ねまてゃ
彼を待たせるわけにはいかないから、とりあえずクローゼットから適当にパーカーを引っ張り出して、髪の毛もろくに整えずにエントランスへと向かった。 自動ドアを抜けた先には、約束通り白髪を揺らす男の子が俺を待ち構えていた。
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「嬉しいなぁ」 なんて、彼は快活な笑みを浮かべる。 この人、本当によく笑うな。
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さほど残念がってなさそうにため息をつく彼を横目に、俺は下唇を噛んだ。 俺が、ずっと、聞きたかったこと。 あちらから触れてくる気配が無いから、自分から話題を持ち出すしかない。
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言った。言っちゃった。 この場が一瞬静まり返ったのは、彼が即答せずに少し驚いて目を大きく見開いた時間があったから。 ただ数回の瞬きのうちに、すぐいつもの能天気そうな表情に戻る。 そして、俺の質問に対する回答を教えてくれた。
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想像していたものとカテゴリーの違う回答が返ってきたことにちょっと動揺して、思わず深い瞬きをしながら彼の言葉をオウム返ししてしまう。まさか体の部位がくると思ってなかった。 彼は「うん」と頷いてから、自らの瞳を指で指し示す。
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紫色色の瞳がぎょろりとこちらを向いて、視線が合う。 瞬間、どきりと心臓の音が大きくなった。ただ見つめられているだけのはずなのに、こちらの全てを覗き見られているような感覚に苛まれる。初めて会ったときもそうだった。
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彼はわざとらしく肩を落として悲しそうな表情を作る。 変な子だし怖い所もあるけれど、思ったより普通の子だな。会った途端急に襲われたりとか俺が心配していたよりヤバい奴ではなさそう。.....今のところ。
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2人目いるんだ。
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17.ともだちをつくる
正直、叶うわけないと思っていた。冗談半分で書いたものだった。 誰かと関わるにはあまり多くの事情を抱えすぎていたから、友達が欲しいとは思いつつ期待はしてなかった。 でもこれはもしかしたらチャンスかもしれない。 歪な俺らと関わろうとしてくれてる人間が、今ここにいる。
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髪色とほぼ同じ真っ白な手のひらが、俺の前に差し出される。 どうしよう...行ってみてもいい、のかな。いや1回ないくんに聞いてから.... 俺が手を取るのを躊躇っていると、タイミングがいいのか悪いのか、ゴミ出しに行っていた彼の声が聞こえた。
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手ぶらになったないくんがこちらまで足を進めたところで、固まる。詳しく言えば白髪の彼の姿を確認して、大きく目を見開いたまま固まる。 かと思えば、何の断りもなくないくんは彼から引き剥がすように俺の腕を引っ張った。
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桃
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俺がしどろもどろに答えるけど、ないくんはまだ信用が足らないのか眉をひそめた表情から変わらない。最近はないくんの優しい顔じゃない顔も見る機会が増えた気がする。
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恐る恐る自分の意思を口にすると、ないくんは綺麗な顔を歪めて「正気かよ」とでも言いたげな表情を向けてくる。 信用ないのは分かるけどあまりにも露骨すぎでしょ。
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ここでこの技を使うのは少しずる賢い気がするけれど、背に腹はかえられない。
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俺は知ってる。 ないくんが俺のおねだりに弱いこと。
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ないくんが逡巡していると、ぱちんと白髪の彼は両手を合わせて切り替えるように乾いた音を鳴らした。
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そう言って、彼はそそくさと背を向けて歩き始め、やがて曲がり角に姿を消した。ないくんは唖然とした様子で立ち尽くしている。 かなり無理やりではあったけど、あの子が勢いで押し切ってくれてよかった。
〜桃side〜
やっぱり行かない方が良かったかも。 そう俺の危険察知アンテナが言っている気がする。
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朝の出来事から3時間ほど経ち、白髪の彼に案内されるがまま辿り着いたのは有り得ないぐらいボロボロのアパートだった。 白い塗装は半分以上剥がれかけていて、鉄製の柵もすっかり錆びきっているし階段は登る度にギシギシと嫌な音を立てる。 俺の家から10分ちょっとの所にこんなアパートがあるなんて全く知らなかった。
