「うわぁああああああああ!?!?」
友人宅にて、俺の大声が響き渡った。
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︎ ︎︎︎︎︎ 動画の中
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[12時だよ。]
[分かってる。]
短い連絡を済ませると時計を確認する。
11時…ね……
まだ大丈夫かなー、なんて暖かい布団に潜り込んだ。目覚ましかけたし用意は済ましてる!何とかなるだろー!!!!
…って言うのが良くないんですよね。
目が覚めたら案の定12時半。もう本当に腹括りたい。
用意してあった鞄を乱雑に掴み取れば焦る気持ちと言い訳を考える頭のまま友人宅へ全力ダッシュした。
友人宅にて_
“ーーーー!ーーー!?!?!?”
誰かの声が聞こえる。誰か来てるか…?なんて思って耳を澄ませた。
“ちょー助かる。アライグマだわ。”
“それラスカ─”
「うわぁぁぁああああ!?!?!?」
友人宅にて、俺の大声が響き渡った。
「あぁ、来てたの?」
俺の大声を聞き付けた友人がにやにやと癪に障る表情を浮かべて居間から出てきた。
「なんで俺の見てんの…」
「なんでって…嫌がらせ。遅刻したし。」
「謝るから、今すぐ止めてくんない?」
「……楽しんでみてるだけなのに。」
「嫌がらせって言ってただろ。」
「…ぁ、結構効いてた?」
「そりゃそうだよね。今聞いたら下らないギャグばっか──」
「うるせぇ。」
その後、(信じる気は窺えなかったが)言い訳を聞いてくれ、取り敢えず謝った。何せ数分走って友人宅に来たものだから未だに上がっている呼吸を整えるために少し休んで、なんて水を用意してくれた。短い感謝を述べればグビっ、と乾く喉に水を流し込んだ。
“リロルラリロレラ。”
吹くかと思った。いや、なんなら吹いた。
変なとこに入ったし咳き込んで逆に呼吸が乱れた。お前ふざけんなよ、なんて目で睨み付けても傍から見れば滑稽な姿でしか無かった。
「なんでそんな顔してんの?」
「お前がッ…けほっ、ごほっ、」
「無理して喋んなくていいよ。」
聞いてきたのお前だろ。
もはや呆れる此奴の態度に白目を剥きたくなった。大きな溜息が無意識下で漏れる。
「なんでそんなに嫌なの?」
「なんで…って……」
口の中に続きの言葉が留まった。唐突に口内が熱くなるのを感じた。サッ、と口が乾くのを感じる。頭に疑問符を浮かべて首を傾げる此奴には悪いが…言えるようなもんじゃない。こんなことを言ってしまえば此奴は次どんな言葉を吐いてくることか……。
「理由ないのに俺の動画止めてきたの?」
意味わかんねー。なんて動画の再生ボタンをタップした。
途端に喋り出す動画の中の俺。
咄嗟に友人のスマホを取り上げた。
「ぉわっ!?何すんだよ!!」
「は…ずかしい…から……見ん…な」
「…え?」
「恥ずかしいから!!見んな!!」
「それに、今お前の前に本物が居るんだから別にいいだろ!!」
「…………」
口から飛び出たありえない言葉たちに友人然り、俺まで驚いた。はっ、と口を塞いだ時にはもう遅い。ショックのあまり友人のスマホも取り落とした。
カタンッ、と重いのか軽いのか分からない音で我に返った。
_遅刻といい謎の言葉といい今日は本当に腹括りたい。
静かに天を仰いでは友人の方をちらりと見た。
「…やばい…可愛い。」
「…動画の中だとこんなにカッコつけてんのに…」
「……はぁ!?!?」
友人が顔を真っ赤にする俺を見て愉快に笑った。熟腹の立つ。思わず殴ろうかと思ったがグッ、と堪えては羞恥心からか悔しさからか分からない涙で視界をボヤけさせた。
「あーあ、、泣かないでよキヨ。」
友人が指の腹で涙を拭った。
そのまま頬まで手を滑らせては顔を近付けて来る。
…これはやばい、
呼吸が伝わる距離まで顔を持って来られた時に、俺はようやくキヨ渾身の右フックを友人の左頬にプレゼントした。
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コメント
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可哀想wまぁ私も友達とかに自分の動画見られてたら恥ずかしくて膝蹴りかましそう……てか今なうで「ン゛か゛わ゛ち゛ぃ゛ね゛ぇ゛!゛!゛!゛」ってなっております