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氷織 羊

(ぼーっとする)

あれから市内の病院に運び込まれた

薄らと意識のある中、見えたのは両親だけではない

たしかに誰かが僕の手を握ってくれていた

あれは…一体?

コンコン

氷織 羊

はーい

氷織 羊

潔くん?

糸師 凛

凛。糸師凛だ。

氷織 羊

凛くん…

氷織 羊

なんで君が?

糸師 凛

話さないと行けない事がある

糸師 凛

前に学校で話すって言っただろ

氷織 羊

…あ

糸師 凛

冴に会って動揺してた

糸師 凛

約束は守るから

糸師 凛

聞いてくれるか

氷織 羊

…も、もちろん!

糸師 凛

…ありがとう

柔らかにそう微笑む表情はまるで

出会った音楽室での凛くんそのものだった

糸師 凛

氷織

糸師 凛

氷織 羊

あ、ごめん

氷織 羊

聞かせてくれる?

糸師 凛

あぁ

氷織 羊

…暴力事件は、

氷織 羊

本当に君が起こしたもの?

糸師 凛

俺が殴りかかった

糸師 凛

嘘も偽りもねぇよ

糸師 凛

あの時、俺の居場所はなかった

糸師 凛

正直潔にもムカついてた

氷織 羊

…勝手な妄想なんやけど

氷織 羊

君が殴りかかったのは、

氷織 羊

潔くんのことを悪く言われてたから…?

糸師 凛

…なんでそれを

氷織 羊

君と同じ学校やった子と知り合いなんや

氷織 羊

その子が教えてくれた

氷織 羊

その様子的にほんとなんやね

糸師 凛

本当。

中学時代

糸師 凛

潔!

潔 世一

潔先輩な!笑

潔 世一

お前、ほんと生意気なやつ〜!!

糸師 凛

潔、

潔 世一

なんだよ、そんな不安そうな顔して

糸師 凛

…クラスの奴らに聞いたんだ

糸師 凛

転校…すんのか?

潔 世一

あー、

潔 世一

まぁな

潔 世一

父さんの転勤が重なって

糸師 凛

…ごめん、俺のせいだよ…な

潔 世一

違ぇよ…笑

潔 世一

お前が思ってるような事は今までなかったし

潔 世一

凛のこと、みはな見放すくらいならこれで良かった

糸師 凛

……

潔 世一

別れよっか、凛

糸師 凛

…だよな

潔 世一

俺たちは、もう恐れるものがない

潔 世一

ごめんな

潔 世一

俺だけ逃げるみたいで

糸師 凛

……そんなこと

潔 世一

また、サッカーしよう

糸師 凛

…また、な

あの日のことはよく覚えてる

潔が転校して

俺も少しずつクラスに話せる人ができて

その矢先だった

男子生徒

潔、結局転校したな〜

男子生徒

てかまじ笑えね??

男子生徒

糸師連れてきたら嫌がらせ辞めてやるって話してんのに

男子生徒

一向に連れてこねぇから笑

糸師 凛

…は、?

考えるよりも、何かを言うよりも先に

手が伸びていた

力を込めた拳はあいつの頬をえぐり

あいつもまた俺の腹を蹴った

痛みはない。苦しさや寂しさ

気づけなかった自分の弱さに腹が立った

謝らないといけない

好きだって、まだ好きなんだって

伝えて償う

そうしないと俺は

この先どう生きるべきか見つけられない気がした

凪 誠士郎

またね

凪 誠士郎

サッカーしてたら会えるだろうし

糸師 凛

…え

凪 誠士郎

??

糸師 凛

どーも

正直最後の嫌がらせだと思った

こんな最後まで俺の事をいじるんだ

そうとしか感じられなかった

今考えたら…

いや

氷織の話を聞いてから

俺が周りを見てなかっただけで

潔を気にかけて助けていた人はいたのかもしれない

糸師 凛

あ、あの

凪 誠士郎

え?

