『右京……』
右京はその甘い声に目を瞑った。
『会えなかった半年間、誰かとこういうこと、した?』
蜂谷の大きな手が右京のソレを掴む。
「して……ないッ」
『ホントに?』
「ほとんど入院……してたし……!」
『ふうん』
「安定剤飲んでたから、そもそも勃た…ないし……」
『へえ』
右京の前に跪いた蜂谷がソレを優しく扱く。
「……う……」
『……痛覚戻ったら、感度も上がったんじゃない?』
少しだけ強めに握りながら蜂谷が微笑む。
「知ら……ねえ……」
『ほら……』
先端の裏側を親指でグリッと擦る。
『”痛い”ってさ……気持ちいいよね?』
蜂谷の少し垂れた目がこちらを見上げる。
「……………!!」
右京は堪えられずその顔に向けて、吐き出した。
◇◇◇◇◇
「――――最悪だ」
右京はため息をつきながらトイレの床を、シトラスのトイレットワイパーでふき取った。
妄想の中の蜂谷が、右京のソレを口に含む前にあっけなく達してしまうのはすっかりデフォルトで、手で優しく弄られたところでいつも終わってしまう。
そしてきまって、頭を抱えるほどの賢者タイムが襲う。
右京はトイレにかけてある標語カレンダーを見つめた。
蜂谷と再会してもう3週間が経とうとしている。
正式にアルバイトとして入った彼は、週3回、右京醤油店におおよそ似つかわしくないピカピカのワーゲンを乗りこなしてくるのだが、業務のほとんどが地元スーパーや旅館・飲食店への配達で、店にはいない。
しかも作業しているときは菌の関係上、私語禁止なので、それを伝えてからは遠慮しているのか醸造所に入ってくることもなくなった。
バイトがない日も毎日LANEはするものの、やれサークルだ、授業の準備だ、研究室の会合だ、学生寮の懇親会だと忙しそうで、こちらから無理に誘うのは憚れた。
「―――これって。俺たち、どうなんだろう」
告白は、した。
好きだと言ってもらった。
でも―――。
―――付き合ってんのか?
一度だけ、鍵をかけた薄暗い店の中で、キスをされた。
『んんッ……』
おずおずと蜂谷の肌触りの良いニットのカーディガンの背中に腕を回すと、彼もぐいと右京の華奢な体を抱き寄せ、閉じ込めるように抱きしめてくれた。
でも―――それだけだった。
彼は微笑むと、
「また来週ね、社長さん」
と囁いて、裏口から出て行ってしまった。
右京は床を綺麗に拭き終わると、頭を落とした。
大学というのはどういうところだろう。
親元から離れた若い男女が私服で入り乱れて、
授業に、
サークルに、
研究室に、
飲み会に、
――――。
思わずため息が出る。
蜂谷がモテないはずはない。
高校の時は尾沢や多川なんかと付き合っていたし、蜂谷グループの御曹司という境遇から周りに敬遠されていたものの、それでも後輩を中心にモテていた。
こんな地元生徒5割のような、特徴も特色もない田舎の大学で、東京出身っていうだけでも注目を集めるだろうに、あの容姿と雰囲気でモテないはずがない。
「…………」
自分なんて―――。
今の、生徒会長でもなければ、強靭なパワーを持つわけでもない自分のことなんて、もう退屈になってしまったんじゃないだろうか。
長い溜息をつきながらトイレを出ると、祖母の雅江がいそいそと目の前を通り過ぎていった。
「あれ。なんや、作業着なんて出して」
手に持っているのは父、和俊が来ていた作業着だった。
「ああ、賢吾」
雅江は忙しそうに振り返ると、走ったまま続けた。
「今日からまーくん来るんよ」
「まーくん?」
まーくんというのは、和俊の妹の子供で、右京の従兄弟にあたる。年は5つ上だ。
「なして来るん?」
「アルバイトに」
「――――!」
