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俺が高校一年の夏




























にいちゃんはトラックに跳ねられ僅か18歳で


この世を去った






今年もにいちゃんの命日がやってきた。

蝉が慌ただしく命尽きるまで鳴く中


俺はにいちゃんが眠る墓の前で立っていた



「にいちゃん。俺にいちゃんと同い年になったよ。

そうポツリと呟いた俺はお墓に水を頭からかける


大きくなったな


そうやってにいちゃんが呟いてると思った。


「本当は潔もつれて来たかったんだ…だけど…


最後の一文

俺は言葉が詰まってしまった。

















あいつはまだお前が生きていることを信じているから


その一文を俺はどうしても言えなかった

















「にいちゃん。潔が呼んでる」

俺は自分の中に秘めた潔への想いを押し殺しながらそう告げた。


「おう。ありがとな。」

そう俺と同じような顔を持った2歳違いの兄が言う


誰もが羨むような技量と顔を持ち合わせた兄は誰からも好かれている。

それなのに俺は…


にいちゃんと似たような顔を持っていても、にいちゃんには成り代われない。 似ても居ない。


にいちゃんが居なくなった教室に1人残され、そんな考えに深く陥る

5時になり、下校直前のチャイムが鳴る

潔に頼まれ、にいちゃんを呼びに行ったのは4時過ぎだ。もうそんな時間が経ったのかと思い、1人で帰路につく。


…そんな毎日が続く



***



「にいちゃん?にいちゃん?」

学校の廊下で1人。にいちゃんの名前を呼ぶ俺がいる。


どこいったんだ…


今日は母さんが早く帰ってこいと言っていたのに…

時間を破るにいちゃんではないので、心配する




「________________?」




奥の教室からにいちゃんの声が聞こえてくる。

いた…!やっと見つけた!

にいちゃんの声が聞こえた俺は、声が聞こえた教室の前まで行く。

教室へ足を進めれば進めるほどにいちゃんの声が鮮やかに聞こえてくる。


それは、当たり前だが、

にいちゃんと一緒にいる人との声も聞こえてくる。


「あぅ…さえッ、さえッ…❤︎イくッ、、イっちゃうからぁ❤︎」

思わず息を殺した。

潔だ。潔の声だ…


2人のいる教室の前のロッカーを背に向けながら、ズルズルと下がり床に座る

じゅぷじゅぷと鳴る水音と喘ぎ声が聞こえる。


そうか…そうなのか…2人の関係はそういうことなのか…

なんなのか見当もつかないショックを受ける。

そして静かに立ち上がり、その場を離れて、

いつもは3人で帰るのをやめて、その日は初めて1人で帰った日だった。



***



うっ…またこの夢か…

ひどい目覚めだ。

心の大事なものが壊れたような…奥底で軋むような音がした


何度想像しただろうか。潔のその顔が。その声が。その身体が。

どれだけ自分のものだったら良かっただろうか。


だけど、それはどうあがいても、もう叶わない。もう叶わなくなってしまったんだ。


今日は土曜日だ。最近一緒に帰って居ないからと、3人で遊びに行く約束をして居た。

なんなんだ。帰れなくさせたのは、そっちの癖に…


そんなことを言ってもめんどくさくなるだけだから絶対言わない。


「遅かったな。」

にいちゃんがそう言う。

うるせぇよ…お前のせいで目覚めが悪かったんだよ。

そんな愚痴を心に灯しつつ、ぶっきらぼうにごめん…と謝る。


潔を迎えに行ったあと、市内のショッピングモールへ行く。

はしゃぐ潔を見ながら、心で顔が緩む俺と、明らかに顔がゆるゆるな、にいちゃんが横並びで見守っている。


「顔緩みすぎだバカ兄貴」

そうにいちゃんを指摘する。そうすると、あぁ…と言うは言うものの、緩みっぱなしだった。


帰る時間になり、横断歩道の信号が青になるのを待つ。

潔はその待ち時間の間に近くの自販機に駆け寄り、水を購入している


トラックが来た。

ドンッという鈍い音が走り、にいちゃんが宙を“舞った”


いきなりの出来事に潔がこちらを向いた。

宙を“舞っていた”にいちゃんを見てこの世の終わりのような顔をした。


俺は…どんな表情をして居たのだろうか

ちゃんと悲しい顔をしていただろうか…

絶望したような顔を作れていただろうか


すぐに救急車が来た

にいちゃんは即死。潔もそのショックからか倒れてしまった。

家族も駆けつけ、しばらく日が経ってから葬式も行われた。


潔は目を覚まさなくて、家族は壊滅状態

にいちゃんが居なくなるだけで、こんなにも現状が変わるのか…

でももう遅い…にいちゃんは戻ってこない。



***



3年になった夏。

病院から「潔が目を覚ました」と聞いた

すぐに病院に向かい、病室へ駆け込む

そこに目の開いている潔の姿があった。


なぁ…覚えてるか?潔…


「冴…?」

あぁ…やっぱりお前に俺の記憶はないのか。お前だけは覚えていてくれると思っていた。


お前だけは…



潔が目を覚ましたのは「俺」の命日だった


1人で墓参りに行く。



来たよ。にいちゃん。俺だよ。


「にいちゃんの力は偉大だね。俺なんて足元にも及ばない。だけど、今は届いたよ。」






















だって俺が殺したにいちゃんは、俺だから。


目の前のお墓の一行目には「凛」と書かれている

ーFinー

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コメント

3

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作るの天才過ぎない!?続き待ってます!!!!!

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