国見 英
は?
小春
そうすれば少しは死ぬ気がなくなるかもしれません
小春
私、きっと都合の良い彼女になれます
小春
なんでも言うこと聞くし、わがままなんてぜったい言わないし
小春
近いうちバイトも始める予定なので、少しぐらいなら貢げます
小春
服もメイクもぜんぶ、国見くん好みに変えたっていいです
小春
だから、本命の彼女なんて図々しいことは言わないから、どうですか
国見 英
......いや、悪いけど、結構です
国見 英
てか、そもそも死ぬ気なんてないし
もう大人しく次の電車で帰ろう と考えていると
小春
本当ですか?
国見 英
本当。だから安心して、もうほっといてください
小春
いえ、安心はできないので、国見くんの家まで送ります
国見 英
......はあ!?
小春
今はそんな気なくなってても、いつふっと死にたくなるかわかりませんから
小春
さっきまでの国見くん、この世の終わりみたいな顔してましたし
小春
心配です
国見 英
いや、まじで大丈夫だから、
国見 英
さすがに失恋ぐらいで死なないから、
思わずそう言い切ったあとで ふと自分の口にした言葉に眉を寄せる
国見 英
(失恋?いや、いやいや)
国見 英
そもそも、失恋したって確定したわけでもないし
小春
え?あのふたりの雰囲気はどう見ても付き合ってましたよ
小春
国見くんは失恋確定だと思います
俺は顔をしかめ そんな声の主のほうを睨む
国見 英
わかんねぇだろ、そんなの
小春
わかりますよ、だって学校帰りに公園でキスですよ?
小春
無駄な希望はもたないほうがいいです
小春
どうせ裏切られるんですから、よけいつらくなるだけです
国見 英
決めつけんなよ、なんにも知らないくせに
小春
望みのない子に未練がましくしがみつかないほうがいいです
小春
傷つくだけで、なんにもいいことなんてないから
小春
それより新しい恋をしましょう、それがいちばん建設的ですよ
国見 英
......うるせえよ
俺には遥以外むりだ、 遥もそうなのだと思っていた
下り電車がまいります、のアナウンスが鳴った
それに反応して立ち上がると 当然のように彼女も立ち上がった
国見 英
......マジでついてくんの?
小春
はい。というか、私も家に帰るためにはこのこの電車に乗らないといけません
国見 英
......ああ、そっか
空いていた扉近くの席に 向かい合って座った
国見 英
どこで降りんの?
小春
××駅です
国見 英
いや、それは俺の降りる駅だろ
国見 英
あなたの最寄り駅は?
小春
私の最寄り駅も××駅です
国見 英
......本当に?
小春
本当です
国見 英
そういや、名前は
小春
七瀬小春と言います
小春
小さいに春で、小春です
小春
小春って呼んでください
小春
国見くんのクラスの隣の、一年五組です
小春
よろしくお願いします
国見 英
あのさ
小春
はい
国見 英
忘れてんならごめん、どこかでしゃべったことあるっけ?俺ら
小春
はい
小春
今年の四月十四日の朝に
国見 英
え
小春
電車で喋りました。私と、国見くん
今は十月。四月なら、 もう半年くらい前の事だ
国見 英
え......そうだったっけ
小春
はい、一言二言だけでしたけど
国見 英
じゃあ、そのときから、おれのこと?
小春
はい。それからずっと見てます、国見くんのこと
国見 英
......そう
××駅で降りると 小春は当然のように一緒に歩き出した
本当に家までついてきそうだったので
国見 英
あ、あのさ
とあわてて声をかける
国見 英
俺、ちょっと寄りたいとこあるから
小春
はい、じゃあいっしょに
国見 英
いや、ひとりで行きたいとこなんだ、
国見 英
だからここで別れよ
小春
え......どこに行く気ですか?
小春
まさか......
国見 英
いや、たいしたとこじゃないから
国見 英
つーか本当に死ぬ気とかないから、大丈夫だから
小春
本当ですか?
小春
これが最期になりませんか?
国見 英
ならないって
小春
......じゃあ
小春
私の連絡先を教えますので、夜にでも一度連絡ください
小春
一言でいいので、生存確認させてください
国見 英
......生存確認て
小春
ぜったいですよ、確認が取れるまでずっと待ってますから
小春
日付を超えても連絡がこないようなら、家まで行きますから
いえしってんのかよ、とは、 なんとなく怖くてつっこめなかった
国見 英
ちゃんと生きてます、おやすみ
小春
よかったです、おやすみなさい
五秒後に帰ってきた小春からの返事は 意外とシンプルだった
遥からは、特になんの連絡もなかった
寂しいようなほっとしたような 複雑な気分だった