アルバイトなんて、再営業し始めたばかりの小さな醤油屋では一人雇うのがやっとだ。
しかもその“育ちの良いアルバイト”のために汲み取り式便器を水洗の洋式便器に変えた借金もある。
とてももう一人雇う余裕などない。
まさか―――。
「……蜂谷、辞めんのが?」
「―――は?」
雅江はやっと足を止めた。
「俺さは何の連絡もねえんだけど、蜂谷辞めるから、まーくんが来るん?」
「お前、何ば言ってんや……」
雅江は呆れたように目を細めた。
「今日から、卒業旅行なんだべ?」
「―――は?」
「ゴールデンウィーク利用して、蜂谷君たちと卒業旅行って言ってたべした!」
「―卒業……旅行?」
右京が口をあんぐりと開けていると、砂利の駐車場に車が入ってきた。
「ほら、お迎えだ」
雅江が笑った。
「お土産は、銀峰温泉名物、低温カレーパンな!」
その言葉は、車から颯爽と降りてきた蜂谷の姿に見惚れて、耳に入らなかった。
◆◆◆◆◆
「聞いてねんだけど」
口を尖らせながら助手席に乗り込む右京に蜂谷は微笑んだ。
「あれ、雅江さんには言ったんだけどな」
「なして俺に言わねな?」
かわいい山形弁を吐きながら、ぷいと窓の外に視線を移してしまう。
「…………」
しかしその頬と首は真っ赤に染まっている。
右京に気づかれないように吹き出しながら、蜂谷はギアをドライブに入れた。
「―――しかも銀峰温泉ってのが、腹立つ……」
道幅が狭い城下町を眺めながら右京が呟く。
「地元人が高くて手の出ないような宿選びやがって。うち、金ねんだっつのに」
「あー、それなら大丈夫だよ」
蜂谷はふっと鼻で笑った。
「親父に出してもらったから」
「え」
右京は驚いて蜂谷を振り返った。
「お前、親父さんとの関係、良好なの?」
「―――表向きはずっと良好だけど?」
信号で車を停車させた蜂谷がニヤリと笑う。
「使えるものは使って生きていくことに決めたんだ」
その手が右京の頬に触れる。
「欲しいものを手に入れるためなら」
「………!」
シートベルトを伸ばしながら右京に顔を寄せたところで、
「いやー、気前よく4人分出してくれるなんて、さすが蜂谷グループの社長さんだよね」
後部座席から声が聞こえてきた。
ギョッとして右京が振り返ると、永月が手を頭の上で組みながら、運転席を後ろから蹴っている。
「温泉でじっくり煮込んだ低温カレーパンが人気らしい」
「―――!」
その横で諏訪がガイドブックを覗き込んでいる。
「―――お前ら……!」
蜂谷は2人を睨むと、青になった信号を見ながらため息をつき、またアクセルを踏み込んだ。
「モブ野郎たちを連れてくるのは本当に迷ったんだけど」
言いながらまだ目を見開いて後ろの席を見ている右京を笑う。
「お前、半年も高校来れなかったから、学生っぽいワイワイした感じの方がいいかと思って」
「誰がモブ野郎だ!」
後ろから永月が再度、運転席を蹴る。
「地味か派手かで言ったら、蜂谷がキャラ的に一番地味だからな」
「何だと?」
蜂谷がバックミラー越しに永月を睨む。
「乱闘時に一番活躍しなかったのも蜂谷だしな」
諏訪もガイドブックから視線を上げないまま言う。
「そもそも右京が狙われたのは、諏訪が撒いた種だろうが!」
右京はその言葉にキョトンと蜂谷を見つめた。
「え?どういうことだ?」
「――――」
そうだ。
右京は“赤い悪魔”の正体を知らないのだった。
蜂谷は一瞬迷ったが、ハンドルを切りながら言った。
「いや、いい」
「―――は?なんだよ?」
「お前が今さら諏訪に惚れられたら困る」
「はぁ?」
「あー、確かに。ライバルは一人でも少ない方がいいわな」
永月が笑う。
「……右京」
諏訪がやっとガイドブックから視線を上げた。