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ちょうど1番奥の部屋の前に到着したところで、彼はドアノブに手をかける。 が、ガチャりと重厚な音が鳴るだけでドアが開く気配は無い。
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試しに横のインターホンを押してみるが、どうやら故障しているらしく使い物にならなそうだ。 すると彼は左手でグーを作って、ドアに向かって思いっきり振り上げた。 ドンドン、ドンドンというチャイム代わりの大分物騒な音が鳴り響く。 暫くしてギギギという古い蝶番が動く音と共に、手前にゆっくりとドアが開いた。
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現れたのは、俺と同じ歳ぐらいの背の高い男の人だった。 くたくたでシワだらけのスウェットと黒のルームパンツに身を包み、青い髪は寝癖が酷くとっちらかっている。 どっからどう見ても寝起き。
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自由奔放な白髪の彼の様子にその人は肩で大きく息を吐いた。 顔こそイケメンだけど、無愛想の権化みたいな人だな。 とにかく気に障らないように、俺は身を縮こませながら玄関へと滑り込んだ。
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確かに白髪の彼の主張通り、外見に反して室内は思っていたよりも普通だった。 ゴミで溢れているゴミ屋敷...ということも無く、床や壁のボロさに目を瞑れば一般家庭の家とあまり変わらない。 とりあえず案内されたソファに腰掛けて、お互いに軽く自己紹介をした。 自己紹介といっても自分の名前を共有しただけだけど。
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しょうちゃんは一人暮らし用の小さな冷蔵庫からカルピスのペットボトルを取り出し、コップをひとつだけ持ってローテーブルに置く。
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カルピスの容器が傾き、無色透明のグラスにどんどん白色の液が注がれていく。
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彼はうんうんと頷きながら両手を頬に添えて分かりやすくぶりっ子ポーズを作る。
こいつ、悪意があるのかないのかは知らないけどちょっと鼻につく発言多いな。 そう思ったけれど流石に俺も大人なのでその言葉は唾とともに腹へ押し込んだ。
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しょうちゃんが上体を捻って向けた先には、しわくちゃの布団の上で横になりながらスマホをいじっているまろの姿があった。 こちらの方に来て一緒に団欒する気は微塵もなさそう。
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冷たい言葉で一掃されて、思わずなぜか変な疑問形で謝る。 やっぱりこの人ちょっと怖い。さっきから絶対不機嫌。
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何となくのその場の流れで、視線がりうらへと移り変わる。 りうらはその視線に一瞬肩を揺らすも、思ったよりもあまり躊躇なく口を開いた。
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俺とりうらが絶妙に低いテンションで、まろは言うまでもなく、彼だけがハイテンションにここ全員の殺人事情を聞いて満足気に笑うというなかなかカオスな空間が誕生してしまった。 そんな状態で、突然しょうちゃんが何かを閃いたのかわざとらしく手のひらに拳を乗せる。
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彼が指を指した冷蔵庫の隣には、大量のダンボールが積まれていた。 ただのダンボールではない。側面には大手酒メーカーの名前が刻まれていて、確実に中身がある。
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しょうちゃんは冷蔵庫の上に乗っかっていたプラスチックの箱からとんでもなく巨大なポテトチップスの袋を取り出した。まじでどこに売ってんだよそんなの。 それからオレンジジュース、強炭酸、グミ、市販のチョコチップクッキー...次々とテーブルが満杯になるまで運ばれ、小学生のパーティーみたいな頭の悪そうな歓迎会セットがずらりと並んだ。
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文句を言いつつまろは雑に渡された缶のお酒を受け止め、まるで息を吸うような滑らかさで缶の蓋をプシュッと開けたから、しょうちゃんが「あーーまだ飲まんといて!」と声をかける。
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しょうちゃんはカルピス、俺はお茶、りうらはオレンジジュース、まろはお酒が各自に行き渡ったところで、少しヒヤリとするグラスを手に取り胸あたりまで上げる。 全員が手持ちの飲み物を持ったことを確認してから、しょうちゃんはこほんとわざとらしく咳払いをした。
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彼の合図で、それぞれのグラスが一斉に...ではないけど、疎らに真上へ上がる。
オレンジジュース、お茶、カルピス、お酒...。
4人それぞれに掲げられたドリンクは、俺たちの異なる事情を表しているようにも思えた。
NEXT→1200♡
コメント
12件
飲み物が表してることってなんだろう、、、
いや、もう全部好き‼️ 内容も天才だし口調とかあっててまじ凄いです!! 続き待ってます!頑張ってください❤️🔥✊🏻🔥
まろちゃん っ!!✨ 皆の口調とか 性格に 合ってて凄すぎます… 💓🙏🏻