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昔の冬弥
あ、この音…
昔の冬弥
（幻想即興曲だ！）
彰人
冬弥…って
彰人
は？
昔の冬弥
！
昔の冬弥
こ、こんにちは…
彰人
冬弥だよな？
昔の冬弥
…え、っと
彰人
（やべ、困らせてるな）
昔の冬弥
…
昔の冬弥
青柳、冬弥です
彰人
そっか
彰人
（なんで？）
彰人
じゃあクラシック大好きなんだな
昔の冬弥
はい
昔の冬弥
父の弾くピアノは音が違います
彰人
同じピアノなのに？
昔の冬弥
はい
昔の冬弥
繊細で、触れたら消えちゃいそうな
昔の冬弥
そんな、音なんです
彰人
なるほどね
昔の冬弥
だから今日父に言おうと思うんです
彰人
なんて？
昔の冬弥
ピアノを習いたい、と
彰人
！
昔の冬弥
なんていうかな
彰人
（やめろ、なんて言えない）
彰人
（けどその選択に一時期思い悩むんだよ）
彰人
（…背中押してあげらんねえな）
昔の冬弥
今流れてるこの曲わかりますか？
彰人
あ、あー…
彰人
幻想即興曲だっけ？
昔の冬弥
はい
昔の冬弥
フレデリック・ショパンさんの曲で父はそれを見事に弾いてました
昔の冬弥
あんな素早くー…
彰人
（無理だ）
彰人
（言えるわけねえよ）
彰人
（こんなにキラキラした目でピアノを父を語る冬弥なんか）
彰人
…ねぇよ
昔の冬弥
え？
彰人
見たことねぇよ…お前のそんな顔
昔の冬弥
あの、僕たち今日初めて会いましたよね？
彰人
あ、わり
彰人
忘れてくれ
昔の冬弥
？
昔の冬弥
…はい
彰人
…
彰人
（体調が悪くても手が痛くても）
彰人
（放課後友達と遊ぶことも）
彰人
（できなくなるんだよ）
昔の冬弥
それではそろそろ…
彰人
まってくれ！
昔の冬弥
？
彰人
…
彰人
お前、どうしてそこまでピアノにこだわるんだよ
彰人
音楽なら歌とか、そういうのもあんだろ！？
彰人
（あぁ…）
彰人
（なに冬弥の夢を、壊そうとしてんだよ）
昔の冬弥
…そうですね
昔の冬弥
弾くことが好きだから
昔の冬弥
ピアノの音が好きだから
昔の冬弥
…だから
彰人
っ…
彰人
わかったよ
昔の冬弥
え？
彰人
…がんばれよ
昔の冬弥
はい！
彰人
ちっ…
彰人
んだよ、あの顔…
電車の中でも寝る前のベッドの中でもサクサク快適に。
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