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作者の野郎
作者の野郎
作者の野郎
七沢 優斗
優斗は、目覚めて時計を見た瞬間、全てを悟った。
七沢 優斗
ベッドから転がるように飛び出し、制服の袖を通しながら いつものルーティンを高速でこなす。 だが、今日は何かが違った。朝の光はやけに強く、 空気は妙に澄み渡っている。
七沢 優斗
食卓に並ぶトーストを雑に掴み、 口に咥えながら玄関を駆け抜けた。
七沢 優斗
そんなくだらない妄想をしながら、 いつもの交差点へと続く角を曲がったその時—
ガッ!
瞬間的な痛みと衝撃が全身を貫いた。 視界が揺れる。 足がもつれ、体がゆっくりと傾く。 食パンが宙を舞い、アスファルトに落ちる音が響く。 倒れたさきで、優斗は自分の胸元を見た。
七沢 優斗
鮮やかな赤黒い色が、 制服の布を染めていく。 視界の奥に、刺した犯人が立っていた。 そいつはパーカーを深く被り、顔は陰に隠れて見えない。 その奥側にはもう一人の影がぼんやりと立っていた。 輪郭は曖昧だったが、ただひとつだけははっきりとわかった。
そいつはにやけていた
その口元に浮かんだ薄ら笑いは、 まるでこの出来事を楽しんでいるかのようだった。 優斗の頭の中に、妙な違和感と寒気が走る。
七沢 優斗
その思考は最後までまとまることなく、周囲の音が遠ざかり、 視界がぼやけていく。そして、優斗の意識は、深い闇の中へと沈んでいった—
しばらくして、目を開けると、優斗は王宮の広間に立っていた。 荘厳な装飾が施された巨大な空間。大理石の床に反射する光。頭上には豪奢なシャンデリアが揺れ、王座の前には兵士や神官たちが整列している。 だが、優斗の視線はまず、12人の魔法使い へ向けられた。 彼らは、右手に木の杖、左手には真っ黒な本 を持ち、優斗を囲むように立っている。その本の表紙はまるで、周囲の光を吸い込むような漆黒だったのだ。 その場は、異様なほど静かだった。誰も言葉を発しない。誰も動かない。
王
広間に響いた王様の声が、その沈黙を破った
七沢 優斗
優斗はその言葉に困惑する
七沢 優斗
東江 健二
優斗より先に声を上げたのは、優斗をいじめている男、東江 健二だ。 健二は、学校でも特に派手なグループの中心だった。運動神経が良く、成績も悪くない。そして、人を見下すことに快感を覚えているタイプの人間だった。
東江 健二
七沢 優斗
東江 健二
そんな風に、健二は優斗をからかい続ける。 時には机に落書きをされる。時にはノートを隠される。 時には靴の中にゴミを詰められる。 小さな嫌がらせの積み重ね。 それでも優斗はそれを無視し続けた。無視するしか、選択肢がなかった。
七沢 優斗
健二は眉をひそめ、苛立ちを隠そうともせずに王様を睨みつけた。
東江 健二
王はゆっくりと頷き、静かに言った。
王
王は広間を見渡し、改めて口を開く。
王
その声には、重い緊張感があった。
王
優斗は息を呑んだ。
七沢 優斗
健二は腕を組み、不機嫌そうに舌打ちをした。
東江 健二
すると、12人の魔法使いたちの中の一人が、静かに王へ歩み寄った。 そいつは顔を伏せながら、王の耳元へ何かを囁く。 次の瞬間、王の表情が変わった。
王
その言葉は、驚きと喜び、しかし失望にも似た何かが含まれていた。
七沢 優斗
そして、王様は話し始めた。
王
王
優斗は耳を疑った。
七沢 優斗
そんな彼の混乱をよそに王様は喜びの混じった声で言った。
王
広間がどよめいた。 健二はゆっくりと口元を歪める。
東江 健二
王の言葉は決定的だった。 優斗は震えそうになる。
七沢 優斗
この世界でも、東江健二は最強で、七沢優斗は最弱だった。 すると、王が口を開く。
王
健二が笑みを浮かべる
王
優斗は何も言えず、ただ森へ向かうことになった。 そして、優斗は森につくと目の前には、鬱蒼とした木々が広がり、その奥には深い影が落ちていた。葉の間からわずかに光が差し込むが、森の奥へ進むにつれて暗闇が支配していた。
七沢 優斗
優斗は自分にそう言い聞かせながら、そこに足を踏み入れた。 優斗は不安を抱きながらも、慎重に歩みを進めていく。 地面は湿り気を帯びており、足元を踏みしめるたびにぬかるんだ感触が伝わった。そして、どこか腐臭のようなものが混ざっている気がした。
七沢 優斗
優斗は周囲を見渡しながら、さらに森の奥へと進んでいった。 しかし、時間が経つにつれて、ある疑念が浮かび上がる。
七沢 優斗
鳥も獣もいない。虫の音さえもしない。 それは、まるでこの森が何かに支配されているかのようだった。 優斗の背筋に冷たいものが走る。 その時ー
ズシン…ズシン…ズシン…
遠くから、重く鈍い音が響いた。 地面がかすかに揺れ、木々がわずかにしなる。
七沢 優斗
優斗は息を呑み、音の方向に目を向けた。 すると、遠くの木々の間で何かが動いた。 影は巨大で、異様な形をしている。そして、その影がゆっくりと優斗のほうへと向かってくる。 優斗は、転生前に、ゲームの中でそれを見たことがあった。 通常のゴブリンよりもはるかに巨大な体。 そして厚い脂肪と筋肉に覆われ、緑色の皮膚は光を吸収するかのように不気味な輝きを放っている。
七沢 優斗
そしてその目が優斗を捉えた瞬間―。
七沢 優斗
体が凍りついた。 動かなければならない。逃げなければならない。 だが、足がすくんで動かない。 ゴブリンキングがゆっくりと口を開く。黄色く染まった牙が並んでいて、噛みつかれでもしたらどうなるのか… その直後
ズドンッ!
