入学して数日が経った。どうやら宇佐美さんは宇宙人ということは隠していてもどこかズレた性格であり、クラスでは不思議ちゃん的な立ち位置に納まっているらしい。対して俺は未だに宇佐美さん以外の友達はゼロ。でも宇佐美さんがよく話しかけてくれるのでぼっち生活は何とか回避と言うわけだ。
ある日の放課後
「宇佐美ソラってどいつ?」
腰まで伸びる艶やかな黒髪に端正な顔立ちをした典型的な美少女にクラス中が目を奪われた。しかし、視線に気が付いた彼女は何見てんだと言わんばかりにクラス中を睨みつける。美少女にガンを飛ばされるとさすがに皆おずおずと目を逸らし雑談に戻る。
「宇佐美ソラはワタシですが?」
「ちょっと来てくれる?」
なんだか猛烈に嫌な予感がする俺はこっそりと二人の後をつけた。
(宇佐美さんって冷静だけど結構抜けているというか……うっかりで彼女が宇宙人ってことがバレてしまうかもしれない)
言い訳じみたことを考えながらも彼女たちにバレぬよう後をつける。
どうやら 2人は旧校舎に向かっているようだ。この学校は普段生徒たちが過ごす校舎とは別に使われなくなり半分廃墟とも化した旧校舎が存在する。
旧校舎に入り、 2人が廊下を歩く度、木製の校舎がギシギシと音をたてる。ふと黒髪の女が立ち止まると、宇佐美さんに背を向けたまま話しかける。
「ここまで来れば誰もいないはず……アンタがただの人間じゃないって事は知ってんのよ。さぁ、正体を明かしなさい!」
えぇっ!!と思わず声を上げそうになってしまった所を根性で踏みとどまった。まさか、宇佐美さんが宇宙人だって事がバレてる?いつ?一体どこで?
あまりの驚きに俺はぐるぐると思考を巡らせ、引き続き彼女たちの会話に聞き耳を立てる。
「なんの事だか分かりません。そもそも、貴方とは初対面のはずですよね?
ワタシの…何を知っているというのですか?」
宇佐美さんは冷静に答えながらも、その溢れ出る気迫にコチラまで圧倒されてしまいそうだ。
「あたしの名前は出井モノカ!アンタは名乗らなくて結構よ。もう知ってるからね。アンタの名前は宇佐美ソラ……そしてあたしと同じ超能力者ってこともね!!」
(ちょ、超能力者……!?)
なんだ、宇宙人ってことがバレてた訳じゃないのか。っていやいやちょっと待て!超能力者ってなんだよ!まさかあの出井モノカって子も電波で厨二病でスピリチュアル的な感じの子なのか?
「意地でも自分から話すことはしないようね。でもこれでもまだその澄ました態度を続けられるかしら!」
『テレキネシス!!!』
出井モノカが両手を宇佐美さんに向けて構えるような姿勢をとると、宇佐美さんはあっという間に後ろの廊下の角に隠れていた俺の目の前まで吹き飛ばされていた。
「っ大丈夫!?宇佐美さん!!」
思わず彼女に駆け寄ると宇佐美さんは顔をしかめて起き上がり「驚きました」と呟いた。
「誰よアンタ、まさか宇佐美ソラの仲間?」
「いえ、ミコトさんはワタシの友達です」
「まぁどうでもいいけど。それよりも宇佐美ソラ!今のあたしの力を見たでしょ!!どう?感動した?恐れおののいた?でも安心して、今のは力を見せる為に仕方なくしただけでアンタが大人しくしてるれるなら傷つけるつもりは無い。あたしはアンタを誘いに来たの」
自信たっぷりに語る出井モノカに俺も口を挟むことが出来ずにいた。
「誘い……?」
「あたしの下僕になりなさい!!」
「嫌です」
宇佐美さんが間髪入れずに断ると暫く気まずい沈黙が流れる。
「そう、それなら……
その気になるまであたしの力を存分に味あわせてあげる!」
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