この作品はいかがでしたか?
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私の欲望であり、嫌悪である夢の話
あるところに少年がいました。
少年は何もかもが普通で、他と違うところは親が毒親で少年の頭の出来がとても残念ということ。テストではいつも0点。運動もできず、体力テストなどは全て最低点。それを見て怒り、見えないところに暴力を振るう母親。止めないどころか、ゴルフクラブで素振りの練習と言い殴ってくる父。何かが痛い行為でした。
でもそんな少年でも大切に思ってくれてる誰かがいました。誰かは分かりません。いつもそばにいるのに。姿は見えるのに。分からないのです。
少年は生きるのに疲れていました。自殺を試した事など数え切れないほどあります。全部失敗しました。かすり傷すらつきません。少年はもう失敗しても痛くないどころか何も思わなくなりました。どうせ次も失敗するし、両親の暴力の方が痛いのです。
そんなある日、両親がいなくなりました。戸籍もなくなったそうです。どこに行ったのか…何をしたのか…少年はそれすら思いませんでした。見えない何かはそんな少年を病院へ連れていきました。だけど、まず診察されたのは見えない何かでした。数日かけてカウンセリングやメンタルクリニックを梯子し、分かった結果は統合失調症。少年は、自分のせいでストレスが溜まったんだと思いました。でも、次に病院から呼ばれたのは少年でした。診断結果は双極性障害。見えない何かは何も考えられず、泣いて、自分を責めて、何度も何度も只々謝りました。2人は医者から必要な薬を受け取り、大きな病院から家に帰ろうとエスカレーターに乗り込もうとした時…少年はいきなり立てなくなりました。意識も遠のき…
少年は、その日目覚めることはありませんでした。
次に気が付くと、病院の真っ白い天井。隣には見えない何か。少年はいきなり倒れて入院したのです。医者が言うには、精神的なものらしいです。
その日から少年は立てなくなりました。どこも異常は無いのに。車椅子を使い、見えない何かに押してもらうことが多くありました。少年は更に心を閉ざしました。
クズ親の居なくなった家はとても静かで、やる気も気力もない2人にはとても快適な空間でした。幸いにもクズ親達はかなり稼いでおり、貯金は相当ありました。まぁ、必要なものは全て引き落としのため、ご飯をあまり食べない2人には関係ないですが…
ここで少年はトイレに行きたくなります。しかし、車椅子…トイレすら1人で出来ません。少年は仕方なく見えない何かに頼みました。余計死にたい欲が強くなりました。
見えない何かは、少年を便器に座らせ外で待ってる間ずっと考えてました。『自分が…自分のせいで…もっと出来たことがあったはず…ごめんなさい…僕のせいだ…何かしなくちゃ…助けなきゃ…』ずっと責めて責めて。少年の呼ぶ声すら聞こえませんでした。
少年は死にに来ました。不格好な醜い翼、鋭い嘴、捉えた瞬間何もかもを殺し破壊しそうな目、楽しそうに会話するたび漏れる耳障りな鳴き声。カラスには似ても似つかないような漆黒の体…そんな化け物たちの住処へ。もしかしたらこれは少年が幻覚を見ているだけなのかもしれませんが。
聞くとこの化け物、見た目に反して攻撃されないと襲わないそうです。
少年は何故だか両足で体を支え、ふらつく様子もありません。片手には少年の体で支え切れるとは思えない先の尖った大きな木の棒が握られていました。
急所を外したとか言えば自殺だと思われず、ただの命知らずなバカとして死ねる…そんなことを考え着実に近付いていきます。化け物達は気付いたものの、こんな少年が自分達を襲えるとは思わず無視していました。
そしてその時…
1人の化け物の腹に棒を突き刺した─
と思った瞬間、体が宙を飛びました。仲間の1人に殴り飛ばされたのです。これも痛くありませんでした。殴り殺される…そう思ったのに、いつの間にか、3匹のガタイのいい大きなヒョウが威嚇し、ヨダレを垂らしながら少年を囲っていました。
少年は早く死ねたら何でもいいと思い、少しほくそ笑んでしまいました。幸いにも化け物達には見られませんでした。
ヒョウが飛びかかりました。
血肉が飛び散るかと思いきや、頭を割られました。
少年は生きていました。痛くありません。
骨をしゃぶられ、舐められ、脳脊髄液を水のように飲まれました。
そして、脳を───
吸われました。
気持ちの悪い音を立てながら…
元からなかった痛覚が、視覚が、聴覚が、無くなりました。なのにまだあの気持ち悪い音が鳴り響きます。
思考もなくなり、体が痺れ、あとは死ぬのを待つだけでした。
そして最後…あぁ…これで死ねる…
なんて…思考できないはずの脳で思い、何も無くなりました。
少年はカエルでした。
いえ、上半身カエルで、下半身は使い物にならない人間の足です。
少年は誰も来ない川辺にいました。カエルになったその頭はカエルのもので、少年のものではありませんでした。少年は自分が誰だか分かりません。しかし、見えない何かについては以前よりずっと分かります。
見えない何かは少年を見つけました。少年は見えない何かだとすぐに分かりましたが、何故自分を探したのか、見つけて喜ぶのか…分かりませんでした。見えない何かは少年を抱きしめ、手を繋ぎ帰りました。見えない何かは少年が二度と居なくならないように地下室に閉じ込めました。少年は分かりません。見えない何かは毎日毎日ご飯をあげ、世話し…愛し続けました。少年は分かりません。見えない何かは少年の頭を元に戻そうと手術しました。少年は痛がりました。怖がりました。逃げました。そして、飛び出した先のトラックにぶつかり轢かれ、死にました。
見えない何かは1人になりました。
END
コメント
14件
いいね 実際に夢でもいいからそれを見たい
グッドエンドなのかバッドエンドなのか解らない夢だな…… これがリアルに見えるなら凄く気持ちが悪い夢だったろうに、
私が実際見た夢です。 確かにこれは私の希望であり一番嫌悪である夢でした。