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「おれ、せらおとならヤレると思うんだよな」

唐突に落とされた言葉に、俺は固まった。それから、ぽかんと口を開けて隣の男を見る。俺はこんなにも動揺しているというのに、当の本人は何事もなかったかのようにネクタイを解いている。いつもと同じ、何を考えているかわからない表情だ。

もしかしたら聞き間違いだったのかもしれない、とゆるく首を振った。

「だっておれ、せらおのこと好きだし、せらお綺麗やし。せらお相手なら何の問題もなくイけそう」

だけど着替えを続けようとシャツに手をかけた瞬間、今度はそんな言葉が聞こえてくる。雲雀はやはり普段と同じ表情で、同じ抑揚で、パーカーを脱ぎ去るとそのまま足元に放った。

「……………………念のため聞くけど……、ヤレるって、……何を?」

どう反応するべきか悩んだあと、たっぷりの間を取って恐る恐るそう尋ねる。いつの間にかシャツまで脱ぎ捨てた雲雀はきょとんと目を丸く開いて、不思議そうに首を傾げた。

「何って……、決まってるだろ? セッ」

「やっぱいい!!言わないで!雲雀の口からそんな単語聞きたくないっ!」

可愛らしい顔からそんな言葉が出てくるのは想像以上に耐え難く、答えようとした雲雀の口を思い切り塞いで黙らせる。「むぐっ」なんて空気の漏れる間抜けな音を立てた雲雀は、怪訝そうに眉をひそめた。まるで「おまえが聞いたくせに」とでも言いたげな顔だ。

「……ていうか、なに。なんでいきなりそんな話になったの…?」

今は五限目の体育の時間だ。B組と合同のため、どうせいつものように校内を放浪しているであろう雲雀を探して、引きずって、更衣室へと辿り着いたのが予鈴の鳴った直後。もうとっくに準備の終えていた他の面々は授業へと向かい、取り残されたのが俺と雲雀の二人というわけだ。だからよほど大きな声で騒がない限りは、周りから咎められるわけでもない、――はず。

まさかこんな話題が雲雀から出るなんて思いもしなかった。俺の中では――多少の変化はあれど――雲雀はいつまでも子どものような幼い男だったのだから。

「……あのさ、雲雀。いくらなんでも言っていいことと悪いことがあるでしょ。相手が相手だったら、そんなのセクハラなんだからね。」

まったく、相変わらず雲雀は何を考えているかわからない。きっと何の気なしに発した言葉なのだろうけど、普段の言動を知る俺としてはさすがに衝撃的だった。性格を掴めないとはいえ、「ヤレる」だとか「セックス」だとか、そんな下卑た言葉とは一番縁遠い男だと思っていたのに。

