日帝
イタ王
ナチス・ドイツ
ぺこりと素直に頭を 下げる先輩たちに、俺はまた 溜息を吐いた。
イギリス
イギリス
その瞬間先輩たちは イギリスに向かって 土下座した。
イタ王
イギリス
その一連の会話で、 思わずくすっと笑いが 零れた。
戦時中と何ら変わらない 会話に、俺も警戒心が少し 解けてきたらしい。
イタ王
日帝
イタ王
軍帽を頭から外し、 イタ王は困り顔を 浮かべて頭を かいていた。
イタ王
急に真面目な トーンで話を切り出した。
イタ王
イタ王の目には、 涙が浮かんでいた。
ナチス・ドイツ
先輩が、そう言いながら 袖で目元を拭っていた。
…イタ王が泣くのも 十分珍しいが、先輩も 泣いているなんて…
日帝
ナチス・ドイツ
先輩は俺の右手を 両手でぎゅぅっと握った。
日帝
イタ王は俺の手を 握るどころか思い切り 抱きつかれた。
あまりの苦しさに、思わず 俺はうめき声をあげた。
ただでさえイタ王は 俺よりもかなり背が 高いんだ!!
日帝
イタ王
イタ王が俺の肩に顔を うずめながら 俺の名を呼んだ。
イタ王
『79年も待って、ようやく 会えたから』
イタ王のそんな声が 聞こえたような気がした。
…俺は、抱き着いたままの イタ王の背中を慰めるように ぽんぽんと叩いた。
にゃぽん
にゃぽんが首を傾げて 日本に問いかけた。
今、俺たちは居間から 出て洋風のリビングの方へ 来ている。
夏なので床にはひんやり するカーペットが敷かれ、 床に座っても快適だ。
日本
アメリカ
アメリカがそう言うと。
パラオ
パラオが無垢な笑顔で そう言い。
イギリス
イギリスも賛成の様子。
俺はただ一人…
日帝
…と悩んでいた。
この時代から見ればなんと 俺は79年前の人間らしい。
当然、79年前に 『マ〇カ』なんてものが 存在していたわけでもなく……
日帝
昔の人間とはいえ、 俺も立派な日本人だ。
空気を読むのは この中の誰よりも 得意だと思っている。
だからこそ、俺は この盛り上がった空間に 水を差す訳にもいかず 悩んでいるのだ。
日帝
イタ王
ナチス・ドイツ
俺の両隣に座る先輩達が 心配そうな顔をして そう問うてきた。
日帝
そう思って、 マ〇カとはなんだと 問おうと思ったとき。
パラオ
……
聞く間もなく呼ばれて しまった。
これは詰んだ。
俺はどうすればいいのか 全く分からないのでとりあえず 立ち上がり、皆が集まっている てれび(?)とやらへと向かった。
パラオ
パラオに笑顔で四角い 黒いものを渡される。
日帝
スティックとボタンの ついている奇怪な形を した四角い箱。
多分パラオはそんなつもりは ないのだろうが、こんな機械を 説明も無しに渡すところに 悪意を感じてしまう俺が居た。
日帝
日本
日帝
げぇ、と眉をひそめながら そう言うと日本は人懐っこく 笑った。
イタ王
イタ王のその言葉で、 さらりと初めにやる人間が 決まった。
ドイツ
にゃぽん
イギリス
イタ王
ドイツ
ぞろぞろと立ち上がって、 皆がキッチンへと去って行った。
イタ王がにっこりと 俺の方を向いて笑った。
イタ王
ナチス・ドイツ
日帝
…本当に、この二人には 感謝しかない。
この二人は、俺が戸惑って いるのを察して自然に 俺が話しやすい枢軸と 過ごす時間を作ったのだ。
そして、当の本人たちは 全くそんなことを俺に悟らせ ないように振舞っている。
その心遣いが嬉しかった。
日帝
先輩が笑いながら深々と 下げている俺の頭を ぽんぽんと叩いた。
ナチス・ドイツ
顔を上げると、微笑んでいる 先輩とイタ王が居た。
数か月前の戦時中に、 戻った様に一瞬だけ錯覚 してしまっていた。
そして、気が付けばもう 何時間も経っていた。
アメリカ
パラオ
米帝とパラオがそう言ったので、 俺も時計を見上げる。
時計の短針は、午後 5時を指していた。
にゃぽん
アメリカ
イギリス
イギリスの声をきっかけに、 今までいた人間がどんどんと 帰り支度を始めていた。
俺もさっきまで かーとを操作していた じょいこんを置き、 立ち上がった。
ナチス・ドイツ
日帝
日帝
その瞬間、口の中に 何かが 押し込まれた。
見れば、イタ王が俺の 口の中にピz…じゃない、 ピッツァを押し込んでいた。
日帝
イタ王
イタ王が、寂しそうな 顔で笑っていた。
珍しいその表情に、 俺も、先輩も
何も言えなかった。
イタ王
日帝
イタ王
