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期末テストも終わって 夏休みモード漂うクラスの中 微妙な表情の彩葉
上村謙信
曖昧に首を傾げる彩葉の手元には "進路希望調査"と"個人懇談について"と 記されたプリントがあった
上村謙信
吉岡彩葉
上村謙信
吉岡彩葉
上村謙信
いくつかの 調理師専門学校がピックアップされた 進路希望
本当に調理師目指してるんだ
上村謙信
そう、彩葉の背中を叩けば 少し笑った
沢山話したい
言葉を交わしたい
でも、彩葉の負担にはなりたくない
高尾颯斗
今日は珍しく 俺たち1年が屋上にいちばん乗り
関哲汰
すぐに哲汰の声がした
いぇーい!
上村謙信
彩葉の前に手を出せば 静かにソフトに手を合わせてきた
上村謙信
高尾颯斗
山下永玖
軽やかな音は鳴らないけど これが彩葉なりのハイタッチ
関哲汰
高尾颯斗
上村謙信
吉岡彩葉
高尾颯斗
何も言葉を発しなくても しっかり聞いているし ちゃんと理解もしているから
俺たちがいちばん 彩葉のことわかってるから
ずっと一緒にいなきゃ 見逃してしまいそうな小さな変化にも 俺たちちゃんと気付くから
彩葉ももっと 安心していいからね
沢村玲
草川直弥
上村謙信
草川直弥
そんな俺たちのやり取りを見て 彩葉がニコニコ笑っている
高尾颯斗
山下永玖
今日もいつも通り 彩葉のお弁当にみんなで群がって 何が入っているのか 今日のお弁当をチェックする
沢村玲
関哲汰
高尾颯斗
吉岡彩葉
高尾颯斗
ひぃー、と仰け反る颯斗に くくくと肩を揺らす
沢村玲
ふと、彩葉を見た玲くんが言った
関哲汰
草川直弥
沢村玲
指摘されたあとだと やっぱり笑顔はぎこちない
それでもまぁ楽しそうだから良かった
高尾颯斗
沢村玲
草川直弥
山下永玖
そんな学校に対する不満も 頷きながら聞いている
草川直弥
高尾颯斗
上村謙信
理系科目が好きだと言っていたのを 不意に思い出して聞けば 首を横に振った
放課後 担任に空き教室に呼ばれた
向かい合う形で 進路希望調査のプリントを 机の上に置いた
担任
私が席に着くなり 担任はそう言い放った
それは進路を考えるHRのとき 担任がみんなに向けて言った言葉と 全く同じものだった
知らない
私は別に 人と関わらない仕事なんて探してない
担任
"なりたい職業を2つ以上"と 書かれた項目の "飼育員"の文字を見て担任が言った
その問いかけに、頷けば 担任は難しい顔をした
担任
それくらい、知っている
理解しているつもりだ
なにこれ 懇談の意味、ないじゃん
遠回しに この2つの職業は私に向いてませんって 言ってるようなもんじゃん、
今すぐ出ていきたい気持ちを抑えて 担任の話しに耳を傾ける
でもその内容は、すっからかんで 右から左へと 脳を通過することなく通り抜けていく
個人懇談って 普通どんなことを話すんだろう
私がみんなと同じように ちゃんと話せて 受け答えもちゃんとできたら この2つの夢は 否定されずに済んだ?
わからない
担任は何が言いたいの?
私に夢見すぎだって言いたいの?
現実は甘くない?簡単じゃない?
そんなの聞き飽きた
こっちは似たようなこと 小学校からずっと言われてんだよ
なにも知らないくせに 私のことどうこう言うな
私だって みんなと同じように話せない自分が 嫌いなんだよ
好きになれないんだよ
私だって 自分が社会でやっていけるかなんて ずっと不安だよ
わかんないよ
でも、大人になんなきゃ 就職して働かなきゃ やってられないじゃん
"人と関わらない仕事はない" なんて言いながら 私が人と関わる仕事を選んでるからって 心配しないで
関係ないじゃん
てか矛盾してんじゃん、
担任
教室に戻って帰る準備を整える
担任の言葉が頭の中を ぐるぐると駆け巡る
悔しい
悔しい
通学用のリュックサックに 教科書たちを詰め込んでいたら "まだいたの?"って 見回りに来ていた学年主任に 声をかけられた
その瞬間 ぶわっと何かが競り上がってきて 声にならない言葉が喉につっかえて ぼろぼろと涙が溢れてきた
泣いているのを悟られないように そそくさと学年主任の脇を通り抜けて 急ぎ足でそのまま生徒玄関を目指した
吉岡彩葉
誰もいない生徒玄関に 私の涙声だけがこだました
悔しい
悔しい
悔しい
私だって好きで話さないんじゃない
私だって話したいの
なんで、どうして
悔しさを掻き消すように ガコン!と鈍い音を響かせる強さで 上履きスリッパを下駄箱に突っ込んだ
山下永玖
私の顔を覗き込んできた山下くんは 心配そうな顔をしていた
頷くことも首を横に振ることも出来ず 大丈夫なんて言えるわけもなく ただただ突っ立っていれば "先帰るね、?また明日"って 行ってしまった
でもまぁ 今の私はその方がありがたい
落ち着いて家に帰り着くなり どっと疲れが押し寄せてきて 制服のままベッドに横になった
ずしっ、と私の重みを受け止めて ベッドが沈んだ
ぼーっと天井を見上げて 考えることは将来のこと
自分が思い描いた理想と 全く掠りもしない現実の自分
将来に対する不安しかない
それでも私は生きている
生きているから 自分の理想を思い描いてしまう
私なんか いてもいなくても一緒だと 自分を傷付けた中学生時代
その傷は実は今もまだ消えていない
その傷に重なるように "自分への罰"と称して傷付ける
これは辞めなきゃいけない癖