「俺、実は―――」
その口を永月が手で塞ぐ。
「はいはい!墓場までもっていきましょーね!球拾い君!」
「……新体操部のミナコは黙ってろ……!」
「車体が揺れるから暴れんな!」
蜂谷がミラー越しに睨む。
「――――ふっ」
右京は楽しそうに吹き出して笑った。
◆◆◆◆◆
温泉に浸かり、山形の春の幸に舌鼓を打つと、連日のサッカーの練習で疲れている永月と、奨学金で通い、生活費を稼ぐためにバイトを3つも掛け持ちしている諏訪は、早々に眠りについた。
「―――酒も入ってねえのに、こいつらは……」
呆れる蜂谷に右京が微笑み、膝を立てながらこごみの天ぷらを口に入れた。
「お前は酒飲んだりするの?大学で」
どさくさに紛れて聞いてみる。
「まあ、さすがに店では無理だけど。寮の先輩とかに恵んでもらったりは、な」
蜂谷は言いながら後ろに手をついて、脚を伸ばした。
「……寮って、さ」
右京はあらかた片付けた料理と蜂谷に往復させた。
「何だよ?もじもじしちゃって」
蜂谷が笑う。
「誰が……!してねえよ!」
「ごめんごめん。それで、なに?」
「寮って―――男子……寮?」
「――――」
蜂谷は一瞬驚いた顔をしたが、すぐにふっと笑った。
「当たり前だろ。そんな年ごろの男女が入り乱れたら乱交パーティーになるだろうが」
「―――ら、乱交……」
アルコールも入っていないのに、自分の顔がみるみる赤くなっていくのがわかる。
そんな言葉に照れてしまうなんて我ながらどうかしてる。
右京は残っていた水を飲みほすとため息をついた。
「―――はーあ」
蜂谷も続けてため息をつく。
「―――?」
呆れられたのだろうか。
ただでさえ飽きらてる疑惑があるのに、こんなガキっぽいところしか見せられない自分にうんざりする。
この男は日々いろんな人間に出会い、いろんな刺激を受けぐんぐん成長しているだろうに。
「やっぱり、失敗したな……」
「―――何を……?」
「来るんじゃなかった」
蜂谷はそう言いながら立ち上がった。
「ーーーー」
ハンマーで頭を叩かれたような衝撃が襲った。
そんなショックを受けている右京の横に蜂谷が座る。
「こいつらも一緒に、なんて」
「え」
ぐいと抱き寄せられる。
右京の華奢な体は、蜂谷の胸の中に包まれてしまった。
「――――!」
―――これ……。
浴衣の前がはだけ、蜂谷の胸板と腹筋が見える。
―――ほぼ、素肌なんだけど……!
その温かさに、視界がクラクラする。
同じシャンプーを使い、同じ石鹸で体を洗ったはずなのに、甘く官能的な男の匂いに眩暈がする。
―――ヤバい……。
ダメだと思っても股間が熱くなってくる。
「あー。幸せ……」
蜂谷が右京のうなじに唇を付け、軽く口づけをする。
「ずっとこうしていたい……」
甘い声と言葉が、右京の脳髄を溶かしていく。
―――ヤバい。俺だけ、こんな……。
幸せそうにうっとりする蜂谷と、興奮のため鼻血を出して倒れそうな自分の差を感じて、右京は焦った。
―――こんな欲求不満全開なところ見られたら……。
「――――俺!」
言いながら右京は蜂谷を突き飛ばす様に立ち上がった。
「もう一回、風呂入ってくる!!」
「―――は?」
驚いた蜂谷は右京を見上げた。
「今から?」
時計を見る。23時を回っていた。
「バーロー!山形人は温泉来たら、最低4回は入るんだよ…!!」
「―――へえ」
蜂谷が茫然としたまま呟く。
「寝てていいから!」
右京はタオル掛けに並んでいるまだ湿ったタオルを持つと、そそくさと鍵を持って部屋を出た。
―――収まれ……!収まれ!!
乗り込んだエレベーターで必死に自分の股間に話しかける。
ーーーこんなんで部屋になんか戻れないぞ……!
