コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
大鍋にすべての材料を突っ込み、杖を構えたところで、マリーは眉をひそめた。
マリー
大鍋の中では、底なし沼みたいな色の液体がグラグラ煮えている。大きなあぶくが浮かんで、その中にマリーの姿 真っ白の長い髪と頬にそばかすの散った不安そうな顔が映りこんだ。
マリー
ベルガモット
師匠のベルガモットがさけんだのと同時に、大鍋がゆれ、中身が勢いよく吹きこぼれた。とたんに鼻をつく嫌な匂いが、部屋中に立ち込める。
マリー
マリーは鼻をつまみ、がっくりと肩を落とした。
偉大なる魔法使い・ベルガモットは、魔法薬の調合の達人。以前この国で疫病が流行ったとき、ベルガモットの薬のおかげで事なき得た話は有名だ。
広い屋敷には、毎日たくさんのお客が、さまざまな魔法薬の依頼に押しかける。
見習い魔法使いのマリーは、そのベルガモットの娘。今年十三歳になる。いつかお母様みたいに立派な魔法使いにならなきゃ、と思うけれど、そう思えば思うほど緊張してしまって、いつも失敗ばかりだ。
マリー
お説教を食らったあと、マリーはキッチンに引っこんで、いじけていた。今マリーが向き合っているのは大鍋ではなくて、砂糖と水が入った銅の小鍋。
落ち込んだ時、マリーは趣味でお菓子作りに没頭するくせがあるのだ。材料を混ぜたり、こねたりしていると、嫌なことを忘れられるし、作ったお菓子で皆が喜んでくれると心がすっきり晴れる気がして。
ディル
そこにあらわれたのは同じく見習い魔法使いのディルだ。
ツヤのある灰色の髪と涼しげな目元が印象的。マリーの幼なじみで、兄弟子に当たる。年齢はひとつしか変わらないけどマリーよりずっと優秀だ。
ディル
マリー
マリーが調理台を叩くとお皿の上に並べていた小さなタルトが飛び跳ねた。
ディル
マリー
マリーが止める間もなく、タルトをかじり「うまい」とつぶやくディル。
ディル
マリー
ディル
マリー
マリーはディルをキッと睨む。八つ当たりだってわかっているけど、酷くむしゃくしゃして。
マリー
マリーは大声で怒鳴ると、その勢いのままキッチンを出ていってしまった。
ディル
ディル
そう言いながらディルはポケットから小さな塩キャラメルを出した。
また落ち込んでいるのだろうとわざわざマリーの好きな塩キャラメルを持ってきたのに、また私損ねてしまった。
そんなある日、ベルガモットの屋敷に特別なお客がいた。
マリー
ディル
マリー
マリー
木材で出来た温室では、魔法薬に使うさまざまな植物が育てられている。
その一角、暖かい日差しを浴びたガーデンテーブルの上にマリーは緊張しながらティーカップを置いた。
マリー
オレガノ王子
輝く金髪に、深い紺色の瞳。上等なベルトを着たその人は、柔和な笑みで会釈した。オレガノ王子。この国の第三王子だ。年齢は確か十六歳。
ディル
オレガノ王子
ディル
オレガノ王子
ディル
ディル
オレガノ王子
マリー
オレガノ王子
お引き受けします! お断りします。
オレガノ王子
ディル
オレガノ王子
ディル
マリー
マリー
ディル
王子にとってはよくても、相手が望んでいるとは限らない。無理やりくっつけたところで、2人が本当に幸せになれるかは分からない……そうディルは説明した
マリー
ディル
図星だ。マリーにはまだ恋が分からない。マリーはぐっと唇を噛んだ。
マリー
ディル
2人はすごい剣幕で大喧嘩を始めた。
オレガノ王子
ディル
マリー
オレガノ王子
バタン🚪
ディル
マリー
マリー
その晩、マリーは屋敷で飼っているワタリガラスに、こんな手紙を託した。
オレガノ王子様、ご安心ください。ご依頼の恋の薬は私が調合します。そしてディルのやつをぎゃふんと言わせてやります!
オレガノ王子
オレガノ王子
翌日、マリーはディルに隠れて、こっそり、恋の薬の調合を始めた。調薬室を使うとばれてしまうのでキッチンで作ることにした。
マリーは、分厚い魔法薬の本をめくった
マリー
【恋のシロップのレシピ】 1満月の夜に、蜘蛛の巣にたまった露を、ティーカップ一杯分集める。 2しびれ草の根をすり鉢ですり潰し、蜂蜜を加えてベースト状にする。 3ヨモギ、カミツレ、イラクサに、干したトカゲのしっぽを加えてすり潰す。 4すべての材料を小鍋に入れ、とろりとするまで煮込む。 5呪文を唱えながら、トネリコの木の杖で時計回りに3回かき混ぜる。 ※この薬を飲んだ者は最初に目が合った相手を好きになります。目の前で飲ませれば、相手はすぐ貴方の虜になるでしょう!
マリー
マリー
エミリーおばさん
前におばさんとお菓子の新しい開発の話をしていることがマリーの頭に浮かんだ
お菓子の本をめくってみると、どうやらキャンディボンボンというらしい。
マリー
マリーはこくこく頷くと、早速魔法のキャンディを作り始めた
マリー
マリー
マリー
魔法薬を作るはずが、いつの間にかキャンディ作りに夢中になっていた。
複雑な工程で、時間もかかったけれど、大好きなお菓子作りだと思うと何故か肩の力が抜けて、いつもより上手くいった。
そして数日後。マリーの元にオレガノ王子から手紙が来た
「明日、街に出る用事があるので、ついでに屋敷にうかがいます」と。
王子が屋敷に来る日。
マリーはいそいそと、恋のキャンディをつめた箱を持って、温室に向かった。
けれど、そこで運悪く、ディルに見つかってしまった。
ディル
マリー
ディル
ディル
マリー
ディル
マリー
ディル
マリー
ディルとマリーの目が合う。
マリー
ディル
マリー
マリー
しばらく待っても、特に変化は現れなかった。
マリー
ディル
ガチャ🚪
オレガノ王子
マリー
マリー
オレガノ王子
オレガノ王子
ディル
オレガノ王子
ディル
マリー
マリー
何故だろうその時胸の底がきゅうと痛んだ。
オレガノ王子が帰った後、二人はキッチンに戻り、紅茶で一息ついた。
マリーはなんだかまだ落ち着かない。 みょうにざわざわする心を誤魔化すように、
マリー
ディル
マリー
ディル
ディル
ディル
マリー
ディル
マリー
マリー
ディル
マリー
ディル
そう言って、まな板の横に置いてあった魔法薬の本を広げた。
ディル
マリー
マリーは本の最後のページを読み始めた。
※この薬を飲んだ者は、最初に目が合った相手を好きになります。目の前で飲ませれば、相手はすぐに、貴方の虜になることでしょう!
※ただし、元々貴方のことが好きな相手に飲ませても、なんの変化もありません。
マリー
マリーが顔を上げると、真っ赤な顔のディルと目が合った。
その途端、マリーの心の中でなにか甘いものがはじけた。
恋のシロップを閉じこめた、魔法のキャンディボンボンみたいに……。
︎︎
︎︎
︎︎
END