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やっと朝菊が始まります…。前回までのはエピローグで、今回からが本編ですので3話からでもお話は分かると思います。前話から何年か経っている所から始まります。ではどうぞ!!
チャイムがなるまであと1分。私は学校の階段を全速力で駆け上っていた。あと30秒。目の前の教室のドアを勢いよく開ける。 「菊、おはよう!」 「今日もギリギリだな」 「おはようございます、お二人とも」 息をあげながら私は親友の二人に挨拶する。 今日もチャイム前、ギリギリセーフだ。 クラスメートもそんな私を見て、また夜更かしかよ!とかちゃんと早く寝ろよな、などと茶化してくる。私だって早く寝たいし早く家を出たいのだ。しかし、保育園の前で離れたくないと泣き叫ぶ弟と妹を保育園に預け、小学校に行きたくないとぐずる弟を宥めながら小学校まで送っていくというかなりハードなモーニングルーティーンを送っているのだ。 そんなこと言えるわけもなく、クラスメート達よ愛想笑いしながら席に着く。
こんな朝を私は毎日送っていた。 チャイムの音と同時に担任が入ってきた。「HR始めるぞーお前ら座れー」 みんなが席に座ると担任が話し始める。 「今日から転校生がやって来たぞ、入ってきなさい」そう言われて入ってきたのは金髪で吸い込まれるような翡翠の瞳を持つ少年だった。 なんか眉毛が特徴てきだけど。きっと外国人だろう。クラスがざわめき始める。この中学は謎に多国籍だから外国人というだけで特に目立ったりはしない。ただ、物凄くイケメンなのだ。 「さあ、自己紹介しなさい」 「…アーサー・カークランドだ」 そう無愛想に言った。そんな彼の自己紹介に付け足すように担任が口を開いた「カークランドはイギリスから来たんだ。席はそうだな…、本田の隣で。」「おはようございます」 「…」まさかの無視である。これには私も少々戸惑った。日本語が分からないわけでは無いんですよね。私、嫌われてしまったのでしょうか… これからの学校生活が少し不安になった。休み時間になると勿論みんながアーサーさんの机にきた。みんながいろんな質問をするけど彼はずっと無視を貫いている。逆にすごい。最初は興味ありげだったルートさんとフェリシアーノくんも興味が無くなったのかどこかに行ってしまった。他のみんなも段々痺れを切らして彼の机から去っていった。 すると彼は一冊の本を取り出して読み始めた。そんな彼だったが私ははなんだか悪い人だとは思えなかった。それになんだか、ほっとけないというか、何故か彼が寂しそうだったのだ。だから無視されても色々話しかけてみた。 「趣味とかあります?」
「…」
「イギリスのどこら辺から来たんですか?」
「…」
無視である。それでも私は諦めずに話しかけてみた。
「好きな食べ物とかあるんですか?」
「…スコーン」
初めて返事を返してくれた。私は嬉くてそのまま話を続けた。
「スコーン!私も一回作ったことあります!美味しいですよね!」
するとアーサーさんは目を見開いた。
「お前、スコーン作れるのか?」
「はい!私お料理とかお菓子作り好きなんですよ」
「あの、今度レシピ渡すから作ってくれないか?俺、レシピ通りに作ってるはずなんだけどいつも焦がしちゃって、弟たちに上手いスコーン食わしてやりたいんだ」
私はアーサーさんにも下に兄弟がいることを知って、親近感が湧いて嬉しくなった。それに、弟思いなアーサーにも。
「いいお兄さんなんですね!勿論いいですよ。教えるので一緒に作りましょう」
「あ、ありがとう」
アーサーさんは目を反らして顔を真っ赤にしながらお礼を言ってきた。そんなアーサーさんに不覚にもキュンとしてしまった。
「アーサーさんと呼んでもよろしいですか?」
「あっああ、いいぞ。宜しくな。えぇーと」
「菊でいいですよ!」
「あぁ、宜しく菊」
「それでは、いつにしましょうか。でも私、あまり長い時間はできないんです」
「それは俺もだ。そうだな、俺はいつでもいいが、できればどにちがいいな。平日はちょっと忙しくて」
「まぁ!一緒です。私も平日は忙しくて。では土曜日などどうでしょう」土曜日も保育園はやっているし、小学校の預かり所はやっているからだ。
「いいな、土曜日は俺も結構時間あるし。」
「では決まりですね」
そんな話をしている間に休み時間の終わりを知らせるチャイムが鳴った。これから学校生活がもっと楽しくなる予感がした。