糸師 凛

糸師 凛

ありがとう

糸師 凛

ございました

糸師 凛

凪 誠士郎

…は

凪 誠士郎

え、あ、

凪 誠士郎

うん、こっちこそ

…こんな未来もあったのかもな

糸師 凛

俺を許して欲しい、なんて言わない

糸師 凛

潔のことも自分で蹴りを付ける

糸師 凛

…ただ、謝りたかった…んです

氷織 羊

り、凛くん…

糸師 凛

ごめんなさい

糸師 凛

無責任なことして

氷織 羊

無責任…?

糸師 凛

…先輩が、貴方が

糸師 凛

キスを頼んできた時のことです

氷織 羊

…あ…

糸師 凛

俺の事を気にかけてくれてた人を

糸師 凛

俺はまた払い除けた

糸師 凛

…ごめんなさい…本当に…ごめんなさい

氷織 羊

凛くん…!顔、あげて!

糸師 凛

…俺はいつもこうだった

氷織 羊

凛くん

氷織 羊

僕は変わってるやって

氷織 羊

…君の本当を知られて、今まで拒絶されたことがあるん?

糸師 凛

…ッ

氷織 羊

…そっか

氷織 羊

せやけどね

氷織 羊

僕は君を知って、もっと好きになったんや

糸師 凛

…え?

氷織 羊

…君が思ってるほど、簡単に諦められへんわ

氷織 羊

潔くんにも呆れられてはるかもな

糸師 凛

…氷織…

氷織 羊

あ、先輩呼びやめたやん!!

糸師 凛

あ、

氷織 羊

ふふ、安静にしとけ、言われたのに笑

氷織 羊

凛くんが笑かすから疲れてまうやろ笑

糸師 凛

本当に安静にしないと…学校、復帰できませんよ!!

羊の母

…ほんと

氷織 羊

…か、母さん…?

羊の母

羊、話があるの

羊の母

君、席を外してくれる?

糸師 凛

あ、はい

氷織 羊

…ッ!

糸師 凛

先輩?

氷織の手は震えていて俺の服の裾を掴んでいる

何が写っているのか、何を想像しているのか

俺にはただ立ち尽くすことしかできなかった

糸師 凛

先輩、すぐに戻ってきます

糸師 凛

大事な話、しないと

氷織 羊

…分かっとる

羊の母

氷織 羊

分かっとるってば

羊の母

羊…ッ!

氷織 羊

分かってるって言うてるやろッ…!

糸師 凛

せ、先輩…?

氷織 羊

…母さん、

羊の母

……羊、あなたにも悪いから

羊の母

離婚した後は実家に行こう

羊の母

少し遠くだしここに比べたら田舎やけどね

羊の母

私も次こんな事があれば取り返しがつかないわ

氷織 羊

糸師 凛

離婚…ッ?

羊の母

ねぇ、貴方

糸師 凛

…?

羊の母

烏くんって知ってる?

氷織 羊

母さん…ッ!

糸師 凛

烏…まぁ、

羊の母

その子にね、お世話になりましたって

羊の母

ありがとうって言ってこれ、渡して貰えない?

氷織 羊

話を聞いて、母さんッ…!

氷織 羊

俺は…俺はッ…!!

羊の母

羊、荷物はこっちでまとめるからね

羊の母

羊が退院許可がおりたらおじいちゃんが迎えに来てくれるから

羊の母

お友達にも挨拶はできないから、

羊の母

連絡しときなさいね、

羊の母

ごめんね、ごめんね、羊

糸師 凛

…先輩。

氷織 羊

…離婚なんかせんでよ

氷織 羊

僕が…僕が悪いんやんか

氷織 羊

…待ってよ…俺の話、聞いてよ

糸師 凛

…ここ最近、物騒ですね

羊の母

…私に言ってるの?