「―――あ。そっか」
右京は名案を思い付き、数字が下がっていく電光掲示板を見上げた。
「よし、いない……!」
右京はきょろきょろと見回し、誰もいないことを確認すると、それでも脱衣場から陰になるシャワーを選んで腰を掛けた。
形式上一応身体を熱い湯で流してからため息をつく。
「抱きしめられただけでこれですよ……」
真っ赤に腫れあがった自分の下半身を見下ろす。
右手で軽く触れてみる。
血液が集まったそこは、触れるだけでも重苦しい痛みが走った。
「―――ここの痛覚は戻んなくても良かったのに……」
『―――痛覚戻ったら、感度も上がったんじゃない?』
妄想の中の蜂谷が発した言葉が蘇る。
そうかもしれない。
感度と呼んでいいのかはわからないが、前よりも確かに敏感になった気がする。
「はあ」
自分でもかわいそうになるくらい反り勃ったそれを、優しく手で掴むと、右京は軽く上下し始めた。
『―――気持ちいい?』
「―――ッ!」
先ほど耳元で本物の声を聴いたせいか、妄想の声がやけにリアルで、それだけで達してしまいそうになる。
『なんだ。こういうことしたかったなら、呼んでくれればよかったのに。冷たいなぁ……』
「――――」
興奮しすぎて息をするのも辛い。
右京は目を閉じてソレを本格的に握った。
『ーーどこら辺が感じるの?右京は……』
「―――全部……」
右京は誰もいないのを言いことに呟いた。
『全部?』
「―――お前が触るとこ、全部だよ……!」
自分の放った言葉が、自分を酔わす。
そうだ。
蜂谷が触ったところは全部、気持ちよかった。
練習と称して情事を重ねていた時も、永月と決裂してからも、夏休みだって、全部。
「は……あ……ッ」
いよいよ、限界が近い。
妄想の手が自分の手に重なる。
―――今日も、ここで終わりか……。
できれば最後までするのを妄想したいのだが、今日はとても保てそうにない。
―――あ……もう……!
「――――!」
慌てて振り返ると、すぐ後ろに蜂谷が立っていた。
「―――!!」
右京は声にならない悲鳴を上げながら、慌てて前かがみになり自分のソレを太腿と腹の間に隠した。
「お前、いつから……!?」
「えぇ?会話してたでしょ、ずっと」
蜂谷は笑いながら傍らにあった椅子を引き寄せ、脚を開いて右京の後ろにピタリと座った。
「――――!」
内腿が右京の臀部に密着する。
「右京……」
後ろから抱きしめられる。
背中に体温を、呼吸を感じる。
その手が右京の頬を優しく振り向かせる。
「――――ん」
唇が触れる。
蜂谷がついばむように右京の下唇を軽く吸う。
「……んんッ」
ーーーもどかしい。
すでに達する寸前だった火照った身体が、我慢できない。
右京は首を反らせると、蜂谷の唇の間に舌を挿し入れた。
「……やけに積極的だな……」
蜂谷はふっと笑うと、腕を右京の首に回し、深く舌を挿れてくれた。
「んん……は……」
右京も蜂谷のたくましい背中に手を回し、引き締まった腰を引き寄せ、必死で彼を求める。
声も息も漏れて、誰もいない浴場に反響する。
熱と湯気が2人の身体を湿らせていく。
「蜂谷……!」
右京は両手で抱き着くように蜂谷の首に腕を回すと、火照った身体と、爆発寸前のソレを、彼の腹に擦り付けた。
「―――我慢できない?」
痛々しいまで反り勃ったそれを見下ろし笑いながら蜂谷は右京を覗き込んだ。
「できな……い……!」
素直にそう言うと、蜂谷は右京の身体を引き寄せ、そのまま抱き上げた。
「―――うわっ……!」
岩風呂の平らなところを見つけ右京を下ろすと、自分は湯の中につかり、右京の股間に顔を寄せた。
「―――え」
蜂谷はソレを手で優しく包むと、目を伏せて口を開けた。
「あ……」
興奮で思わず漏れた声に微笑みながら、蜂谷はソレを一気に根元まで咥えこんだ。
◆◆◆◆◆
硬くなったソレを口に含み、2、3回上下に吸っただけで、右京はあっけなく達した。
「…………」
たっぷり出た液体を口に含んだまま見上げると、右京は恥ずかしそうに口を手で覆いながら、肩で息を繰り返した。
右京に見えるように自分の手に口の中の液体を出して見せると、彼は顔を赤らめてそっぽを向いてしまった。
「大量だな。溜まってた?」
言うと右京は眉間に皺を寄せた。