だけどそんなことに一々心を乱されていてはこの男の相手は務まらない。きっとまた、どこかでくだらない話を聞かせられたのだろ

そうして心を落ち着けようと息を吐いたところで、突然、突き出した手のひらに何かが触れた。

「ひゃ、っ…な、な……っ」

咄嗟に引いたその手を守るように握りしめる。生暖かった。ぬめっとしていた。動揺する自分の視線の先には、ゆるく細められた雲雀の目。

――舐められた。

そう判断して、頬がかあっと熱くなる。じっと俺を見つめる雲雀は、パッと表情を変えると、大きな口を開けて明るく笑った。

「あははっ!!なんだその声!可愛いし面白いけど、慌てすぎだろ〜!」

「ひ、ひば、……なめ……っ」

「うん。だってせらおが喋らせてくれないから」

あっけらかんと、なんでもないような顔で言う雲雀に言葉が出ない。俺の頭はこんなにも混乱しているというのに。まだ心臓が、ばくばくと音を立てているというのに。

そんな反応を楽しんでいるのか、雲雀は不敵に笑い、一歩分の距離を詰めると、おもむろに俺の体を引き寄せた。

「は、……っ、な、なに……っ」

だいぶ引き締まった肉体が近づく。突然何を、とさらに動揺する俺を他所に、雲雀の腕は俺の腰へと回って、彼の素肌が、自分の中途半端にさらけ出した肌へと触れた。

「……なぁ、せらおってもしかして童貞?」

耳元に近づいた唇が囁くようにそう問いかける。一瞬何を言われたかわからなかったけどすぐにその言葉を理解すると、「へっ?」っと間抜けな声を上げた。

「あ、図星? わは、なんか反応が可愛いし、慣れてなさそうだな〜って思って」

雲雀の吐息が耳を擽る。雲雀の指が、背骨を撫ぜるように這う。ゆっくりと、わざとらしく。それがなんだか、やけにぞくぞくした。

「ひ、……っ」

背中の筋を辿るように指先が下りていく。引きつった声が漏れた。それからついでのように腰を撫で、骨盤に触れて、さらにその下、尻を熱い手のひらが優しく覆った。

「ひ、ひば…り……っ?」

あまりのことに頭がついていかない。なんでこんなことに、なんて脳が混乱している。だけどこのまま大人しくしているわけにはいかない。雲雀の雰囲気が、なんとなくいつもと違うからだ。とにかく引きはがさなければ、と暴れるけれど、雲雀の力は思いのほか強い。雲雀はそのまま俺を押さえつけるように抱きしめて、ゆっくりと口を開いた。

「……なぁ、じゃあさ」

硬い指先が、尾骶骨をくるりと撫でる。漏れたのは、「ん」という反射のような、甘えているような、よくわからない声。

「な、なに……っ」

混乱、動揺、恐怖――それと、あまり認めたくはない感情。慌てふためく俺を嘲笑うように、不埒なそれはさらに下へと下りていく。

「……こっちは?」

割れ目をなぞるような指先が、恐ろしい。なぜこんなことをするのか。なんで俺は、こんなにもされるがままになっているのか。なぜか弱々しく震える俺を撫でながら、雲雀が笑うように言った。

「……ここ、使ったことある?」

くん、っとズボンの上から軽く押される。そこは、自身ですらあまり触れたことのない、深い狭間。不浄の場所。その意味を考えて、理解して、頬が一気に熱を持つ。渾身の力で雲雀の体を突き放した。

「わっ」

「あ、あるわけないでしょ、 雲雀、おかしいって…何考えてんの……っ!!!」

本気の相手でもいるのなら己だって考えないこともないけれど、そんな相手すらいないことは、長い付き合いの雲雀なら理解しているものだと思っていた。なのにこんなの、裏切られた気分だ。

あまりのことに怒りを顕にする俺に、雲雀はなぜか口角を上げる。それからこちらを値踏みするように目を細めると、はっと乾いた音をこぼした。

「……そうだよなぁ、お前、真面目だもんな」

嫌な笑みだ、と思った。嘲るような、からかうような、そんな笑み。苛立ちから眉間を寄せると、目の前の男を睨みつける。だけど雲雀に堪えた様子はない。――一体なんだというのだ、とさらに苛立ちが募る。

「……そう、俺は真面目なの。わかったなら、くだらない話してないでさっさと授業行くよ。雲雀を探してたせいで、俺まで遅刻になっちゃったじゃん」

本当にこの男はわけがわからない。単位が危ないのだと聞いて、――せっかく戻ってきたのに、一緒に卒業できないのは嫌だから――わざわざ探してまで連れてきてやったのに、なんという仕打ちだろう。ふん、と鼻を鳴らすと、途中まで外していたシャツのボタンに手をかける。ああ本当に、腹立たしい。だけどシャツを脱ぎロッカーにかけて、ベルトを外し、ズボンの前開けを開けても、雲雀に動く様子はない。ただじっと、何か言いたげにこっちを見ている。

馬鹿なことをしてしまったから気まずいのだろうか。居心地悪くそう考える。本能のままに生きているような男だし、彼にそんな殊勝な心があるとは思えないけれど。

ふう、と小さく息を吐くと、せめて声だけでもかけてやろうと雲雀の方を振り向いた。

「……ちょっと、ひば……、っん!」

だけどその言葉は、薄い唇によって遮られる。

「……は……? ……ちょ、っんん、っ」

制止しようと開いた唇の隙間から、何かが侵入してきた。分厚くて熱い、何かだ。途端、ぞわりとした感覚が身体を這う。頭の中が真っ白になった。その間にぐっと腰を引き寄せられ、ぴったりとくっついた体に、ふるり、と胸が震えた。