イタ王は微笑んでいた。
…前とは違う、 温かい笑み。
ピッツァをなんとか 飲み込み、一度紅茶で 流し込んでから改めて答えた。
日帝
イタ王
ぱっ!とイタ王は 花が開くように笑い、 先輩も親の様に微笑んでいた。
家の前。
ドイツ
日本
あちらでは日本とドイツが 別れの挨拶をしていて。
イギリス
アメリカ
こちらではイギリスと 米帝が親子喧嘩(?)をしている。
イギリスとカナダは 構わんが、米帝。
貴様はとっとと消えろ……
心の中が米帝への憎悪で ささくれ立っていた時、 パラオが俺の手を ぎゅっと握った。
パラオ
日帝
えへへ、と照れた ようにパラオが笑った。
パラオ
パラオ
パラオを、困らせて しまっている。
早く、答えなければ
日帝
パラオ
…だめだな、俺は。
パラオとまた、 遊びたいという気持ちは あるのに…
俺がタイムスリップ してしまったという現状を 認めたくなくて、こうして 先延ばしにしてしまう。
日帝
パラオ
パラオ
日帝
俺は、パラオの 言っている意味が わからなかった。
試しに目元を袖で 拭ってみたものの、 涙は出ていない。
どういうことか、と パラオに尋ねようと 顔を上げた。
パラオ
日帝
自分の心の臓が あるだろう場所に 手を当ててみる。
俺は、『大日本帝国』。 つまりは、国そのものだ。
だから俺には心臓が 無い。
…心が泣いている、とは、 一体…
パラオ
日帝
パラオ
パラオ
パラオのその言葉は、
当時の俺の心情を 的確に言い当てていた。
パラオ
パラオ
パラオの表情は、まるで
小さな子供が泣いているかの ような、痛々しい表情だった。
日帝
パラオ
俺は、パラオの頭を 撫でた。
日帝
パラオ
小さな胸を張って、 えへん!とドヤ顔を するパラオは、
とても可愛かった。
パラオ
日帝
パラオ
パラオが手を振って 去っていった。
俺も手を振り返し、 いつの間にかドイツやイタリア、 枢軸の皆もいなくなっていた。
日帝
きびすを返して 戻ろうとした、その時。
アメリカ
アメリカが、話しかけてきた。
俺は、立ち止まった。
このまま無視して帰る、と いう手もある。
だが、さすがに呼ばれて 無視をする筋合いもない。
日帝
俺は結局甘い。 振り返って、アメリカを 見た。
アメリカ
日帝
日帝
『…違うでしょ、陸』
『本当はアメリカを 恨んではないんだろう?』
日帝
『…無理やりに嫌わなくても いいんだぞ、陸』
『━━━…陸は、本当はさ』
日帝
アメリカ
日帝が何かを言いかけて そのままストップして しまった。
アメリカ
思えば、日帝は79年前から 『そのまま』こっちへ 来た…って話だったよな。
戦時中の医療は今ほど 発達してなかったから、 まだ体に多くの生傷が 残ってるはず…
その考えに行き着いた 途端に、俺は日帝へと 駆け寄った。
アメリカ
日帝
日帝は、何も言わなかった。
ただ、うつむいたまま、
俺の体に拳を当てた。
痛みはない。
ただ、ポン、と 体を叩いたに過ぎない 軽い拳だった。
日帝
アメリカ
日帝が何と言ったのか、 俺の耳に届かなかった。
日帝は、もう一度 声を発した。
日帝
まるで、風に流されて しまいそうなほど か細い声。
日帝
日帝はぽつぽつと 語った。
日帝
日帝
日帝
日帝
アメリカ
日帝
日帝
日帝
…日帝がここまで言葉を じっくりと選んで話すと いうことは、本当に 悩んでいる証拠だ。
アメリカ
俺は、日帝からどんな 形であれ返事が 貰えただけで十分だった。
アメリカ
日帝
元敵国ながら、見送りを するところに日本人の 律義さを感じる。
日帝に背を向け、 歩き去ろうと思ったが、 最後に一言。
アメリカ
アメリカ
日帝の顔は俯いていて 見えない。
俺は、返事がないなら それでいいと思っていた。
日帝
日帝は、それだけ 言った。
やっぱり日本人は律儀だった。
???
???
???
消えた存在が、陸にとって 枷となってる。
枷があることによって、 陸は自分の考えを 捻じ曲げてる。
…陸が解放される方法って、 あるのかなぁ……
海
空
海
コメント
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時差コメ失礼します、 目から汗が出てきました どうしましょう
うううううーん😭😭最近ハマって見てるんですけど過去一好きですううう😭🥹
陸〜‼️(´;ω;`)