ゴブリンキングの腕が振り下ろされた。 その衝撃で地面が激しく揺れ、優斗はバランスを崩した。
七沢 優斗
優斗は転びそうになりながら、必死で立ち上がった。 そして、本能が叫んだ。
ー逃げろ
優斗は全力で走り出した。 足元の枝を踏み砕きながら、木々の間を駆け抜ける。 背後では、ゴブリンキングが、熊よりも早いようなスピードで追いかけて来ている。 その巨体にも関わらず、追いかけてくるスピードは異常に速い。 まるで夢の中のように、走っても、走っても、逃げられない。
七沢 優斗
優斗は自分が戦う力を持っていないことを思い知らされる。 剣も魔法もない。ただ逃げることしかできない。 逃げているうちに、森はさらに暗くなっていく。 木々の間からほとんど光が入らず、足元さえもよく見えない。 優斗の息は荒く、全身に冷たい汗が滲んでいた。背後からは、 ゴブリンキングの重々しい足音が近づいてくる。 地面が揺れ、木々が軋み、恐怖が全身を覆う。
七沢 優斗
優斗は転びそうになりながらも、必死に地面を蹴り、前へ走る。 しかし、木々の間を抜けるたびに枝が体に絡みつき、 さらに足を取られていく。 すぐ後ろから聞こえるのは、獣の唸り声だ。 その時、ふと、疑問が頭をよぎる。
七沢 優斗
優斗の脳裏に、王の言葉が浮かぶ。
―「この近くの森ならば危険も少ないはずだ。」
あの穏やかな微笑み、優しげな言葉。しかし、今思い返すと何かがおかしい。 優斗は息を呑む。
七沢 優斗
優斗の脳裏に、王の穏やかな顔が浮かぶ。 しかし、その奥にあるもの、 あれは、慈悲ではなく、冷たい計算だった?
七沢 優斗
優斗は悟った。自分は、この世界にも必要とされていない。王は、最弱の勇者など不要だった。だからこの森へ送り、処分しようとしたのだ。
七沢 優斗
優斗は歯を食いしばり、再び走り出した。 このままでは、確実に殺される 森に潜む怪物にではなく、 王に。 だが、その瞬間 背後から、強烈な殺気を感じた。 優斗が振り返る間もなく、ゴブリンキングが 巨大な腕を振りかぶった。
ズドンッ!!
衝撃が全身を覆う
七沢 優斗
優斗の体は宙を舞い、木々を砕きながら転がる。 視界がぐるぐると回転し、次の瞬間、大きな壁にぶつかった。 全身に鋭い痛みが走る。 そして、足元の地面が崩れ、優斗の体は、奈落へと落ちていった。 遠のく意識の中で、最後に浮かんだのは、 王の微笑みだった。
七沢 優斗
そして、優斗は闇の底へと消えていった。 一方、健二は王宮から町へ繰り出し、 自分を英雄として扱うよう強要し始めた。
東江 健二
店主
店主が困惑して止めようとすれば、健二は 力ずくで押さえ込む。
東江 健二
店主
町の広場では、堂々と市民たちの前に立ち、声を張り上げる。
東江 健二
人々は戸惑いながら顔を見合わせた。
町人1
町人2
広場に広がる、疑念の声。 しかし、健二は気にも留めず、腕を組みながら高らかに笑った。
東江 健二
その高慢な態度に、町の人々は徐々に不安を感じ始めた。 そして、その不安は王への不満へと変わっていったー
作者の野郎