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⚠ 現ぱろ 、 喫煙表現 ⚠
かた 、 と小さく鳴る音によって目が覚める 。 音の鳴った方向に顔ごと目を遣れば 、 ベランダに出て煙草を燻らす恋仲の姿 。
ベランダから乗り出すように縁に腕を掛けながら煙草を口元からゆっくりと下ろす姿が 、 美しいと感じるのと同時に酷く恐ろしく感じた 。
かたん 。 先程彼が立てた音と同じ音を立てる 。 ゆっくり 、 けれど警戒して此方に振り向く仕草は 、 何百年前の名残だろう 。
『 … お前か 』
「 なんだ 、 俺じゃ不満かよ 」
むす 、 と拗ねたように告げる 。 少し子供っぽすぎたか 、 なんておぼえて視線を再度彼へと戻す 。
と 、 見た事の無い顔をして此方を見つめている 。
「 … なに 」
『 いや .. すまない 、 不安にさせたか 』
くしゃり 、 と頭を撫でられる 。 訳も分からず甘んじて其れを受け入れていれば 、 頭上からなんだ 、 と声が掛かる 。
『 思い出していたんだ 、 少しばかり昔の事を 』
なんだかそれ以上詮索する気になれなくて 、 奴の右手から煙草を奪う 。 暫く燻らせていたし 、 もう使い物にはならんだろう 。 灰皿へ向かわせると 、 胸ポケットからボックスとライターを取り出し 、 更に新しい一本を取り出した 。
轟々と鳴り響く換気扇に 、 奴の口元から弧を描いて紫煙が吸い込まれる 。 なんだかこのままじゃ眠れない気がして 、 文次の手に在るボックスから一本くすねる 。
『 … 吸えるのか 』
「 十八の頃に一度 」
文次は 、 何も詮索してこなかった 。 これが俺等の距離感なのだ 。
一定のラインを超えて踏み込んでしまったら 、 もう戻れなくなるから 。 そのラインが助かる事も屡々 、 虚しく感じる時も有る 。
「 … 夢を見たんだ 。 酷く孤独で 、 あまりに冷酷な 。 」
「 お前だけは 、 俺から離れてくれるなよ 」
先程彼から半ば奪い取ったようにして手に入れた煙草を口に咥え 、 奴の煙草の先端に押し当てる 。 ぐっと 、 距離が縮まる 。 この距離感が怖くて 、 でもずっと求めていた物で 。 火が受け渡った事を確認して煙草の先端を離せば 、 咥えた煙草を強引に抜き取られ 、 文次の唇に押し当てられる 。
「 ん っ … ふ 、 」
鼻に掛かった 、 くぐもった自分の声が気持ち悪くて仕方がない 。 ちゅ 、 なんてなんとも可愛らしい音を立てて唇が離された 。 … かと思えば 、 角度を変えて何度も唇を食まれる 。 口を舌でトントン 、 とノックされるように叩かれれば 、 既に快楽に溺れていた脳では処理し切れなくていとも容易く口が開かれてしまう 。
…まで考えたんだけどオチないので没にしたやつ