TellerNovel

テラーノベル

アプリでサクサク楽しめる

テラーノベル(Teller Novel)

タイトル、作家名、タグで検索

ストーリーを書く

夕暮れともう一度の告白。

一覧ページ

「夕暮れともう一度の告白。」のメインビジュアル

夕暮れともう一度の告白。

1 - 夕暮れともう一度の告白。

♥

24

2022年05月09日

シェアするシェアする
報告する

心地良い風と共にオレンジ色の光が入る夕暮れ時 _ 。

誰も居ない教室のカーテンが 舞い揺れるのを…私はただ

これが"最後"なのだと

愛おしく…寂しそうに見つめていた。

… この光景も今日で最後なんだね

醒斗

最後…かぁ

醒斗

俺は別にもう少しここで居ても良いかな〜とか思ってるけど

え、何? 君もしや
最後の最後に留年希望??

醒斗

あー…うん、留年希望。

醒斗

…とか言ったら、泉怒る??笑

いや、怒るに決まってるでしょ

急に変な事言い出さないでよね

留年なんて紗代子おばさんが聞いたら何て言うか … はぁ。

醒斗

あー分かった! 分かったから!!

醒斗

そんなお母さんみたいにカッカするなよぉ…な?泉?

怒らせてんのはアンタでしょーが!

はぁ… だめだよ、留年なんて。

醒斗

… 分かってるよ、そんな事。

醒斗

だけど、… 。

… なんだか最後だって思うと余計寂しくなっちゃうね。

醒斗

…うん。

あ!そうだっ

覚えてる?醒斗が告白してくれたあの場所!

醒斗

そりゃあ覚えてるよ

醒斗

そこで告白するんだーって前々から
計画立ててたんだから

ふふっ

勉強の計画は全然の醒斗が計画だなんて珍しい事してたんだね?笑

醒斗

う、うっせえ!勉強は別なんだよ!

はいはい笑

ここに居るのも最後なんだしさ
もう一度あそこ行ってみない?

思い出の地、みたいな!!

醒斗

あ〜うん、あそこ…な。

醒斗

… 。

え、何、本当は覚えてない…の?

醒斗

違っ!!そうじゃねぇって!!

醒斗

ただもう少し教室で居たいなって

…あーも〜!グズグズしてないで日が落ちちゃう前に行くよ!

醒斗

あ!泉!ちょっと置いてくなって!

足取りの重い俺をほって教室を出る泉。 そんな泉を追い掛ける様に 俺は教室から離れたのだった 。

寂しく揺れる光と風と懐かしい景色 花瓶に入った一輪の白花に背を向けて。

着いた〜!久しぶりに屋上まで
階段登るとしんどいね笑

醒斗

ははっ、へなちょこ笑

黙らっしゃいっ!この体力お化け!

醒斗

陸上部の俺からしては
それ褒め言葉だから

… 馬鹿ゴリラ。

醒斗

それはただの悪口ッ!!

それにしても懐かしいね〜

醒斗

この景色、あの時から
ほんと何にも変わってないな

あ、見て、ここのフェンス壊れかけてるのも全然直してもらってない。ほんと危ないなぁ〜 落ちちゃうよ、

醒斗

げ、ホントじゃん。これぶつかったら絶対落ちるって…怖ぇ。

あ、でもね このフェンスの前に立って見た景色が今までの中で1番綺麗なんだ

特に日の落ちる夕暮れ時が

…ねぇ、この前に立って景色見てみてよ

醒斗

あ〜確かに。景色が綺麗で気温もちょっと暖かいから、ぼーっとしちゃうっていうか…なんか夕日に吸い込まれそうになるな

でしょ

あ〜なんか思い出すね!告白の日の事。

その日もこんな夕暮れ時でさ!
告白のセリフが、えーっと…

「ずっとお前の隣にいたい」、だっけ?

よくこんな言葉出たね?

ドラマでしか聞いた事無かったよ笑

醒斗

おいおい彼氏の勇気を笑うなよな
俺なりに頑張ったんだから

ふふっ、ごめんね

思わず思い出して笑っちゃったけど、ほんとカッコ良かったなぁ〜

醒斗

醒斗?

醒斗

なぁ、泉 … 。

醒斗

ドラマだか何だか知らないけどさ…隣に居たい、は 今も同じ様に思ってる。

醒斗

これは本気だよ

醒斗 … 。

醒斗

だからさ、これからも
俺の隣に居てくれる?

あ、はは …

ごめん、今は醒斗の本気
受け取れないや

醒斗

…え?

もう醒斗の隣には居られない

醒斗

なんで…

醒斗

どういう事だよ

そのまんまの意味だよ

なんかさ、もうずっと言うタイミング失っちゃってて…醒斗の隣に寄り添う事も引き離す事も出来なかった。私ったら本当にいざとなると弱いね。

でもこのままじゃダメだって思ったから…最後のこの日に終わりにしたいの。

醒斗

終わりって…

醒斗

俺、何かした?
もしかして嫌いになった…?

ううん、そんな事あるはずない

醒斗

じゃあ、何で …!