――けれどそれは、決して不快なだけではない。

「あ、……ひば、……ん!」

言葉を紡ごうとしてもすぐに遮られて、また熱い吐息を送られる。蹂躙される。食べられる。

どん、と胸を押す。だけど口づけは深くなるばかり。柔らかな粘膜を絡め合わせるその感覚はぞわぞわして、背筋が震えて、頭がおかしくなりそうだ。

どうにか顔を背けようとしても、頭を固定されているから逃げられない。口内を荒らす舌はまるで生き物のように蠢いて、おぞましいほどに気持ちがよかった。

「……あ、ぅん……っ」

水音が鳴り響く。ガタン、と音が聞こえて、ロッカーに押しつけられたのだと気がついた。肩が痛い。背中が冷たい。なのに、舐られた舌が、口の中が、溶けるように熱くて、ただ甘い吐息を漏らした。

「……ふ、せらお、気持ちよさそうじゃん」

少しだけ唇を離して、雲雀が言う。やっと終わった口づけに、文句を言う気力も起こらず、ただその身を震わせた。

「可愛いなぁ……」

口端から垂れる唾液を拭うように雲雀の舌が触れる。頭がくらくらと揺れている。密着したことでぐっと押しつけられる下半身は、熱くて固くて、生々しい。居心地悪く身を捩るけれど、雲雀はそれすら嬉しそうに笑うと、唇をもう一度啄んだ。

「も、なに……っ」

ちゅ、ちゅっと落とされる甘い音に脳が溶けていく。雲雀の体を突き放そうとしていた手は気がつけば彼の腕にしがみついていて、まるでそれが、この男に縋っているようだった。

「……勃たなかったんだよな」

ぽつり、と感情の読めない声が落とされる。言葉の意図が掴めなくて、小さく頭を揺らした。

「一回さぁ、……女の子とそういう雰囲気になったことあるんだけど、勃たなかったんだよ、おれ」

知らない話だ。酸欠でぼんやりとした頭でそう思う。雲雀はまた、ちゅっと唇をくっつけた。

「……ん、そういう雰囲気、って……?」

「ん〜……えっちな雰囲気?放課後に勉強教えて貰ってたとき、二人だけの教室で…まぁそういうこともあって。自暴自棄になってたってのもあるし、……好奇心もちょっとだけ」

まるでなんでもないことのような声音でありながら、その顔は自嘲するように歪んでいる。アンバランスだ。雲雀の言葉を理解する前に、ズキン、と胸が痛む。

「……勃たなかったんだよなぁ……」

ぽつりと再び落とされる、感情のない声。

雲雀の言葉をゆっくりと噛み砕いていく。

――自暴自棄になって、俺の知らない女の子と。

どくん、と跳ねたのは心臓だ。そのときの雲雀の気持ちを思って、雲雀の行動を想像して、わけのわからない感情が波のように押し寄せる。モヤモヤして、苦しくて、吐きそうだ。

「……なんて顔してんの、おまえ」

雲雀の眉が困ったように下げられる。何も答えられない。だって分かんない。今、俺の心の中は、あまりにもぐちゃぐちゃしているから。きゅっと噛んだ唇を、雲雀が宥めるように舐めた。

「……同情? それか気持ち悪い? やけになって馬鹿なことしたな〜って思ってる?」

雲雀の問いかけに、小さく首を振る。そんなんじゃない。そんな、わかりやすいものじゃない。渦を巻くそれは、おぞましいほどに大きな、醜いもの。

黙り込んだ俺に雲雀が小さく唸る。それからふ、と面白そうに口端を歪めると、俺の耳元に顔を近づけた。

「それとも、……嫉妬してる?」

びくっと身体が揺れる。かあっと頬に熱がこもった。図星だった。わかっている。醜くおぞましいこれは、明らかな嫉妬だ。咄嗟に触れた体を突き放そうとするけれど、雲雀はそれを許してくれる気はないらしく、逆にぐっと強く抱き込まれる。

