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たまんねぇなおい
橙色の光は地平線へと沈み、暗闇が広がっている。点々と佇む街灯だけが辺りを照らす。
俺は一度職員室に戻って荷物を取りに行った。 校舎の外へ出ると、少し離れたところに歩いている煙の姿があった。
色眼鏡現
ほんの少しだけ、待ってくれているのではないかと期待していたが、見事に打ち砕かれた。
俺は煙に追いつこうと走り出した。
煙の足取りは重く、ゆっくりと歩いていた。そのため、久しく運動なんかしてない俺でもほとんど息が上がることがないほどすぐに追いついた。
色眼鏡現
俺は煙の隣に立って歩きはじめる。当然ながら、車道側を歩いている。この気遣いには煙の俺に対する好感度は鰻登りだろう。
襟内煙
煙は一瞬俺を見ると、すぐにまた正面を見て歩き始めた。どうやら好感度は平行線のようだ。
襟内煙
このまま俺を見えないふりして歩いていくのかと思われたが、意外にも先に口を開いたのは煙の方だった。
色眼鏡現
煙は不服そうにため息をついて黙り混んでしまった。勝手にしろ、なんて言わずにキッパリと断るべきだったと思っているように見える。
色眼鏡現
襟内煙
質問を投げかけるが、煙の返答は毎度素っ気ない。
色眼鏡現
好きな食べ物、好きな科目、好きな動物。そろそろ質問が尽きてきたので、俺は何気なくそんなことを呟いた。
襟内煙
襟内煙
煙がボソッと呟いた時、口角がほんの少しだけ上がったのを、俺は見逃さなかった。
色眼鏡現
襟内煙
煙は少しだけ歩みを早めた。
色眼鏡現
俺もそれに合わせて歩みを早める。
襟内煙
色眼鏡現
襟内煙
色眼鏡現
色眼鏡現
煙はぺこりと会釈をして去って行った。
先生に悪いと思って、もうすぐだからと断ってしまったが、実際はもう少し距離がある。
とはいえ、先生は心配しすぎだ。別に通学路くらいどうってことはない。
襟内煙
先生のあの言葉が引っかかっている。 別に僕は可愛くない。 真意は不明だが、いい迷惑だ。 さっさと忘れてしまおう。
不審者
襟内煙
声の方を振り返る。すると、180cmほどの巨漢が立っていた。
こんな大きい人、一度会ったら忘れるはずがない。全然知らない人だ。 一体何の用だというのだろう。
不審者
襟内煙
おじさんは徐々に距離を詰めてくる。僕を心配してくれているようだが、見下ろしながら話しかけてくる姿は高圧的に思えて、恐ろしく感じる。
不審者
襟内煙
ぐっ。と、僕の腕を掴む。鬱血しそうなほど力が強く、恐怖が僕を支配していく。
襟内煙
声が……出ない……。
「助けて」 たった四文字が釣り針のように喉に引っかかる。
不審者
襟内煙
僕の頬にそっと触れてくる。触られた箇所から全身にかけてゾワっと悪寒が駆け巡る。 その度に恐怖がジクジクと膨れ上がっていく。
その時、暗闇から手が伸びてきて、おじさんの手を掴んだ。
不審者
色眼鏡現
先生……?
襟内煙
どっと、安心感が押し寄せてきて、体がふらつく。
色眼鏡現
倒れそうになったのを、先生が抱える。 僕は先生に身を預けることしかできない。 先生の体に触れていると、なぜだか心地よい。
不審者
おじさんは先生よりも背が高く、先生を見下ろしながら威圧する。
色眼鏡現
不審者
色眼鏡現
色眼鏡現
色眼鏡現
可愛くないし、先生のものでもない。 抗議したいが、今は黙っておく。
不審者
色眼鏡現
不審者
色眼鏡現
色眼鏡現
先生はまるで肉食獣のようにギロリとおじさんを睨みつける。
不審者
おじさんはどこかに走って逃げて行った。
色眼鏡現
襟内煙
まだ少し声が掠れる。
色眼鏡現
そう言って、先生はそっと僕の頬に触れる。 先生の手は温かくて、嫌な気がしない。
色眼鏡現
まだ体に力が入らないけど、立つことはできるくらいにはなった。
色眼鏡現
あんな体験をした後だ、流石に断りたくはない。 僕は声が出ない代わりに頷いて返事をする。 そして、二人並んで歩き出した。
また、先生は車道側だ。
煙は先程までよりは落ち着いた様子で、声も出ている。
しかし、まだ体が強張っている。
色眼鏡現
襟内煙
襟内煙
街灯に照らされる煙の頬はほんのりと紅色に染まっていた。
色眼鏡現
また、失うところだった。
今度は絶対、間違わない。