうな儚い笑顔。
それは気の所為だと思い込ませ僕はニセモノの笑顔を取り繕った。
桃「 あ、あとさっき確認したらあにきは空いてるみたいだから保護者組で補っとくね、無理頼んでごめんな 」
水「 ……ほんとごめんね 」
“ 大丈夫大丈夫 ” とないちゃんは笑いながら言い、僕らはそのまま解散し会社を後にした。
―――
彼の「 言いたくなきゃ言わなくていいよ 」は面倒くさかったからなのだろうか、善を踏んで取り繕った言葉なんじゃないか、
きっとないちゃんにとっては欠片に過ぎない言葉だったのだろう、普通こんな所で立ち止まるはずがない。
水「 ぁ゙ーやだやだ…全部忘れたい 」
ガサガサとポリ袋から薬を漁る。
何が何だか分からない薬が豊富で使用方法も儘ならない。
そんな数多な薬を大きく一掴みし口へ放り込む。
水「 っ…ぅ゙ 」
3分くらい経っただろうか、視界が歪み始める。
横転するかのように目の前がじーんとしてはフラッシュを起こすかのような暗転。そして頭の中がふわふわすると同時に後頭部がずんと重くなる。
水「 …はっ……はぁ、っ 」
胃の3割ほどが薬物で満たされ残りの7割が胃酸として逆流してきそうだ。
急いでリビングに駆け込みコップ一杯に水を満たす。
当然嘔吐なんて気持ち悪く苦しいのに辞められない、日課になってしまっている。
水「 ぉ゙、げぇ…っ゙ 」
間一髪シンク内で吐瀉物を撒き、面倒くさい後片付けは流すだけで済む。
特に固形物は見当たることはなくドロっとした胃酸のみ。儘ならない視界で腕を見ると酷く痩せていた。
水「 …あれ、……僕こんな…酷い体だっけ… 」
水を飲もうとグラスを持つと、グラス越しに映る自身の顔。
酷く窶れ、例を挙げるとしたら不健康的なダイエットをしたみたいになっていた。
水「 …あーあ 」
僕の本当の生き方が分からない。
透明で綺麗な水を自分の体内へ流し込みながらこう思う。
水は透明で何にでも染まると言うのに、世間的な利用方法を見るとそのまま使うよね。
本来自分の役目を果たしていると言うのか、なんというか。
水「 …それに比べて僕は 」
なんだろう、ずっと “ 何か ” 染まりながら生きていたから “ 本当 ” とか “ 自分なり ” が見つからない。
水「 やっぱ生きるの向いてないや 」
周りの目ばっか気にして生きていくなんて疲れた。
自分から始めた事だと言うのに、人間って無責任な生き物だな。
水「 …ね、キミもそう思うでしょ 」
グラス越しの美しい透明な液体に問い掛ける。
当然反応なんてないし、見えるのは越してる僕の顔だけ。
そんなグラスににこりと笑みを浮かべた。
水「 …大丈夫。だって僕、ムードメーカーだもん…w 」
_グラスは濁った笑みを返した。
コメント
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神神神神とにかく神✨ 神作ありがとうございます! もう何と言ったらいいのか、、、 とっても心に刺さりました! マジ最高、、、 どうしたらこんなに上手く描けるんですかね。 続き(?)楽しみにしてます♪
えーん結婚しましょ😭😭😭😭 本当に上手すぎる!! 林檎ちゃんの凄い所って沢山あるけど、多種多様なジャンル,シチュを書けるは本当に凄すぎる🥹 最後の水さんのセリフがもう心にグサッときました…😇 どうしたらこんな発想になるのか教えて欲しいくらい好き😢 まじ最高、やっぱ林檎ちゃんだな…