先生
色眼鏡現
この先生は俺の他の美術の先生だ。 去年までは彼が美術部の顧問をしていたが、もう年だからと、今年から俺が美術部の顧問をすることになった。
先生
色眼鏡現
そう言って、俺は美術室へと向かった。
美術部に入ると、部員は皆集中して絵を描いていた。 顧問が変わることは事前に伝えてある。改めて何かを言うことはないだろう。
襟内煙
あの子、美術部だったのか。去年まではバスケ部の副顧問をしていたから知らなかった。
生徒
色眼鏡現
俺は女子生徒の質問に答える。その姿は実に顧問らしく、誇りに思えてくる。楽しそうに絵を描く生徒を見るのは何よりも楽しい。
生徒
生徒は嬉しそうに去っていくと、手持ち無沙汰になってしまった。俺は邪魔にならない範囲で見て回ることにする。
襟内煙
みんな、いくつかのグループを成して絵を描いているが、煙はどこの輪にも入らずに独りで描いていて、ペンが走る音がよく聞こえる。
色眼鏡現
その姿がなんだか放って置けなくて、思わず声をかけてしまう。
襟内煙
煙君は一瞬こちらを見てそれだけ言うと、すぐに作業に戻ってしまった。
色眼鏡現
あいつも、独りで絵を描いていたな。
色眼鏡現
襟内煙
色眼鏡現
今度はこちらを見ることはなく、作業しながら言う。 しばらく眺めていると、同じところを何度も消したり描いたりを繰り返していることに気がついた。
色眼鏡現
俺は少しアドバイスをしようと、煙の小さな手と共にペンを包み込んで握る。
襟内煙
煙君に手を弾かれ、痛いと呟きそうになるのを抑える。
襟内煙
色眼鏡現
それから数時間ほど経って、部活は終了の時間になり、みんなは家路についていく。
俺は職員室に戻り、考え事をしていた。
先生
色眼鏡現
先生
色眼鏡現
どうして分かったのですか?とは、あえて聞かない。きっと、前の顧問である彼も手を焼いていたのだろう。
先生
色眼鏡現
先生
様子を見に行こうと重そうに腰を上げた先生を慌てて静止し、圧倒的年下である俺がその役割をかって出る。
色眼鏡現
そう言いながら、扉を開ける。 すると、机に伏して眠っている煙の姿があった。
すぅすぅと寝息を立てて心地良さそうに眠っている。先刻までの冷たい態度とは裏腹に、どこか幼さを感じる印象だった。
色眼鏡現
襟内煙
そんな可愛らしい声を漏らしながらゆっくりと起き上がる。 ぼんやりと遠くを眺めているが、俺の存在に気づくと、慌てた様子で先ほどまでの煙に戻ってしまった。
色眼鏡現
襟内煙
襟内煙
そう呟く煙はどこか悲しそうな目をしてたが、さっさと荷物をまとめて出て行ってしまった。
あの目は
色眼鏡現
色眼鏡現
男子生徒
色眼鏡現
こいつと煙は同じ目をしている。 孤独に慣れきってしまったような、全てを諦めてしまっているような。
俺が、こいつの気持ちに早く気づいてれば……
俺が、中途半端に手を差し伸べなければ……!!
何かを抱えた目をしてるところも
独りでいようとすることも
顔も
声も
仕草も
全部があいつに似ている。
煙を愛することが
償いになるんじゃないか?
色眼鏡現
廊下に出て行ってしまった煙を慌てて追いかける。 幸い、煙はまだ遠くに行っておらず、俺の声が耳に入ると歩みを止めてこちらを向いてくれた。
襟内煙
その表情からは少しの苛立ちを感じられた。 早く帰りたい。というよりも、俺と関わりたくない。というのが伝わってくる。
あいつも、最初はそうだった。
襟内煙
煙は俺が口を開くのをじっと待っている。
色眼鏡現
煙は少し瞳を揺らした。が、すぐにいつもの無表情に戻った。
襟内煙
色眼鏡現
俺は煙に歩み寄って、まるでシルクのようにサラサラとした髪にそっと触れる。
襟内煙
煙は大きく目を見開いた。夕陽に照らされているせいか、頬が少し赤い。驚きと警戒心の他に、羞恥心が入り混じっているように感じられる。
まるで時間が止まったようだった。が、その後の煙は俊敏だった。
パッ、と。俺と距離を取り、口を開いた。
襟内煙
それだけ言い残し、踵を返して歩き始めた。
では、勝手にさせてもらうとしよう。
コメント
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ツンデレはイイゾォ