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みんな顔を歪めた。天使コスがどこからともなく現れたからだ。
そして一斉に帰れと口を開いた。天使コスはそれを無視して話し始めた。
「今度はお城に行って欲しいな〜ほんの2日間でいいからね。」
指をぴんと立てて話し続ける。
「いやだ?それだといいねは貰えないよ、やるしかないんだよ。」
そこでようやく千秋が口を開け、こう言った。
「ひと言も言ってねぇよな?帰れよ。」
「そうだ、帰れ帰れ。」
花夏も口を揃えて言う。この二人は仲良しなのか仲が悪いのかよくわからない。
現在、花夏ずは皿洗いを終えてのんびりしていたのだ。手が乾燥してハンドクリームを塗ったり、おやつを食べたり、不思議な外の景色を見たり…。
こんなに忙しくない時間に訪問されたらそりゃ機嫌が悪いに決まっている。天使コスもセンスがない。
「けれど…ほら、そんなにだらだらしてたら何も起こらないよ?」
「嫌だ、何も起こらない方がいいよ。」
「落ち着きてぇ。」
「たまにはのんびりしたいわ〜。」
「帰れないならふてくされてやる。」
天使コスの発言にみんなは反論していく。それはいかにも直情的で理由になっていない。そしてこんな奴らを物語にしてしまったら何も起こらない。
「ほら、前回話したでしょ?色々して欲しいって…。」
みんなそっぽを向いて聞く気ではない。こんな奴らの相手をする天使コスも大変だ。
「ああ、もう!送ってやるよ!お前らは2日間で姫の赤い指輪を取ってこい!罰はなし、報酬はありだからね。」
4人は姿を消した。…いや、消された。
「さ、さみぃ…。」
花夏は目を覚ました。
「あ、起きたな?」
目の前に青年が現れた。目の前と言ったように鼻が当たる距離である。
非常に鬱陶しいなと花夏は思いながら寝ていた状態から体を起こした。周りは薄暗く、バラの絵で埋め尽くされた壁紙が貼られていた。
花夏はどうやらプリンセスが使っていそうなファンシーな見た目のベットで寝ていた様だ。
花夏はこんな可愛いらしいベットで寝ていたことを考えて恥ずかしくなってきた。
「もっ、もしかしてこの僕と一晩過ごすつもりなのか!?」
「ええっ、ええっ!?」
二人とも顔を真っ赤にして見つめあっている。
青年は一気に壁まで下がって、首を振る。
「全然そんなことしません!お、俺には無理ですし…!」
「ええ、君はかっこいいからいいや〜って思ったけどね。」
「はぁ!?」
青年は花夏のペースに乗せられている。なんだか一方的に話されていてかわいそう。現実でも一方的に話されると困るよね。
「えっと、俺はルーシー!怪盗さ!」
ルーシーはポーズを決め、花夏と向き合う。ポーズは自分で考えてあげてね。
「もしかして僕を盗みに来たぜとも言うんだな!」
「違う!手伝って欲しいんだ!」
「えぇ、僕って無能で特に何もしないけどいいのかな。」
「いいの!」
この無理矢理でも話が進みそうなこの現象は天使コスが作ったんだろう。きっと細かい話が作れないからだ。
「で、何を手伝えばいいわけ?」
「時間になったら現場に侵入するだけ。あと寝ないで舞踏会を見ていて欲しいんだ。」
「は?寝ないでだと?」
「え、どうしたんだ?」
「寝たいよ。」
「知らないよ。」
2人はこうやって出番まで話し続けるのだろう…。
冬馬と春華はドレスを着ていた。現代ではなかなか使われなさそうな大きいドレスだ。
なぜこうなったかと言うと…。
「私たちが姉妹なのね〜。」
「なんで僕まで…やだよ、ドレス着たくない…。」
この2人も花夏が寝ていたようなベットで目を覚ましたらしい。
「なんで、なんで僕が妹なの…可愛い服似合わないし絶対だめだよ…。」
「大丈夫よ、絶対に似合うわ。私が保証する。」
「でもそんな服着たことないよ…?」
冬馬はひどく心配していて今にも泣き出しそうである。その横で春華はうっとり冬馬を眺めている。
「ほら、まだパジャマでしょう?着替えに行きましょ!楽しみね〜。」
「…いやだぁ…。」
二人はのんびり部屋から出て行った。
そうしたら突然執事が出てきた。羊ではなかった。
「お二人ともおはようございます!ささ、お着替えを!」
二人は流されるように移動し、着替えさせられ、髪を整えられた。
冬馬は死にそうになっていた。
「辛い、辛い、辛い…。」
「大丈夫よ、似合っているんだから。」
春華が必死にフォローするが冬馬は何も聞いてなさそうだった。
そしてまた執事が出てきた。
「今夜は舞踏会です。どのドレスを着るか決めてくださいね。お二人の自由を私は尊重します。」
そしてサッと消えた。
「どれすぅ…?」
「そうよ!ドレスよ!やったぁ、一度来てみたかったの〜。」
「えぇ、それはどうでもよくて…。」
「二度とない経験よ!頑張りましょう!」
「本当に二度とないといいな…。」
二人は丁寧にドレスを選んだ。春華はピンク色、冬馬は青色のドレスを選んだ。
そして現在に至る。
「そういえば天使コスが何かを盗みに行けって…。」
「赤い指輪だったかしら、なんだか盗みってやる気が出ないわ〜。」
「もう僕は舞踏会にも出たくない。」
「それはやりたいわ。」
執事によるとどうやら舞踏会は姫の城で行われ、指輪を公開…いや、自慢するようなものもついでに行われるらしい。
「馬車を用意しました、出発しますよ。」
執事がそう言い、二人は慣れないドレスで歩き出した。そして執事のサポートもあり、無事に馬車に乗れた。
「車酔いしないかしら〜?」
「しないでしょ…多分。」
こうして2人は舞踏会は向かったのだった。
「で?俺は何をすればいいんだ?」
千秋は豪華なドレスを着ている女に向かって話している。
「私にこんな口を聞く奴隷なんて…本当なら今すぐ首を刎ねたいところだけど、今はガードマンとして働いてもらうわ。」
「なんだよ、お前みてぇな奴が頂点取ってる時代にガードマンなんているのかよ?」
知りませんよ、ガードマンって軍隊ってことで…いいですよね。もう。
千秋とドレスを着た女は牢屋の鉄格子越しに話していた。千秋は捕まっていて、牢屋の中のベットで目が覚めたのだ。天使コスはそんなに千秋のことが嫌いなのだろうか?
「で、姫のお前が直々にガードマンを頼むって…どんな人手不足だよ。」
「事情は話せません、早くきてちょうだい!」
姫は千秋に背中を向けて、早足で遠ざかっていった。
「なんだよ…。」
千秋は再びベットに寝そべった。
しばらく経ち、ガードマンらしき人物からガードマンの制服を千秋に渡してきた。
「これを着てさっさと出てこい。」
ガードマンの声は低く、迫力があった。
千秋は素直に従い、制服を着た。ここはちゃんと従い、安全になるまで流れに身を任せる気なのだろう。
手袋をキュッとつけて、千秋は準備できたぞと一言だけ言い、進み始めたガードマンの後ろについて行った。すごい身長差がある。
もちろん千秋の方が身長が低い。本人のコンプレックスなので言わないでおこう。
「まぁここに立ってるだけでいい、とにかく指輪を守りきれ。」
ガードマンがそういい、何かが入っているガラスケースを見た。
そのガラスケースには赤い指輪が入っていた。
「…めんどくせぇな。」