「入院中の男の子…?」
「そう…なんでもらったんだっけ」
愛おしそうに赤い鶴を撫で、懐にしまった。そして立ち上がり空を見上げ始めた。
「思い出せない。…あ、そりゃそうか。だってこれが俺の未練なんだから」
「未練がなくなったら、狐は…」
「ばいばいだね」
顔なんて見えていないのに何故か狐の表情が容易く想像できた。にこっと大人びた優しい笑み。
「さみしい?」
「べつに、だって俺が死んだらまた狐と会えるし」
長い沈黙の後 狐のお面の中から、かひゅっと小さく息を吸う音が聞こえた。その瞬間その場にぺたんと座り込み俯いてしまった。
「ちょ、まだ体調悪いんじゃ…!無理せんでええから!」
「狐は黄さんのそういうところ好きだよ」
「何言って…」
「絶対じゃない未来を当たり前のように見てくれるところ。俺が明日いなくなってもおかしくないのにさ。」
「……」
前にもこんな話しなかったっけ
「…ねぇ、黄さん。」
鈴の音に負けてしまいそうな程のか細い声で俺の名を呼ぶ。俯いて今にも泣き出しそうな素振りを見せる。
「なに?」
「……俺のこと好き?」
「…どうしたの。急に」
「それだけ、聞きたくて。」
「……だいすきだよ。」
優しく狐の頭を撫でる。少しでも安心させてあげたかった。
「ずっとだいすき。」
「…なでるのはやめて、恥ずかしいから。」
口ではそう言いつつ抵抗しない狐が可愛かった。
「ほんと今日はどうした……の!?」
言葉を言い終わる前に狐が抱きついてくる。急なことに体が追いつかず思わず手をついてしまう。
「ごめん、今日だけ許して」
「…今日だけって。いつでもいいんだよ」
背中に手を回し体温のない手を握る。俺の肩に顔を埋めたまま狐は全く動かず声も出さなかった。ただ別れ際「また会いにきてね」と俺に伝え狐は神社の中に姿を消した。
「…おはよ」
「おはよう、最近寝不足なんじゃない?大丈夫?」
最近は夜遅くまで狐と一緒にいたから図星だった。夜中に神社に行っていることを母さんにばれると面倒臭いから課題が終わらなくてと適当に嘘をつき朝食を摂る。
「もう、また入院生活になっても知らないからね?」
持っていた箸が止まる。
「えっ、入院生活…?」
「あれ?覚えてない?まぁ、10年も前の話しだもんね」
10年前…俺がまだ小学生の頃だ。
「昔は黄、すごく体が弱かったの。だからちょっとの熱で過呼吸なったりして…」
「今は風邪なんて何年もひいてないのに…」
「昔の話だってば。とにかく体が弱かったからインフルエンザにかかった時入院する事になったのよ。覚えてない?」
「覚えてない…そんなことあったんだ。」
「それじゃあ、あの時のお友達も忘れちゃった…?」
「…お友達……?」
「黄が病院で仲良くしてたお友達。たしか名前は……」
赤くん
コメント
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ふぉぉう!!!!予想通り ドヤァ( ・᷄֊・᷅ )✌︎でもカナチィかもね