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「何してますの?鳴海隊長」
保科は専用武器をしまい鳴海の方へ歩く。
「別に、ただ夜景を眺めていただけだ」
第3と第1の合同討伐で、鳴海と保科は共闘をすることになった。今回は街中だったから近接戦の強い2人が主力となり戦った。敵は案外弱くすぐに討伐は終わった。鳴海は誰もいなくなったビルの屋上で夜の景色を眺めていた。夜の景色は昼とは違い、どこかもの悲しく、美しい。
「何かようか?」
「鳴海隊長がいない、と長谷川さんが言ってたんで、探しにきました」
「事後処理はやらんぞ」
「長谷川さんが可哀想やな」
「うるさい」
鳴海は柵に手をかけ、ぼうと見つめる。保科も隣に立ち同じく夜景を見る。
「綺麗ですね」
「そうだな」
他愛のない話をする。自分の甘い気持ちはしまったまま、興味がないような演技をする。
いつになったらこの思いを伝えられるのだろうか。
「それでな、四ノ宮とレノがな、カフカにドロップキック決めたんですわ」
「ふっ、あの2人のなら痛そうだな」
「せやねん。カフカその場に倒れ込んで呻いてたわ」
「そうか」
他の男の名前を出されるとムッとする。彼氏でもないのに自分はどうやら嫉妬深いらしいのだ。
「そろそろ戻るか?」
「了」
鳴海は階段へ通ずる扉へと歩き出す。保科はその半歩後ろを歩く。どうせなら隣を歩いて欲しい、なんてことは言えずにドアノブに手をかける。
「そういえば鳴海隊長」
「なんだ?」
鳴海は後ろを振り返る。鳴海の目に映ったのは、黒い画用紙に金の絵の具を一滴落としたような月と、こちらを微笑みながら見つめる甘い初恋の相手。
「今日は月が綺麗ですね」
「っ!!そっそれはどういう…」
「さ、行きましょ」
「おっおい!」
保科は鳴海の横を通り階段を降りていく。よく見たら保科の耳は真っ赤だった。
こいつ…!!
「その言葉!そっくりそのまま返してやるからな!!!!」
「っ!ありがとうございます///」
「感謝されることは言ってないがな!」
「もうええから!!!!早く行きますよ!」
保科は恥ずかしさのあまり階段を全速力で飛び降りていった。
「あぁ〜クソ!可愛い///」
摩天楼から見えた月なんかに意味を持たせるなんて自分はどうかしている。
鳴海はゆっくりと階段を降りていった。