燐
燐
燐
燐
瑠衣said
瑠衣
何処からかで仁の声が聞こえた。幻聴かもしれない。 でも、もし本当に近くに居るのなら……。 振り向きたくない。今振り向いて仁を見てしまったら、もう自殺なんて出来なくなる。オレは何となくそう感じた。 気づけば欄干にかけていた足を下ろしている。恐る恐る周りを見る。仁がいないことを願って。 でもそんな願いは一瞬のうちに打ち砕かれた。 いたのだ。仁がこちらに走ってくる。怒っているのか泣いているのかこの距離からだとわからない。
瑠衣
ただ、哀しそうな顔をしている気がする。
そう思っていたら、何故か目から何かが垂れた。 雨水なのか、それとも涙なのか。 そんなこと一瞬でどちらかわかった。手で目を押さえても溢れ出すこの液体の正体は涙だ。 オレは泣いていた。その理由はもう明明白白だ。 オレは仁に助けてもらいたかったんだ。でも、反対に助けてもらうのが怖い。 そんな中仁の姿を見たからか、安堵からの涙なのだろう。
そうやって思いをよぎらせていたから、気づかなかった。 いつの間にか仁がオレのずっとそばまで来ていた。やっぱり仁は怒っているように見える。 でも何処か、哀しそうな表情なのは気のせいではなかった。
仁
仁はオレを無言で抱きしめた。その行動にオレは戸惑ってしまう。
仁
瑠衣
仁
瑠衣
いきなりの問いにオレは強く当たってしまった。
本当は助けて欲しかったのに、助けての言葉が喉の奥につっかえる。 オレは精一杯の力で仁の腕から逃げ出した。無我夢中で家に引き返す。 行きよりも足が遅かった。雨に打たれすぎて動きが鈍くなったからだろうか。
後ろから仁が追いかけてくるのがわかる。追いつかれないように走る。 家の玄関を開けて慌てて部屋の飛び込む。部屋の鍵を閉めた。 慌てていたからだろうか。玄関の扉を閉めるのを忘れていた。 これじゃあ、仁が家に入ってくる。もう逃げられない。この部屋は一階だ。窓から落ちたところで意味がない。 それに窓から出ても、仁から逃げられる気がしない。
仁
瑠衣
いきなりドアの向こうから声が聞こえたから少しビビった。
瑠衣
仁
燐
燐
燐
燐
燐
燐
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