京香は神社で落ち葉を集めていた
夏に青々と茂っていた木々たちは
鮮やかな紅色へと移り変わり
ヒラヒラと木の葉を散らせてゆく
守
京香
守
京香
スマホ片手にむんっ!と
ガッツポーズを僕に向かって決める
めちゃくちゃ凛々しい
守
守
無人島サバイバルで見るような
木の板と棒を使った火起こしを始めてた
守
守
京香
京香
守
京香
こんなお馬鹿なやり取りにも慣れてきて
たぶん2ヶ月くらい
あの夏の日から色々あったけれど
京香といると
なんだかんだ楽しい
この村での唯一の友達だしね…笑
京香
京香
守
本当に火が起こった
木の板からプスプスと煙が上がり
火の明かりがホタルの灯りの様に強弱を付けながら、少しずつ強くなってくる
辺りはもう薄暗くなり始めていたから
ほんのりと明るい火の明かりが一段と綺麗に見えた
京香は手の平のホコリをぱんぱんと払うと
ニヤリと笑ってスマホをポチポチと打ち始める
京香
守
京香
京香
濡れた新聞紙とアルミホイルを芋にぐるぐる巻き付け
焚き火の中にポンポンと放り入れていく
守
京香
守
京香
京香の言う通り
その日に食べた焼き芋は
今までで一番美味しかった
焼き芋をもぐもぐと嬉しそうに食べている京香を
チラッと横目に見る
幽霊とは思えないほど
元気で
優しくて
明るくて
でも
僕は
«0時34分»
最近
眠っていると
突然、部屋のドアがゆっくりと開いて
〝何か〟が近づいてくる
その間は金縛りにあっていて
目も開けられない
でもその代わりに
脳裏に
知らない誰かの記憶が流れ込んでくる
〝繋いだ手〟
〝熊の人形〟
〝赤い長靴〟
〝頬を叩く痛み〟
〝温かい家族の絵〟
〝離れる手〟
〝恐怖〟
支離滅裂な映像が
記憶として流れ込んでくる
その間は僕の左耳に
女の人のような囁き声でボソボソと何かを語りかけてくる
理解の出来ない言葉
でもいつも最後の言葉だけ
〝たすけて〟
これだけは聞き取れる
これだけが聞き取れてしまうから
モヤモヤしてしまう
僕にはどうすることも出来ない
それでも女の人は毎日僕の元へやって来て
助けを求めてくる
守
守
京香
守
京香
“わたしみたいに”
京香
京香
守
守
京香
京香
京香
守
京香
京香
守
守
«23時50分»
本当に来た
京香
京香
守
守
守
京香
守
守
京香
京香
と言うと京香はベランダに出ていった
何をしに家まで来たんだろう…笑
京香の言われた通り
部屋の電気を消して
いつも通りに眠る
...
......
.........
«0時40分»
ゆっくりとドアが開く音がする
ぺた...ぺた...と足音をさせながら
近づいてくる
そして
またあの映像を見せられっ...
ガラガラッ!!!っとベランダの窓が開いて
京香が突入してきた
京香
京香
京香は腕時計も着けていないのに左手を見て刑事の真似をする
その間、地縛霊は締め技をかけられてバタバタと暴れていた
守
京香
京香
僕に向かってピースをする
守
京香
京香が地縛霊を捕まえたまま
近くのお寺に向かった
月明かりに照らされた地縛霊は
ボサボサの長い黒髪に白いドレスの様なものを着ていた
所々驚くほど黒く染まっていて
服だけでなく
皮膚も黒く侵食されていた
地縛霊はお寺の入り口に着くまで色々な言葉を発していたけど
どれも聞き取れなかった
京香
京香
京香
京香
守
京香
京香
お寺から100メートルほど離れて
入り口付近の京香たちを遠目に見る
話す時は締め技も無く、正面を見ながら話していた
幽霊同士はスマホ無くても話せるのかな…?
«15分後»
京香がちょいちょいと僕に手を振る
走って近づいていくと
京香の目には少し涙が溜まっていた
そのことに触れることは出来なくて
僕は少し言葉を失った
守
京香
京香
京香
京香
守
お互い無言のまま
お寺の中程まで進んでいく
突然、未咲さんが立ち止まると
その身体がほんのりと明るく光る
染み付いていた黒い染みが消えていき
同時に身体自体も薄く消え始める
「あの…」
「僕に助けを求めてくれたのに何も出来なくて」
「本当にすみません...」
すると未咲さんは僕の右手を手に取り僕を見つめると
口パクで何かをいう
今までの言葉は全然分からなかったのに
これは分かった
〝あ〟
〝り〟
〝が〟
〝と〟
〝う〟
「お元気でいてくださいね」
気が付くと未咲さんは消えていた
お寺の入り口に戻り
京香と一緒にお寺に向かってしばらく手を合わせた
京香
守
京香
守
京香
守
京香
守
守
守
京香
京香
京香
京香
そのままわぁ~!!っと走り出す
走り出した京香の小指が少し黒ずんでるのが見えた
...
京香は幽霊とは思えないほど
元気で
優しくて
明るくて
でも
僕は
そんな無邪気な京香の姿を見るたびに
いつか助けを求めて彷徨う地縛霊のように
自我さえなくしてしまう
そうなってしまう気がして
どうにかして助けてあげられないかと
成仏させてあげられないかと考えてしまっている
大切な友達が一人
この世からいなくなってしまっても
この気持ちが痛くも消えない僕は
悪人なのだろうか
コメント
5件
続き読みたいです!!!!!!
雪景色も、素敵ですね(*´∀`) 返事、ありがとうございます😊
あかいとまとさん こちらにもありがとうございます!めちゃくちゃ嬉しいです( ;∀;) 冬に、春に、の四部作の予定だったのですが、冬が通り過ぎていってしまいました笑 今年もしかしたら続きが出るかもです笑