「どうして皆僕から逃げていくんだ…」
『え?・は?』
一瞬、空気がシン…と静まった。
「何言ってんの?最原ちゃん!それはその昔探偵は人類の生命を脅かす存在として知れ渡っていたんだよ!その風習が消え去った今でも一部の人間はそうして探偵というものを恐れ戦くようになっちゃったんだよ。知らなかったの!?」
ゴン太はすかさず反応した。
「えっほんと!?じゃあ、みんなの中にその一部の人がいたのかもしれない…」
「ゴン太はバカだなあ!嘘に決まってんじゃん。…でも最原ちゃんさっきから様子がおかしいよね…。頭でも打った?」
「何言ってるの…?僕は元からこうだよ。それよりゴン太くん、あの時の返事はどう?」
「え?ゴン太、最原くんと何かあったっけ…?ごめんね最原くん、ゴン太馬鹿だから忘れちゃったみたい…」
なんてことだ。あの時の、僕の告白を無下にされるなんて!
許せない、許せない、許せない!!
「なんで?僕からの告白だよ?忘れるわけないよね。じゃあ今すぐここで返事してくれるよね。僕がもう1回告白するから」
「えっ!?ゴン太たちってそういう…!?ごめんオレ気づけなくて…オレここで見守ってるからさ!頑張れよーゴン太!」
「ええっ…!?」
「もういい?もうこれ以上僕以外と喋らないでね。…じゃあいくよ」
「う、うん…ゴン太、頑張るよ!」
なにを頑張るのだろう。ちょっと分からないけど、そんな抜けてるところも可愛い。
「僕と…死んでくれる…?」
空気が固まる。
「…ちょっと、分からないよ…ごめん、ゴン太が馬鹿で…」
これは断られた…?
ありえない!僕たちは相思相愛だったはずなのに…!なんで…
「最原くん、ゴン太あんまり詳しくないけど、そういうのはダメだと思う…。それにゴン太じゃなくてももっといい人がいるよ!だから、ごめん」
「えー、まじで最原ちゃん?気でも狂った?すっごいおかしいよ?…ま、最原ちゃんの一世一代の告白が見られたからいっか!じゃあね」
「…どこ行くの」
「…やだなあ、さっきあんな熱烈なものを見せてきた癖にオレに寝返っちゃうの?尻軽すぎない?それにオレは最原ちゃんとそういう関係になりたいとか1ミリも思ってないよ。だから離して」
…
……
「あれ?どうしたの、フリーズしちゃった」
「大丈夫かな…最原くん、様子がおかしいよ…
ゴン太でもわかるよ。」
「おっ、離れた」
…あ、王馬君だ。なんでこんなところに…?って、そうだ!ゴン太くん!
「ゴン太くん!」
「えっ!?どうしたの!?」
「大丈夫!?変な事されてない?って…それ、もしかして…」
カッターが、へにょへにょに変形している…
切っ先が丸く曲がってて使い物にならなさそうだ。
「最原くん、元に戻ったんだね!よかった…」
「ええっ…あ、ありがとう…じゃなくて、カッター…!」
「カッター?あっ、ごめん!勝手に曲げちゃった…直せないか試してみるね!よいしょ…」
「わあ、すごいね!カッターがどんどんぐにゃぐにゃになっていくじゃん。もう使えないんじゃない? 」
そうだ。もうカッターは使えないんだ…!!
「じゃあもうこれで僕の被害に会う人は出ないってこと…かな」
と言うと、王馬くんはわざとらしく聞いてきた。
「えっなに?超高校級の探偵ともある最原ちゃんが人に迷惑をかけまくってるの?はあ、昔の純粋さはどうやら、落ちこぼれちゃったみたいだね…」
「いや、これはちがっー」
…まさか、今回の騒動は王馬くんのせいなのか?
だからこんな余裕そうにしているのか…?
いやこの態度はいつものことか。
でも王馬くんのことだ。関わっているに違いない。
「王馬くん」
「どうしたのー?…まさかオレがこの件の主犯格!とか言い出さないよね?」
何も言わずにじっと見つめる。
「…まあ、正解だよー!実はオレが仕組んだことだったんだよね。だってさあ、こんな面白そうなこと悪の総統がやらないわけないからね!にししっ」
「ええっ!?ダメだよ王馬くん、こんな事したら!」
「うるさいなー、ゴン太は。いいだろ、楽しかったし」
…本当か?
仕組んだとしたらいつ…
僕が来る前?
でも赤松さんも様子がおかしかったし。
まさか組んでたのか…?
王馬くんには何を聞いてももう意味は無いだろうし、赤松さんに聞いてみるしかない。
「あれ?最原ちゃん、どうしたの?また考え事?だから言ったじゃん。オレが仕組んだって 」
「まだ確証してないだろ。僕は赤松さんに会いにいく。ゴン太くんたちも探して!」
「赤松さんを探せばいいんだね!わかった。ゴン太、頑張るよ!」
「…ふーん、まあいいや。頑張ればいいんじゃない?ソレが治るかは別として」
なんか、やけに含みのある言い方だな。
「王馬くん、まさかまだなにか隠してる訳じゃないよね」
「それを当てるのが探偵さんの仕事でしょ?にしし、頑張ってねー。じゃ!」
「あっ!王馬くん!…行っちゃった。じゃあ最原くん、ゴン太も行ってくるね。」
「うん、よろしくね」
今は、赤松さんを見つけることが優先。
そろそろ百田くんが見つけてるといいんだけど…