【ふたりyou&me】
「おはよ〜 あれ?日向美ちゃん、学校は?」
またいつものアジトに着けば、みんなが明るい顔で出迎えてくれる。
「おはよう。今日は学校が休みだったの、お母様が海外転勤で家にはいないので心配しないでここに来れるわ。」
色々と言い忘れてもう嫌になるのだが、日向美ちゃんは現役の高校生なのだ。
「あ〜、お腹空いた〜」
「さっきおにぎり3個食ってたでしょ。ブラックペッパーでも口に入れたらいいわ。」
「あー、おはよ。昨日金大丈夫だった?」
「ミカちゃ〜ん!!おはよ〜!」
「……」
「凛先輩。」
「…おはよう。」
「おはようございますっ!」
いつものようにぐったりの三玖ちゃん。
いつもオシャレで綺麗な日向美ちゃん。
いつも元気で可愛いももちゃん。
凛先輩はスマホを見ながら私に挨拶をしてくれた。
こんや日々がずっと続いてほしい。
…私たちの幸せを壊すかのように着信音が鳴る、政府の人間だ。
「……はい、桐ヶ谷です…街でセキラ出現ですね。適正魔法少女は…私と凛先輩…?…はい、今すぐ向かいます。」
少し深呼吸してから凛先輩に話しかけた。
「凛先輩、行きましょう。」
「…わかった、ミカ。」
緊張が止まらない私たちに、みんなが気をつけてね、頑張ってねと応援してくれる。
期待に応えなければ。
「…ここだけど、いないですねセキラ。」
セキラがいると言われた場所は、人の目につかないような廃墟の駐車場だった。
「結界。」
「…まぁ、そうなりますよね。」
セキラを探すために政府側が、セキラのパワーを発見するレーダーのようなものを使っているのだが、セキラがいるはずの場所にいない時はほとんどが結界に閉じこもっているケースだ。
すると、一瞬だけ黒いモヤが見えた。
凛先輩が黒いモヤを認識すると、その黒いモヤがあった場所に向かい、手をねじ込んで結界の扉をこじ開けた。
「行くよ、ミカ」
「あ、はい!」
私が戦力になるかは分からないが、凛先輩と生きるためなら私は何をしても構わない。
結界の中は長い廊下になっていた。暗くて不気味で、更に不安を煽る。
「不安?」
前を歩く凛先輩が私に話しかけてきた。
「…え、まぁ。」
「大丈夫、私が死んでもミカは守る。」
その時の凛先輩は自分を諦めているような気がした。
でもその言葉には確かに意味が込められていた。
2人分の足音が頭に焼き付く。
言葉はいらない、というのだろうか。
ここで話すことはひとつもなかったというのもあるが、凛先輩がいるだけで私は安心できた。
結界の中で沢山の扉を開けていけば、ついに暗い雰囲気とはかけ離れた場所についた。
するとそこには大怪獣と同じくらいの大きな怪物が待っていた。
「早く終わらせよう。」
凛先輩の言葉を聞いて私も人一倍集中した。
2つの影が空を舞い、怪物を切りつける。
両手に持ったショットガンが空気を削る。
素早い動きで怪物を切りつける。
腕を切断しても再生する鬱陶しい体を何度も切断した。
ついに心臓を突き刺し怪物を倒した。
怪物を倒して余韻に浸っている私を横目に凛先輩は私にこういった。
「ねえ」
「…どうしたんですか?」
「ミカ、私が魔法少女になった理由は__
アンタを死なせないためだよ。」
___その時、怪物の大きな指が凛先輩のお腹を貫いた。
「凛先輩!!」
「ぁ…ぐ…」
凛先輩のお腹にぽっかり空いた穴が見えた時、すぐさま怪物が凛先輩を飲み込んだ
「凛先輩!」
絶対に凛先輩は生きてる。凛先輩は生きてる。大丈夫、絶対大丈夫。
震えが止まらない。
なんとか怪物の腹を剣でこじ開けて、流れ出てくる黒い液体の中から凛先輩を探した。
すると、虚ろな目をした凛先輩が出てきた。
やめて。
もう私から奪わないで。
最後にもっと話せばよかった。
ずっと一緒だった、私のために生きてくれた。
私を死なせないために
それなのに私は最後まで守れなかった。
「凛先輩…」
私が守るべきだった。私が守るべきだったのに。
ごめんなさいごめんなさいごめんなさい
私のせいで
ごめんなさい
「桐ヶ谷さん!」
どこからか日向美ちゃんが駆けつけてきた。
「ごめんなさい…」
「遅れて申し訳ないわ…その…先程政府の方から電話があって……青島さんのこと…
怪物は…?」
「殺した。殺したと思ったら凛先輩を…凛先輩が…凛先輩が…凛…先…ぱ…」
「き、桐ヶ谷さん!?大丈夫!?」
そこからは意識がなく、何も覚えていない。
「…!」
「……あ、桐ヶ谷さん…起きたのね…」
知らない天井だ。
私が目覚めた場所は日向美ちゃんの家のベッドだった。
どうやら日向美ちゃんが私をみんなの元まで運んでくれたらしい。
やつれた顔の日向美ちゃんが私を覗き込む。
「…」
「…私もこんな結末にならないように…対策をしてればよかったわ…」
「猫が死んだの」
「…?」
「私の猫と…散歩してたら…どこかへ行っちゃったの」
自分でも何を言っているかもわからないくらいに私は混乱していた。
「桐ヶ谷さん…今日はもう…休みましょう。」
日向美ちゃんの震えた声を聞いたあと、私の頬に一粒の雫が落ちた。
コメント
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うわぁぁっ……凛先輩好きだぁぁ……かっこいい……