世界で1人

この世界を望んだのは

『あなたよ』

『あの日のこと』

ドサッ、

とさ、

あんなに取り乱すほど

何があったのか

今はまだ分からないけど

俺は静かに眠る彼女の頭をそっとなでた

3週間。

この世界になってからそんなに経ったのか、と改めて実感する。

テレビはずっと過去の放送をしていて、

コンビニやスーパーはAIが店員として動いているため、食料に困ることもなかった。

海side

『あなたが言ったのよ！！！』

「やめて...っ、！！」

う...、ん

...う、ちゃん、！

うみちゃん、！

確かに私の頬は濡れていた

ぎゅっ、

私はずっとピアノを習っていた。

小学校1年生になると同時くらいに始めた。

2年生の終わりごろ、弟の空も習い始めた。

彼は才能の塊で、すぐに上達した

父も母はいつも私たちを褒めてくれた

いくら空の方が上手になっても、両親は2人を褒めてくれたから

弟に嫉妬なんてすることがある訳なかった

でも、あの日

空のピアノのコンクールの日

空の演奏の後、ピアノの先生と両親が話しているのを聞いてしまった。

ショックだった

穏やかな両親だった。今思えば、先生に言い返すなんてことするような人じゃない

今ならそう思えるのに

まだ小さかった私にとって、庇ってくれなかった両親がショックすぎて、

なにより、先生の言ってることが悲しくて

目の前が真っ暗になった、

その後のことはもうあまり覚えていない。

家に帰ってすぐ自分の部屋に閉じこもった。

泣きながら、電気もつけないで、うずくまってた。

「みんないなくなっちゃえ」