「……離して!」

「なんでだよ。……さっきは、そんなに嫌そうじゃなかったじゃん」

耳にちゅっと唇を落としながら、雲雀が言う。甘いそれは、心を容易に溶かしてしまうから、質が悪い。

「ぁ、……も、だめ……っ」

「なぁ、嫌だった? おれとキスするの。こうして、ぎゅうってくっつくの」

「……ひ、ぅ、……い、嫌に決まってる……っ」

必死に首を振る。否定する。だってそんな感情、雲雀に抱いてはいない。――抱いてない、はずだ。

「ほんとに?でもせらおも、……勃ってるじゃん」

ゴリっと音がした。雲雀に押しつけられたそこが擦れあって、「あ」とか細い声が漏れる。

「や、やめて……っ」

ごりごりと。ズボンの上から遠慮なく押しつけられるそれに、腰が疼く。粘液がとろりと溢れるのがわかる。今にも卑猥な音が聞こえてきそうで必死に身を捩った。雲雀がふっと吐息をこぼす。それにまた、ぞくりと背筋を何かが駆け上がった。

「ぁ、ぅう……っ」

感じている。興奮している。快感から、――嫉妬から。男の体はわかりやすく、誤魔化しようがない。性別なんて今まで大して気にもとめていなかったけど、今ばかりは男であることを呪った。

雲雀の声に、吐息に、感触に、身体が勝手に熱を上げるのだ。尚も送られる熱い感覚から、雲雀の腕にしがみついて体を震わせることしかできない俺に雲雀が甘い声で囁いた。

「…なぁ、せらおは、おれが他の子とセックスするの嫌?」

どくん、とまた、心臓が跳ねる。嫌だ、と咄嗟に思った。雲雀の隣に、知らない誰かがいるのは嫌だ。雲雀が誰かにこんなことをするのは嫌だ。だけどそんなこと、俺に言う権利はない。だって、俺は雲雀の恋人でもなんでもない。

「なぁ、嫌って言って。おれが、他の子と仲良くするのなんて見たくないって。……おれが、せらお以外に欲情するのは嫌だって」

だというのに、雲雀はそんなことを言う。俺の耳に口づけながら、体をぎゅうと抱きしめながら。それはとても必死で、切実で、なんだか懇願するような響きだった。

「雲雀…」

ふるり、と体が震える。全身が心臓にでもなったかのように鼓動がうるさい。躊躇うその気持ちを炙り出すように、雲雀がゆっくりと口を開く。

「……せらお、おまえのその気持ち、ちょっとだけおれにちょうだい?」

ぎゅっと抱きしめる彼の体は、熱い。鼓動も早い。今にも泣きそうなこの気持ちは、何なのだろうか。ぎゅうっと目を閉じる。わかっているけど、わかりたくない。だけど、雲雀が他の誰かのものになるのはどうしても嫌だった。

ぐっと唇を噛むと、胸に湧いた勢いのままに、心の奥底に隠していた素直な言葉を空気に乗せる。

「……い、嫌に決まってる、そんなの……!雲雀の隣はずっと俺だったんだから……っ、雲雀の隣は、俺以外が立ったらダメ…。」

じわり、と目が熱くなる。声が震える。それでも必死に叫んだそれに、雲雀はふるっと体を揺らすと、短い息を吐いた。

「は、……ははっ。……破壊力すごいなぁ……」

興奮しているのだということがよくわかる、熱い声だった。濡れた音だった。そんな音を耳に直接吹き込まれてはたまったものじゃない。なのにびくりと跳ねる肩を押さえつけるように抱きしめられ、さらに言葉を重ねられる。

「うん。……大丈夫。今までも、この先も、……おれの隣にはせらお以外いらないから」

甘ったるいその音に、じわじわとした羞恥が芽生える。なんてことを言ってしまったのだろう。これではもう、告白したのと変わらないじゃないか。こんな気持ち、今の今まで自覚すらしていなかったのに。嫌ではないけれど、満足感すらあるけれど、ひとつも制御できないこんな感情は、心を弱くさせてしまう。

「……はは、せらおが熱烈なこと言ってくれるから、びっくりしてイきそうになっちゃった」

そんななんともいえない複雑な気持ちになっていれば、雲雀がどことなく嬉しそうな顔でそんなことを言った。

「え、いき……っ?」

「仕方ないだろ〜? いっつも素直じゃないせらおが、「雲雀の隣は俺じゃなきゃ嫌〜!」とか言うんだから!」

ふふんと鼻を鳴らしながら言うセリフじゃない。そう思うけれど、その満足そうな顔を見てしまえば文句を言う気持ちも萎んでしまう。わなわなと唇を震わせたあと、長い息を吐く。それから、未だ密着しているその体に頭を預けた。どうしたって、発してしまった事実は消えない。

