わたしと佳織が出会ったのは 中学校の入学式の日
自分の新しい教室に向かう途中で それは起きた
佳織
ぎゃっ
結衣
・・・え、
人通りがまだ少ない廊下 障害物も何もないなか 突然転んだ1人の少女
彼女はゆっくり立ち上がると 恥ずかしそうにわたしを見て 「ごめんね」と笑った
佳織
よくあることだから
気にしないでね
気にしないでね
結衣
え、よくあることなの?
何もない場所でつまずくことが? そう言いかけて、口をつぐんだ 彼女の膝から流れだす血が 尋常ではなかったからだ
結衣
え、ねぇそれ大丈夫なの?!
佳織
あ、うん!大丈夫だよ
佳織
昨日もこけて同じ場所を
怪我しちゃったから・・・
怪我しちゃったから・・・
佳織
まだ治ってなかったみたい!
なんでもないと言わんばかりに 満面の笑顔を浮かべた彼女 どこからか出した消毒液を使い 少ししゃがんで慣れた手つきで 手当てを終わらせては スカートを軽く払って立ち上がった
佳織
ごめんね、驚いちゃったよね
花が咲き誇るような笑顔 明るくて、かわいくて、でもどこか儚い
結衣
・・・ねぇ、名前なんて言うの?
佳織
んー?佳織!
結衣
佳織、ちゃん?
佳織
うん!あなたの名前は?
結衣
・・・結衣。結衣だよ
佳織
結衣ちゃん!
佳織
・・・ねぇ、結衣ちゃん。
良かった友だちになってよ
良かった友だちになってよ
少し頬を赤らめて もごもごと口を動かしながら そう言った佳織 どこまでもかわいい彼女に わたしも少し顔を赤らめて
結衣
もちろん!よろしくね、
佳織ちゃん
佳織ちゃん
わたしができる精一杯の笑顔で そう答えたのだった