多数決の結果、桃青になりました .ᐟ
start ▶▷▶
それは、もうすぐ夏休みが終わるという頃
あまりにも突然の連絡だった
僕が買い物から帰ると、僕のスマホが鳴った
掛けてきたのは近くの総合病院だった
電話を掛けてきたのは看護師さんで 早口で何かを伝えてきたが 僕の頭は真っ白になり 何を言っているのか聞き取ることが出来なかった
ただ、「意識がない」その言葉だけ 今でもはっきり脳に焼き付いてる
病室に入ると真っ白なベッドに横たわる僕の恋人
頭に巻かれた包帯や管は見るだけで痛々しくて 僕は彼の名前を呼ぶよりも前に言葉を失ってしまった
青
勢いよく駆け寄る僕を 看護師さんは見守ってくれていた、気がする
お医者さんは俯いたまま何も言わなかった
青
嗚咽を漏らしながら必死に彼の名前を呼んだ
その日、彼が目を覚ますことはなかった
意識のない人間と同室に泊まることは許可してくれなかった
だから僕は病院から1番近いビジネスホテルに寝泊まりすることにした
彼が起きたら、すぐ病院に行けるように
目を覚ましたという連絡が来たのは彼が入院してから 3日後の事だった
ただ病院に着いた時の看護師や主治医の表情は どこか固くて暗かったのを憶えている
青
名前を呼び、彼の手を握る
彼は僕と目を合わせるとまるで初めて僕を見たような顔をした
桃
彼の言葉に僕は笑いをこぼす
青
青
青
僕の乾いた笑いが静かな病室に響く
桃
初めて口にした言葉は
まさに「僕を認識していない」ことを物語っていた
青
面会時間は10分間 家族以外の患者との時間は制限されるらしい
青
主治医は彼が事故のショックで記憶喪失になったこと 唯一覚えているのは家族のことや自分のことだと教えてくれた
自分や家族の名前、過去の断片的な記憶はあるらしい
それなのに、ずっと一緒にいる僕の記憶は失くしてしまった
もうあの時のさとみくんはこの世にいないんだ
この日僕の恋人は“天使”になった