ライアは息を呑み、父を見つめながら、ナイフを払った。父親は、もう動かない。血に染まり、命を落としたことがわかった。
しかし、その瞬間、背後からかすかな声が聞こえた。
「ライア……」
その声にライアは驚き、すぐに振り向く。
母親が床に横たわっている。先ほどまでは完全に動かないと感じていた彼女が、瀕死の状態で、なんとかライアを呼んだのだ。
「母さん……」
ライアは恐る恐る近づく。血が流れている傷だらけの体は痛々しい。しかし、目がかすかに開き、彼女はライアを見つめていた。
「母さん……ごめん……」
手が震えていた。ナイフはまだ血に染まっていたが、母親を殺したわけではない。しかし、目の前の状況は理解を超えていた。
「なんで……? なんでお父さんを殺したの?」
母親はかすれた声で、涙を浮かべながら、ライアに問いかけた。その問いかけに、ライアの心は引き裂かれそうになった。
ライアは言葉を失った。母親が問いた理由、意味が、胸に突き刺さる。彼は何も答えられなかった。
どうしてこの選択をしたのか、正当化することができないことを理解していたからだ。
「ライア……」
母親は再び、ライアを見つめ、息を吐くように言った。
「お父さんは……確かに……悪かった。でも、あなたがその手を汚してはいけない。どんな理由があったとしても……」
母親の言葉は、まるでライアの心を突き刺す刃のように響いた。彼はその言葉を受け止めきれなかった。
「でも、母さん……お父さんが……」
「あの人が悪かったのは分かる。でも、あなたが今したことは、魂を汚すことになるのよ。」
母親の言葉は、それでも優しかった。
「ライア、お願い……これ以上、あなた自身が壊れるところを見たくない……」
その時、ライアの心が揺れた。父親に対する憎しみと、母親への深い愛情が交錯し、全てがぐちゃぐちゃになった。
「母さん……」
涙が溢れ、ライアはその場に膝をついて母親の手を取った。母親は彼に微笑みかけ、そして最後の力を振り絞るように言った。
「忘れないで、ライア……あなたがどんな人間になっても、私はあなたを愛している。」
その言葉を最後に、母親はゆっくりと目を閉じた。
ライアは手を強く握りしめたが、二度と母親の温もりを感じることはなかった。彼はただ、無力感と共にその場に佇んでいた。
そして、彼の心に新たな誓いが生まれた。
「母さん……俺はもう二度と、誰にも愛されない。だからこそ、俺は壊れた世界を作り続ける。」
その時、ライアの心の中で崩れ落ちた。それが何だったのかは、彼にも分からなかった。
ただ、確かにその瞬間、彼の中に世界が誕生したことだけは、はっきりと感じていた。
コメント
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母さんんんんんん"、、、、、、😭 母さんいい人すぎて泣いたわ、、 父親くんはあれだね、もう人として終わっているね^^(( まあ、ライアの行動は正しかったかと言われれば素直に頷けないけど、、、(((( でもこれでこそライアたんだからな!!! ライアたんもああ見えて昔は少しでも人の心は持っていたのですよ、、😊(??