―――んなわけないか。
蜂谷はその言葉を飲み込んだ。
―――あんなに一人で吐き出してれば、な。
右京がトイレに籠って一人で抜いているのに気づいたのは偶然だった。
配達が早く終わり、いつもは店から入るのに、駐車場から直接醸造所のそばにあるトイレに向かった時だった。
中から色っぽい息遣いが聞こえてきて、その後、
「―――はあ。最悪だ」
自己嫌悪のため息が聞こえてきた。
「あいつ……なんで何もしてこないんだろう……」
その本人も意識していないだろう呟きが面白くて、今日まで手を出さないと決めた。
―――我慢してたかいがあったな……。
蜂谷はほくそ笑みながら、一度吐き出しても尚硬度を落とさないソレと、羞恥のためか真っ赤な顔を逸らしている右京を見比べた。
「―――右京……」
言いながら手の中の液体を、割れ目にそって塗り付ける。
「――――!」
ビクンと細く白い体が跳ねる。
「いい?久しぶりだから痛いかもしれないけど」
言うと右京は再び口を手で塞いだ。
「ダメ?いいでしょ?」
「………!」
右京はウルウルと瞳を振るわせた後、口を塞いだまま、静かに頷いた。
◆◆◆◆◆
蜂谷の指が入り口に入ってくると、ぬめった音がした。
「――んん!」
久しぶりの感触に、内臓を撫でられているような違和感を覚える。
本能的に閉じようとする膝を、蜂谷が抑えた。
「痛い?ちょっと我慢な」
その声が判断力も羞恥心も溶かしていく。
右京はまた膝を開くと、口をますます強く抑えた。
指が挿しこまれ、奥まで入ると勝手に腰が痙攣した。
ゆっくりと抜き差しが始まると、弄られているのは下半身なのに、胸が痛くなり、なんだか泣きたい気分になった。
「―――痛い?」
蜂谷が心配そうに聞いてくる。
「―――い、痛い……」
右京が呟くと、その指の動きが止まった。
「マジ?」
「胸が―――痛い」
ついに溜まった涙がポロリと頬を伝った。
「は?」
蜂谷がぱちくりと瞬きをする。
「……お前のこと、好きすぎて、胸が痛い……!」
「――――!」
スーッと蜂谷の鼻孔から空気が抜けていく音がした。
「ごめん、右京。俺がもう限界……!」
蜂谷は立ち上がると、自分の反り立ったものを手で掴んだ。
「――――!!」
半年ぶりに見るそれに、右京が瞬きを繰り返す。
「お前……なんか前よりデカくなってないか……?」
「――当然でしょ」
蜂谷は自分のモノにも先ほどの液体を付けると、右京を見下ろした。
「半年も我慢してたんだから……」
「―――!」
先端が入り口に宛がわれる。
ズズズと確かな硬度と、高い温度と、えげつない存在感を放ちながら、蜂谷が右京の中に入ってきた。
「はぁッ!!アあっ!!あァッ!!」
右京は蜂谷の首と腕に掴まりながら、その抽送に耐えた。
熱い。
痛い。
気持ちよすぎて息ができない。
「バカ。呼吸……しろって……!」
言いながらも自分も余裕のなさそうな蜂谷の色っぽい声が浴場に響く。
「は…ァあッ!!」
右京は何度目かわからない絶頂を迎え、白い腹にもはや透明に近い液体を吐き出した。
「や……ば、止まんね……!」
蜂谷が切なそうに首を振りながら、右京を見下ろす。
「右京……ごめん。手加減できない……!」
「――――」
右京は蜂谷の眉間に皺を寄せた艶っぽい表情を見上げた。
「……誰に言ってんだよ、馬鹿……」
「―――?」
「俺に手加減するなんて、10年早いんだよ……!」
言いながら蜂谷の首に腕を巻き付かせる。
「こいよ。思い切り……!」
「―――言ったな?」
蜂谷は目を細めふっと笑うと、右京の足を高く持ち上げ、思い切り腰を打ち付けた。
◆◆◆◆◆
「今頃、ズッコンバッコンかなー」
永月は窓から覗く月を見上げて言った。
「のぼせても介抱なんかしねぇからな」
諏訪も同じく月を見ながら笑った。
「すきさえあれば、ぶん盗っちゃおうかと思ったけど」
永月が口を窄める。
「右京が幸せなら、まあいっかー」
「…………」
その言葉に諏訪も笑う。
「珍しく、右に同じだ」
「右京だけに?」
「……うまくねーよ!」
月が優しく照らしだす薄暗い部屋の中で、2人はクククと笑った。
【完】
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