この作品はいかがでしたか?
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コメント
7件
今作の青桃2人の雰囲気が好き ………
浅星さんも言ってたように不穏な空気が漂ってて大好きです🥹💗 紫さんを狂わせた元凶(?)がいつもみたいに青くんじゃなくて 桃くんなのもまた良い.... 次の展開も楽しみにしています🥹!
青紫/年齢操作/青・桃屑
「んな不貞腐れた顔すんなって、対で話すのは久々だろ?」
別に不貞腐れてはいない。ただななと過ごす時間をこいつに取られるのが気に入らなくて、思わず顔を顰めてしまっているだけだ。
…まぁ、つまり不貞腐れているのだけれど。
さとみくんは、昔僕と同じ『レンタルセフレ』で働いていたのだ。さとみくんは僕とは違い、タチ専ではなく両刀でやっていたらしい。それを聞いた時は結構驚いた、ただの偏見でしかないが、顔だけ見たらタチだったから。
「そーだけど。てか、僕の質問に答えてよ。なんで僕のこと呼んだの?」
早く済ませたくて、少し怒ったような口調で言ってしまったが、相変わらずの能天気さは変わっていないようで、そんな僕を見るなり「そーだった」と、ヘラヘラ笑っていた。多分、あからさまに機嫌を悪くしている僕を見て面白がっているのだろう。本当、性格の悪いやつだ。
「いや。大したことじゃねぇけど、最近ななとどうかなぁって」
その質問に目を丸くし、僕はさとみくんの顔を見た。けれどさとみくんは、まるで僕が自分を見つめているなんて知らないかのように、ただ一点にスマホを見つめていた。親指を手早く動かしているから、誰かと連絡をとっているのだろう。僕と話しをしながら誰かと連絡をとれるなんて、器用なものだ。
が、僕が気にしているのはそのことではない。だから僕は、驚いたことを直接さとみくんに話した。
「さとみくん、ななくんのこと知ってるの?」
すると、さとみくんはスマホの電源を落とし、ようやく僕を視野に入れた。
相変わらずヘラヘラ笑っていて、そこから一切表情を変えないから、何を考えているのか分からない。けれど、雰囲気でなんとなくわかる。多分、あまり良くないことを言おうとしていること。そして、ろくでもないことを考えていることも。
「あれ、言ってなかったっけ。俺とななは義理兄弟だったんだよ?」
「義理兄弟…ななくんと同棲してたってこと?」
「言い方悪いな〜。たまたまななのとこのおばさんと俺んとこの父さんが出会って、そこで結婚したから、ちょっとの間一緒に住んでただけだって」
さとみくんの両親の事情は、ある程度知っている。僕のところとは違って、両親どちらもお互いに好意を抱いていない、所謂契約結婚という形で婚約をしたから、お互いウマが合わず、話す度に喧嘩をしていたとか。
元々子供が大嫌いらしいさとみくんの元母親が、面倒を見切れないから父親の方に預けられ、再婚するまで一生父と暮らしてきた……とは聞いていたが、まさか再婚相手がななくんちの母だったとは思わなかった。
世界とは、広いようで案外狭いものだ。
「ま。俺は親父たちのこともななのことも大っ嫌いだったから、ころんの大事なななにちょっと脅し入れちゃったけどね♪」
悪意しかないその発言が頭にきて、僕はさとみくんの胸糞を掴み、彼を睨んだ。
僕も、自分でななくんを脅しているのは分かっている。けど、僕以外の誰かからななくんに何かを脅しいれられるというのは、どうにも気に食わなかった。
「……ななくんに何した?」
さとみくんは、僕の目を見るなり、ヘラヘラするのをやめ、真顔で僕を見下した。けれどそれも一瞬だけで、思いっきり僕の手を叩くと、またいつもの笑顔になった。
意味が分からない。そんなにポーカーフェイスを取り繕う必要があるのだろうか。
「…それより、俺まだ質問に答えてもらってないんだけど」
思いっきりシカトされたが、確かに、僕はさとみくんの質問に答えていなかったので、一旦引き、素直にさとみくんの質問に答えた。
「別に、変わったことは無いよ。嫌がられないし、好きにしていいとも言われてるから、言われた通り好きにさせてもらってる」
すると、さとみくんは一瞬目を見開いたかと思えば、思いっきり腹を抱えて笑いだした。
「っ、あはははははっ!!ころんお前、マジで変わりモンだわぁ〜。元カノ捨てといてななのこと好きになるとかさ?」
あぁ、本当。性格の悪いヤツ。
わざわざ他人がムカつくことを嘲笑って、ついでに少し痛いところも突いてくる。ムカつくったらありゃしない。
僕の元カノは、多分。親よりも僕に悪影響を与えた、史上最低最悪な女だった。
けれど、そのおかげで、僕は『愛』についていいことを学べた。例えば、相手を絶対に逃さない束縛の仕方とか、ただ相手が首を縦に頷くことしか出来ないしつけ方とか。
だから、元カノのことはあまり恨んでもないし、正直根っから悪いやつだとも思わない。最悪ではあったが、一生一緒にいられる女は多分元カノだけだと思う。
けど、僕は許せなかった。ななくんを下に見られたこと。自分はななくんを何でも知ってますよ?みたいな、生意気な態度を取られることも。
「ななくんの何を知ってんの?」
「知ってるよ。大嫌いだけど、生き方間違えたくそビッチだってことは」
生き方間違えたくそビッチ。確かに、最近大人しいだけで、初めはそんなイメージしかなかった。何かしらがあって、真面目に生きるのをやめ、ストレス解消のためにビッチとして生活し始めたんだろうな。みたいな。勝手な妄想でしかないのだけれど。
「だって、ころんの元カノもななも。狂わせたの俺だもん」
「……は?」
思いもよらない発言に、僕は思わず唖然とした声をだした。