醒斗が私の事好きでいてくれる様に私も醒斗の事が大好きなんだ

… だけどね、

今は違うの。あの時と。

こんな気持ちで醒斗と居ちゃいけない

醒斗も分かってるでしょ?

… このまま私と居たら陸上選手の夢も何も叶わない。

醒斗

!! でもっ…

私との時間で夢を終わって欲しくないの

醒斗は何も悪くない … 悪くないよ。

醒斗

嫌だっ…泉っ

こんな形になってごめんね。

本当に、私が弱くて…ごめん

隣に居られなくてごめん…っ

今までありがとう。

私 と …… 別 れ て 下 さ い 。

醒斗

ぁ……い、嫌だ…

醒斗

だからって別れる必要ないだろ

醒斗

別れるなんて…泉を残して行くなんて…

醒斗

俺には出来ないっ!!

でもね、もう時間が無いの

あとちょっとで日が落ちちゃう。

醒斗が好きだから…醒斗には何も縛られずに自由に生きて欲しい。

醒斗、ごめんね…っ

泉は俯く俺の顔に手を添えると そっと下から口付けを落とした。 大きな瞳から大粒の涙を零しながら 『 好き 』 と、呟くその儚い姿に 心が打たれ一瞬力が緩んだ _ その瞬間。

ガチャンッ!!

頬から離れた泉の手は いつの間にか肩への移動し グイッと力強く後ろに押されては "あの"フェンスにぶつかった。

一番綺麗に見えるその場所から 夕日に吸い込まれる様に…

ばいばい、醒斗。

また…ゆっくり、会いに来て。

…俺は、君の か弱いその手 で いとも簡単にこの世を去った。

ピッ ピッ ピッ…と 小刻みに鳴り響く機械音

目を開けると広がるのは 寒色系の部屋に窓外には桜の木

薬品の微かな匂いに

鉛の様に重く動かない身体。

醒斗

い……ず、み…。

チラッと視界の隅に人影が見えては ふと懐かしい名前が口から溢れ出た

紗代子

?!、醒斗…?!!
ねぇ醒斗、聞こえる?!!!

紗代子

先生っ…!! 醒斗が!!
息子が、目を覚ましましたっ!!

俺を見ては酷く驚き慌てては 駆け出し誰かを呼び叫ぶ母親の姿。

紗代子

醒斗!! 帰って来てくれて良かった…っ

母と顔も知らない誰かが俺を囲んでは 『 良かった 』 と、皆 口を揃えてそう喜んだ。

紗代子

あぁ…きっとあの子が醒斗の事を守ってくれたのね…。

醒斗

…… あ、のこ?

紗代子

ほら、醒斗の…

紗代子

恋人だった『 浅瀬 泉 』ちゃん。

紗代子

誰かに押されてかで屋上のフェンスと一緒に落ちたっていう…醒斗には勿体ない位 しっかりとした優しい子だったのに。

紗代子

醒斗も泉ちゃんもお互い好きだったのはお母さんでも分かる。でも泉ちゃんだもの、醒斗がこんなに早く行ったら泉ちゃん悲しむわ…。

紗代子

残されたお母さんも亡くなったお父さんも悲しくなる。辛くなる。

紗代子

…もう先に行こうとしないって
約束して、醒斗…っ

醒斗

お母さん … ごめん。

何日も寝ていなかったのか やつれた顔で涙でグチャグチャにし、自身の手を離さないと震える手で優しく掴む母。 その温かさに触れては、自然と一粒 涙は頬に伝って落ちていった。

あぁ、そうか 思い出した。 俺はあの日…

壊れていたフェンスと共に落ちた 泉に会いに行こうと 俺も飛び降りたんだっけ

あれから俺は数ヶ月 目を覚まさなかったらしい。

学校は四階建てで屋上から 落ちたとしたらほぼ助からない 位の高さの筈らしいが、 目立った外傷は無く命に別状は無いと。

多分、母が言う様に 泉が助けてくれたのかもしれないな

眠っていた時に何かあった様な 不思議な感覚は残っているが 霧の様に記憶がぼやつき思い出せない

しかし『好き』と『別れて』という 矛盾した言葉が耳に張り付いていて

確かにその声は泉だったんだ。

あぁ、泉 … 聞こえてるか?

なんで別れてなんて言われたのか 俺には分からないけど… そんな悲しげな声で別れてなんて 言われても 納得する訳ないだろ

別れ話だって愚痴だって 何だってその時に聞いてやるし

もし泉と会って別れたとしても 何度でも『 好き 』だと告白してやる

だからそれまで待っててくれよ。

だって今は、まだこんなにも

泉の事が

醒斗

__ 大好きなんだ 。

この作品はいかがでしたか?

24

コメント

0

👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!

チャット小説はテラーノベルアプリをインストール
テラーノベルのスクリーンショット
テラーノベル

電車の中でも寝る前のベッドの中でもサクサク快適に。
もっと読みたい!がどんどんみつかる。
「読んで」「書いて」毎日が楽しくなる小説アプリをダウンロードしよう。

Apple StoreGoogle Play Store
本棚

ホーム

本棚

検索

ストーリーを書く
本棚

通知

本棚

本棚