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藍堂 有利
………まぁ、誰もいないんだけど。 真っ暗な部屋の中、電気をつけることもせず、そのまま床に座り込んでしまった。
藍堂 有利
颯から、電話で呼び出された。 すっごい鼻声だったから、どうしたのかと思い、急いで颯の家に行った。
『……俺ね…………もう、長くは生きられないんだ。』
最初は冗談かと思っていた。 でも、颯の目は本気だった。 "あぁ、本当なんだ"と、嫌でも分かった。 分かってしまった。 神様は常に理不尽だ。
…………苦しむのは、俺だけでいいのに。
医者
2ヶ月前のこと。 無機質な白い部屋の中、俺は余命宣告をされた。 頭の中が空っぽになったかのように、何も考えられなくなった。 悲しいはずなのに、涙は1滴も出なくて。 いつも以上に冷静な自分が、不気味で怖かった。 颯に言うべきか迷いはしたが、ほぼ即決で言わないと決めた。 迷惑をかけたくなかった。 悲しませたくなかった。 そんなときに颯の話を聞いた。 余命1年。 自分のことでは泣けないのに、相手の_颯のことだと簡単に泣けてしまう。 颯は俺に話してくれた。 やはり、俺も話すべきなのだろうか。
ピロンッ
藍堂 有利
《明日、遊園地に行こ!》 メールには、楽しげな文字でそう綴られていた。
藍堂 有利
〈うん〉 そう返信し、スマホ画面を閉じる。 覚悟は決めたんだ。 残りの人生は、颯の思い出づくりに捧げるって。 ……もう、後戻りはできない。 自分にそう言い聞かせて、俺は重い腰を上げた。
ピロンッ 《うん》
神代 颯
有利から返信が来た。
神代 颯
せっかく有利が言ってくれたんだ。 残り1年で、有利との思い出をたくさん作ろう。
………病気のことなんて、忘れるぐらいに。