最愛の友へ

動画を再生すると明るいいつもの奏斗の声がした。柔らかい動作でこっちに手を振っている。 止めることなく動画を見進める。

リーダー無しなんてきついっしょ？とおどけるように笑っている。 大事な話をする時、奏斗は少しだけ前傾姿勢になる。それはここでも同じらしかった。

すると、突然画面がカクンッと下がった。 どうやら動画を撮っている人物がカメラを落としかけたようだ。

ケラケラ笑う奏斗、画角の向こう側からする震えた声の雲雀。 だけど、そこにはあの二人特有の和気あいあいとした空気があった。

佇まいを直し、またシャンとした様子でカメラへ向き直る奏斗。 病衣の下にある体は痩せて、首元から点滴の管が入っている。もう食事も摂取できないのだろう。

画角の外から鼻をすする音がした。見えないけど雲雀もきっと泣いているんだろうか。

カメラを指差して、奏斗は告げる。またガクンッと画面が揺れた。 なんだか酔いそうだけど、それが奏斗が生きている空間を直に感じられた気がした。

あざとく首を傾げて、お願いとポーズを取る奏斗。あえて真剣に見せないように、重くなりすぎないように。 そう見えた。

また画面の照準がずれる。カメラを持った雲雀の手が震えているんだろうか、微かに揺れている。

大きく手を振って、笑顔で別れを告げる奏斗。動画はそこで終わっていた。 何も変わらない、いつもの奏斗があの場にはいたんだ。

一度止まったはずの涙はまたぽたり、ぽたり、と落ちていく。 だけど、悲しいだけの涙ではない。どこか温かい、そんな感じがする。

すると、止めたはずの動画からまた声がする。 セラフが驚いて画面を確認すると真っ黒だったが、確かに声がする。

ガタン、と音がして、大きな声で奏斗が泣いて、雲雀の押し殺すような泣き声がした。

プツリと途中で音も途切れた。

ガン、と頭を強く殴られたような衝撃が走った。 そうだ、いくら気丈に振る舞っても彼はまだ20歳だ。「これから」がたくさんあった年齢だ。

セラフも、アキラも言葉が出なかった。