その後の授業でも教科書を見せたりして大分仲良くなれたと思う。そんなこんなであっという間に放課後だ
「菊ー、帰ろう!」
「菊、帰るぞ」
フェリシアーノくんとルートさんが私を呼びに来た。
私ははい、と返事をする。
「アーサーさん、ではまた明日!」
アーサーさんは恥ずかしそうに手を振った。
「ヴェー、菊大丈夫なの?」
「?なにがですか」
「その、アーサーと」言いずらそうにルートが言った
「あぁ、全然大丈夫ですよ。少し恥ずかしがりやさんな弟思いのいい人です」
「それならいいんだけど」
「まぁなにかあったらちゃんと言うんだぞ」
「そういえば話変わるんだけどさ、菊って俺らと学校以外で遊んだことなくない?」
「それもそうだな」
「今度遊ぼうよ!」
「たしかにそうですね。今度どこかに遊びに行きましょうか。あ、別れ道です、ではまた明日」
「また明日ー!」
「また明日な」
あんなことを言ってしまったが、遊びに行ける日はきっとなかなかこないだろう。少し無責任なことを言ってしまったかと反省した。しかし、いつまでもそんなことを考えてる余裕はない。家に帰ったら洗濯物を取り込んで、アイロンをかけたりお風呂を洗ったり、掃除機をかけたり洗い物をしたりと忙しいのだ。もうお気づきの方もいるかもしれないが、私の家には親がいない。いるのは兄と弟二人と妹一人。それに下の兄弟は遠い親戚であり、兄弟ではないのだ。何故そうなったのかというと、まぁ長くなるのであまり語らないでおく。それに下の兄弟は七歳と4歳二人だ。そして早くに親をなくしてしまっている。私が親の代わりになれるわけはないと思うけど、少しでも寂しさを埋められたらと日々努力している。そして私の兄、最近はなんだか恥ずかしくて兄さんと呼んでいるけれど昔はにーにと呼んでいた。今でもたまににーにと呼べなどと言っているが無視している。そんな兄さんは家を支えるため高校生ながら毎日夜遅くまでバイト三昧である。二年前兄さんはバイトの人に言われて一つ結びだった髪をさっぱり切ったのだ。そのときからバイトは大変なんだと理解した。それからは兄さんを支えられるように頑張った。こうして結果的に家事全般、育児(?)全般を私が受け持っている。
そして家事をやりおえ、今日の授業の復習を終わらせたときにはもう夜の6時30分頃。
私は急いで支度をして、先ず最初に向かうところは小学校。この小学校は放課後も生徒を預かってくれる制度でとても助かっている。
「ヨンスくんの迎えに来ました。」受付に声をかけると20代前半のお姉さんが呼びにいく。
「ヨンスくんー、お兄さん迎えに来たよ」
「きくー!」
そう言ってピカピカのランドセルを背負ったヨンスくんが抱きついてくる。
ありがとうございましたとお礼を言ってからヨンスぐんと手をつないで小学校を出る。
「今日の小学校はどうでしたか?」
「まぁまぁ楽しかったんだぜ!でも菊たちがいたらもっと楽しかったぜ!」
「ヨンスくん…さぁ、梅さんと香くんを迎えにいきますよ。宿題はもう終わったんですか?」
「当たり前なんだぜ!」
午後7時。次に向かうのは保育園だ。
いつもどおり保育園へいくと、保育士さんが来た。
「あら、菊くん。おかえりなさい。二人ともトイレいってるのよ。ちょっと中で待っててね」大体いつも私たちが最後だ。けど今日は少し違った
「こんばんわなんだぞ!」「こんばんわ…」 金髪の男の子二人が私に話しかけてきた。
「この子たちは?」
「あぁ、その子達は今日転入してきたアルフレッドくんとマシューくんよ」
「そうなんですね、こんばんわ」
しゃがんで挨拶して、ヨンスくんにも挨拶をするよう言おうとしたら後ろから聞き覚えのある声が聞こえた。
「迎えにきましたー、ん?お前」
「あ、アーサーさん!?」
「菊!?」
そう、アーサーさんはお二人の兄だったのです。
「まさか、アーサーさんの弟さんと同じ保育園だったなんて」
「あぁ、俺も驚いてる。よかったら途中まで一緒に帰らないか?」
「はい!喜んで」
アーサーさんとの会話が盛り上がっていると服の裾を引っ張られた。そこには不安げな表情のヨンスくん。ヨンスくんはかなりの人見知りなのだ。
「ヨンスくん、この人は私のお友達です。とっても優しい方ですよ」
「と、友達!?や、優しい!?」
アーサーさんがお顔を真っ赤にしてきた。
「え、い、嫌でしたか!?」