糸師 凛

いえ、世間話ですよ

糸師 凛

他人の俺が口を挟むことじゃないですけど

氷織 羊

まって凛くん…

氷織 羊

母さんは…

糸師 凛

母親として、僕は認められません

羊の母

…あ

糸師 凛

…俺は、子供の話を聞かず勝手に進めて

糸師 凛

加害者が被害者ぶってるのが1番許せません

糸師 凛

本来なら警察沙汰ですよ

糸師 凛

息子さんのこと、ちゃんと見てあげて…

羊の母

分かってる…分かってる…

羊の母

羊を世界一にできなかったら離婚…

羊の母

それが今まで離婚しなかった理由

氷織 羊

凛くん、帰って…

糸師 凛

でも…ッ

羊の母

羊が悪いのよ

氷織 羊

…僕のせいや

氷織 羊

凛くん、早く帰って…!

氷織 羊

君の話はもう終わったはずや

氷織 羊

もうええからさ

氷織 羊

…また

氷織 羊

学校で。

糸師 凛

…!

氷織の目がどこか一点を見つめていた

その横顔に見とれてしまいそうになる

儚い雰囲気の中にたしかに感じる闇

その闇を払うことすら、俺にはできないんだ

糸師 凛

失礼しました

糸師 凛

ご家庭の問題ですよね。

糸師 凛

俺なんかが口はさんじゃって

糸師 凛

帰ります。では、

氷織 羊

元気でな

氷織 羊

凛くん

待ってる

その言葉が出てこなかったのは俺の弱さだ

家庭のことは他人が口出しできない

その事は1番俺が分かってた

なのになんであんなふうに取り乱した

感情的になった

答えはひとつしかなかった

でも、素直に認められない自分がいたのは確かだった

このままじゃ氷織はどこかに行ってしまう

それを止めることは1人じゃ不可能だろ

…これで最後だ

ここで氷織を救い出すこと

それが俺にできる最後の償いだ

蜂楽 廻

それで俺が〜

潔 世一

あ、ごめん。凛からだ

蜂楽 廻

電話?

蜂楽 廻

出ていいよ〜

潔 世一

ごめん、ありがと!

潔 世一

凛?

潔 世一

急用??

糸師 凛

…悪かった

潔 世一

糸師 凛

頼みがある

糸師 凛

おかっぱにも頼む

蜂楽 廻

え、俺!?

糸師 凛

氷織を救うのに、協力してほしい

潔 世一

救う…って

潔 世一

何話したんだよ…

蜂楽 廻

分かんないけど…取り敢えず合流しよう

蜂楽 廻

明日休みだし…気になって帰れないよ

潔 世一

そうだな、

潔 世一

凛、駅前のカフェ。これるか?

糸師 凛

なるべく急ぐ

潔 世一

りょーかい。

糸師 凛

切るぞ

潔 世一

あ、待って。凛。

糸師 凛

潔 世一

氷織は…元気だったか?

糸師 凛

糸師 凛

俺の目にはそうは見えなかった

潔 世一

え、それって…

潔 世一

って、切れたし…!

蜂楽 廻

分かんないけど大変な事になってそうだね、

潔 世一

…俺達も急ごう

潔 世一

状況を知って氷織に会わねぇと…

俺と氷織の出会いは単純なもの

単純でも大事から始まった

氷織の抱える思い

それは氷織だけで背負い切れるものではなかった

もっと早く…

もっと早くに気づくべきだった

氷織は苦しんでた

それに気づくのはやっぱり…

凛だったんだな

潔 世一

…あ〜、

蜂楽 廻

なに?潔、ため息〜?

潔 世一

いや

潔 世一

なんか疲れたな〜って

潔 世一

…氷織、大丈夫かな

蜂楽 廻

……大丈夫だよ

蜂楽 廻

それに…凛ちゃんさ!

蜂楽 廻

氷織っちのこと、大事にし始めてるね

蜂楽 廻

意識してきたんじゃない?

潔 世一

…かも

蜂楽 廻

にゃはっ♪

蜂楽 廻

潔ぃ〜!笑

蜂楽 廻

潔も良い人ぶるの、やめなよ

蜂楽 廻

伝えたい事はちゃんと…ね

潔 世一

…だな

クリスマスローズ

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