ユウヤ
それは表面にダイヤルのみが付いた、シンプルなデザインのケースだった。
まるで、小さな金庫みたいな--
スズ
彼女が、息を呑む音がした。
かと思うと、目にも止まらぬ速さで“ソレ”を拾い上げ、バッグの中にしまった。
ユウヤ
ユウヤ
僕は軽い気持ちでそう聞いたが、彼女の表情を見て面食らった。
サァーッと血の気が引いて、顔が蒼白になっている。
ユウヤ
スズ
スズ
彼女は取りつくろったような笑顔で、ニコリと笑った。
ユウヤ
気にはなったが、詮索するのはやめた。
誰にだって知られたくない秘密の一つや二つ、あるだろう。
ユウヤ
いつか、立花さんが自分から話してくれるのを待てばいいだけだ。
スズ
そう決めた僕の横で、彼女は写真を一枚パシャリと撮ると、スマホをテーブルの隅に置いた。
そして、スッと両手を合わせる。
スズ
まるで祈りを捧げるような、神聖さすら感じさせる佇まい。
立花さんは、絶対に食前と食後のあいさつを欠かさない。
その姿を見るたび、彼女の食べ物に対する真摯な姿勢が見えて、思わず感心してしまうのだった。
ユウヤ
僕も彼女と同じように両手を合わせてから、ナイフとフォークを両手に装備し、いざ実食。
ナイフを入れると、クレープの生地はパリッとしており、切ると言うよりは砕くといった感じだ。
付け合わせのバナナやアイスクリームと一緒に口に入れると、口の中が幸せになった。
スズ
ユウヤ
スズ
スズ
スズ
ユウヤ
スズ
スズ
ユウヤ
ユウヤ
スズ
僕と軽口を叩きつつも、立花さんの手に握られたナイフとフォークの動きは一切止まる気配がない。
僕は続けて、皿の隅に載っていたステンレス製の小ぶりなピッチャーを手に取る。
コーヒー用のミルクを入れるのによく使うそれの中身は、キャラメルソース。
ねっとりしたソースをかけると、クレープはまた別の表情を見せてくれた。
ユウヤ
これならいくらでも食べられそうだ。
ユウヤ
ユウヤ
スズ
カチャカチャと皿を鳴らしながら、言葉を濁す立花さん。
しぶしぶ同意した……というふうにも見受けられた。
確かにパリパリした生地は美味しいのだが、それゆえに若干食べづらい。
ナイフで生地を小分けにした後に具材達と一緒にフォークで刺すと、
生地がバラバラになってなかなか上手いこと食べられないのだ。
スズ
ユウヤ
ユウヤ
スズ
ユウヤ
ユウヤ
ユウヤ
スズ
それを聞いた立花さんは、得意げに解説を始める。
スズ
ユウヤ
スズ
スズ
ユウヤ
ユウヤ
スズ
シュークリーム談義が終わったところで、クレープとの戦いを再開する立花さん。
何か、ないだろうか。
今のシュークリームみたいな、何か簡単な……。
チラッと手元に目が行く。
そして僕は、はたと気がついた。
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