「いや、う、嬉しい。友達なんていわれたの初めてなんだ」そう言ってアーサーさんははにかんだ。ほら、やっぱり優しい。素敵な人だ。
「「きくさんー」」
アーサーさんとお話していると二人がトイレから戻ってきた。バックからおんぶ紐と抱っこ紐を取り出して梅さんをおんぶ紐、香くんを抱っこ紐に装着する。
「便利だな、それ。」
「あぁ、おんぶ紐と抱っこ紐のことですか?」
「あぁ、両手が塞がらなくていいな」
「今度おすすめ紹介しますよ」
「本当か!?ありがとう」
「きくさん、わたしもだっこがいいヨ」
「うめはきのうだっこだった。きょうはおれのばんてきな」
「梅さんは明日抱っこ紐しますね」
「むぅ」
「アーサー、帰るんだぞ!」
「アーサーさん、帰りましょう」
「あぁ、そうだな」
保育士さんが途中まで見送ってくれた。
アーサーさんたちと帰った。どうやら彼も両親を失くしていて、フランス人の人のお世話になっているらしい。そのフランス人の人はいろんな国の料理を研究していて、今は和食を研究しているらしい。その人は忙しくて、帰ってくるのは2ヶ月に一度くらいなのだと。しかし、そのフランス人かなりのお金持ちらしくお金には全く困っていないと言っていた。
私のことも勿論全部話した。
「その、菊も大変なんだな。」
「えぇ、まぁ。でもとっても幸せです」
そう言うとアーサーさんは綺麗な笑顔で言った
「それは分かる気がするな」
先にアーサーさんの家に着いた。そこはかなりの豪邸で驚いた。やっぱりそのフランス人、只者じゃ無いんですね…
「本当に送っていかなくて大丈夫なのか?」
「えぇ、大丈夫ですよ、ではまた明日」
「また明日な菊」 弟さんたちも手を振ってくれた。
今日は凄く楽しい友達ができた。これから悩みごとがあったら話そうと約束したし、私の家族のことを初めて話した人だった。
アーサーさんとお別れして、気づいたら梅さんと香くんは寝てしまっていた。いつもの調子を取り戻したヨンスくんが元気いっぱいに手を握ってきた。
「菊は、俺らの兄弟なんだぜ」そんな言葉に少し驚いた。今まで私の友人に一人もあったことがないし、ヨンスくんたちの前で誰か身内以外と親しげに話したことなんて一度もなかったから。少し不安になってしまったのだろうか。
「そうですね。私はあなたたちだけの兄弟ですよ」
そう言うとヨンスくんは可愛らしい顔で笑った。
「「ただいま」」ヨンスくんと私の声に返すものはいない。今は8時だがまだ兄さんは帰ってきていないらしい。梅さんと香君も目を覚ましたようでヨンスくんが一緒に遊んであげている。本当にこういうときは助かるのだ。3人が遊んでいるうちにテキパキと夕飯の準備を始めた。今日はカレーライスだ。そういえばアーサーさんはお料理はできるのだろうか。スコーンをレシピ通りに作っても作れないと言っていたから苦手なのかもしれない。今度スコーン以外も料理を教えにいこう。カレーを煮込んでいると玄関のドアが開く音がした。兄さんが帰ってきたのだ。
「ただいまアルー」
そう言いながら兄さんが抱き着いてきた。
「おかえりなさい、夕飯まだできないので梅さんと香くんとお風呂入っちゃってください」
大体いつも3人でお風呂に入ってもらっている。別に私が二人とお風呂に入ってもいいのだがお風呂は小さい子には危ないから、安心安全の年長者の兄さんと一緒に入ってもらっている。兄さんは私が小さい頃も私をお風呂に入れていたから慣れているのだ。だから兄さんが物凄く帰りが遅い日以外は私はヨンスくんと入っている。
「まただいけいと?きくさんとはいりたいっす」
「しょうがねーある、我だって菊と入りたいあるよ」
「ヨンスばっかりずるいヨー!」
一瞬兄さんから問題発言が出た気がしますが、それはスルーしましょう…
「ほら、お前らちゃっちゃっと行くあるよ」
お風呂から上がった二人の髪を兄さんと乾かしているとカレーが煮込み終わった。夕食は皆でそろって食べるのが家族のルールだ。数少ない家族団欒の時間である。
「菊、食べ終わったらヨンスと風呂入ってくるよろし」
「でも洗い物が…」
「それくらい我がやっておくある」
「はぁ…じゃあお願いします」
たまに兄さんは時間があるときは洗い物などをやってくれるからよく助かっている。
「早く風呂行くぜ菊ー!」
「はーい」
お風呂からあがったらドライヤーが終わると3人に一冊本を読み聞かせして5人で川の字になって寝る。ここまでが私の慌ただしい1日だ。