「へえ、どんな子?」ナミが興味あり気にゾロに問い掛けると、少し考える様に目線を上にやった後。
「そうだな……見た目は堅えし、華奢なやつで…」
「で、どこが好きになったんだ?」
サンジも興味津々といった様子で身を乗り出すように聞いて来たのでゾロはたじろぐと、更に顔を赤くするのだった。そんな様子を見ていたロビンはくすくすと笑う。
(あら? これは脈アリなのかしら)
「…料理が上手い」
「「「「え?」」」」
「……だから、飯が美味いんだよ。そいつの作る飯は」
ゾロの言葉にサンジは少し驚いたような顔をすると、すぐに笑顔になって嬉しそうに言った。
「そうか! そいつは良いな!」
「あァ?」
「いや、お前がそんな素直に褒めるなんて珍しいからさ。よっぽど好きなんだなって」
(まあ、俺は料理でそいつに負ける気はしねえけどな)
「…まあな」
サンジは目をキラキラさせてきた来たので、ゾロは少し考えると答えた。
「……そうだな。普段はギャーギャーうるせェし、料理の事しか頭にねェアホだけどな……」
そこまで言って一呼吸置くと、照れた様に言葉を続ける。幸せそうに噛み締めるその顔は、喜ばしいはずなのにぐっ、とサンジは地味に痛んだ。その痛みの正体がわからないまま、ゾロの話に耳を傾ける。こいつにこんな顔をさせるのはどんな奴なのか? サンジの中でどんどんと知りたい欲求が湧いてくる。そんなサンジの様子をナミは何も言わずにじっと見つめていた。
(鈍すぎるわね)
(…コックさんのことね)
(え?なんだこの甘すぎる空気)
(そうかぁ、サンジのこと好きなんだな)
「でも、俺はそいつの作る飯が好きなんだよ」
そう言ってゾロは幸せそうに顔を綻ばせる。その顔にサンジは思わずドキリとしたが、その時頭に浮かんだ顔は…
「…」
「……おい、コック?」
(あれ?)
「あ、ああ! 悪ィな! ちょっと考え事してて!」
「そうか。ならいいが」
そう言うとゾロは食事を再開する。そんな様子を見ていたナミとウソップは目配せすると、二人同時に小さく溜め息を吐いた。
「あ、そうだ。今日は、この島で買った果実を使ったデザートがあるから、食後に出すよ」
サンジは話題を変えようとナミとロビンに言うと、二人は嬉しそうに頷いた。
「ええ! どんなデザートなの!?」
「楽しみだわ」
「へへ、楽しみにしててね♡」
それから暫くして食事も終わり、キッチンでデザートの準備を始めた。ゾロが食べ終わった食器を片付けて戻ってくる頃には準備も整い、テーブルの上には綺麗に切り分けられた桃の様な果実が並べられていた。
「なんでも、恋が叶う実みたいな伝承があるフルーツらしい」
「へえ! それは楽しみね」
ナミはそう言ってフォークを手に取って実を切り分けると、一口大にして口に入れた。すると口の中に酸味の効いた甘みが広がり、芳醇な香りが鼻腔を通り抜けていく。とても瑞々しくて美味しい果物だった。
「あら、本当ね。とっても甘くて美味しいわ」
「ええ、本当に!」
ロビンも喜んでデザートを食べているのを見てサンジは満足そうに笑うのだった。そんな様子を見ていたゾロが口を開く。
「…ハッ、んなもん頼らなくたっててめえにゃ好きな奴と上手くいってるじゃねえか」
「え?」
サンジは目をぱちくりさせてゾロを見た。ナミもロビンも同じ様に目を丸くしてゾロを見つめている。
「あーあー、何を言い出すのかなゾロ君!」
それを遮断する様に、ウソップが言葉を被せたためゾロはやや不満げな顔をしていたものの、次第に
「そうだな。悪ィ」
と言って引き下がった。サンジはその様子をモヤモヤとした気持ちで見ながら、最後の一口を口に放り込むと椅子から立ち上がる。
「じゃ、俺片付けがあるからよ」
そう言ってキッチンに消えていくのをナミが呼び止めた。
「あ! サンジ君!」
「…何?ナミさん」
(……あれ)
(あらら、これは)
振り返ったその表情を見てナミとロビンは顔を見合わせる。そこにはいつもの様に女性に対する甘い笑顔は無く、どこか寂し気な表情をしていたのだった。
コメント
1件
ゾロサン結構好きです!! ありがとうこざいます!☺ 俺もワンピースのBL投稿してます! 良ければ見てください😊