「……ちょっと」

だけど雲雀は落ち着かせてくれる気はないらしい。背中に回った雲雀の手がゆっくりと下がり、腰の辺りで不穏な動きを見せている。俺はその手をがしっと掴むと、自らの体から引きはがそうと力を込めた。

「ン〜?なんだよ」

対する雲雀は、とても不満そうだ。

「なんだよじゃないっての……っ!雲雀ってば何考えてるわけ!!」

「なにって……、だってこのまんまじゃ辛いだろ? おれもおまえも」

俺の制止なんて気にもとめず、雲雀の唇がまた耳に触れる。耳殻を、優しく舐る。

馬鹿になってしまったこの身体は、それだけであっさりと力を抜いてしまった。

「あ、んっ、も……っ」

「わは、……せらお、感度いいよなぁ。力入ってないじゃん」

ぺろりと伸びた舌が耳朶を擽る。唇が柔らかく食む。止めきれない手は、そのまま下半身へ。中途半端に脱いでいたのが仇になった。雲雀がずるっと下着ごとズボンをずり下ろすと、すっかり勃ち上がった性器が姿を現した。

「ぁ、……ばか、触んな……っ」

大きな手のひらが性器を包む。その拍子にくちゅっといやらしい音が鳴るのが、妙に恥ずかしかった。

「ん〜、でもせらお、すっごいぬるぬる……。腰も揺れてるし、気持ちいいんだろ?」

性器を直接擦られて、気持ちよくないわけがない。雲雀も男ならわかるだろうに、随分と意地の悪い言い方をする。

「ふ、……ぅ、ん……ッ、ん」

漏れる声を必死に抑える。快感を逃がそうとする。だけど雲雀は容赦がない。絶頂が近いのを感じ取ったのか、扱く力を強めると、耳元で低く囁いた。

「セラフ、イッて」

ゴリっと先端を押し込まれる。括れを、きゅっと擦られる。その強すぎる刺激に、初めての感覚に、視界がぱちんと小さく弾けた。

「っ、〜〜〜〜……ッん、ぅ……っ♡」

とぷり、と溢れる感覚に視線をやれば、性器からは白い液体が漏れだしている。雲雀はそれを手のひらで受け止めると、絶頂の余韻に震える俺を宥めるように唇を重ねた。

「ふ、ぁ……っ」

「うんうん、気持ちよかったな〜。可愛かったぞ、せらお」

ちゅ、ちゅっと唇を啄む雲雀は随分と嬉しそうだ。脱力感からろくな抵抗もできず、ただそれを受け入れる。

「も、……信じらんない……」

達してしまった。雲雀に弄られて、誰が来るかも分からないこんな場所で。ムードも何もあったものじゃない。

「うぅう、体べとべと……」

すっきりはしたけど、最悪の気分だ。羞恥に頬を染めながら、汚れた体を拭おうと雲雀の腕の中から抜け出す。――抜けようと、した。

「……どこ行くんだよ」

だけどギラついた雲雀の目がそれを止める。思わずピタッと止まる俺に、雲雀がふっと目を細めた。

「せらぁ。……おれ、まだイッてないぞ」

ぞくっと背筋が震える。思わず逃げようとする腰を引き寄せられ、雲雀の未だ硬い性器が俺のそれに触れた。

「あ……っ」

ズボン越しの性器がゴリっと擦れて、出したばかりの体がまた熱くなる。そんな反応が気に入ったのか、雲雀は腰を押しつけながら、俺のお尻へと手を這わせた。

「ちょ、ちょっと雲雀……っ」

「ズルいだろ、おまえだけイクなんて」

「ッそ、れは雲雀が勝手に…」

雲雀の指が割れ目をなぞる。すうっと、優しく、けれどしっかりと、俺に意識させるように。「ひ」と短い悲鳴が漏れた。

「ひ、ひばり……、」

指先は静かに下りて、辿って、その中心をくん、とつついた。ぬめりを纏った指先は、それだけでもう中に入ってしまいそうだ。「あ」と漏れたのは、あからさまな期待の声。

「……ここ」

普段よりも幾分も掠れた切ない声が耳に届く。可哀想で情けない、低い声だ。

「せらおのここで、おれをイかせて」

なんて馬鹿なことだろう、ありえないことだろう。だけど胸は、それにきゅんと小さく疼いたのだった。

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