天使
莉絵さん、あなたが会いに行く人を覚えていますか?

莉絵
…悠貴。

天使
どのような関係?

莉絵
…恋人…だと思う…

今、私は天使さんに会いに行くのを止められています。
天使
記憶が曖昧だと、記憶のあるあちらにはショック以外与えませんよ。私は、会わない方がいいと思います。

莉絵
嫌だよ!

莉絵
今しかないんだもん…悠貴の思い出があるのは、今しかないの…!

天使
…。

天使
もう、会えないと考えて下さい。これ以上会っても、あなたの記憶はもうないと踏んでいます。

莉絵
…。

天使
だから、今日が最後だって、伝えて、一緒に過ごしてきなさい。それが、旅立つ者のやるべき事。

莉絵
…はい!

莉絵
わっ!!

悠貴
お前ほんといたずら好きだな(笑)
気づいてたけどな。

莉絵
ごまかせないなぁ…あ、智美は来るって言った?

智美
お待たせ!莉絵もいるのよね?そこに…。

悠貴
いるよ。じゃあ行こう。

智美
莉絵、いつまでこっちにいられるの?

莉絵
っ…

悠貴
ちゃんと言わないと、僕だって知りたいんだ。

莉絵
…今日。

悠貴
…え?

莉絵
今日が、最後…!!

悠貴
そっか…。

悠貴
今日が最後、らしい。

智美
え…じゃあ、最高の一日にしちゃおうか、ね、悠貴!

悠貴
だな。カラオケ、予定外だったけど行こうか。

莉絵
…いいの?予約、取ってる?

智美
あー、大丈夫!あたしの家のツテで何とかなりそうよ(笑)

智美母
もしもし?智美、どうしたの?

智美
カラオケ!部屋空いてたら貸してくれない?母さんの実家の方!

智美母
いいけど、あそこ貸しちゃっていいの?悠貴くんが辛くないかしら?

智美母
だって、莉絵ちゃんといつも歌ってた部屋よね?

智美
そこがいいの。訳あってね。

智美母
分かった。じゃあ、おばあちゃんにも言っておくからね。

智美
ありがとう、お母さん!

悠貴
…どうだ?

智美
OKだって。

莉絵
いいの?

悠貴
莉絵が、いいのか?って言ってる。

智美
もちろんだよ。

智美
マイク三人分!どれにする?

悠貴
どれも同じマイクだろうが(笑)

莉絵
これがいい。

莉絵
(マイク握れた…!!)

智美
!!

智美
莉絵、本当にいるんだね。

智美は、ようやく莉絵がそこにいる事に気づいた。天使が、智美にも見えるようにしてくれたのだろう。
悠貴
歌うぞー!あ、莉絵二人で歌わね?

莉絵
あの歌を?

悠貴
おう!智美の前で歌っては冷やかされたあの歌!

莉絵
やめてよー💧

智美
お、あれ行くの?

悠貴
おう!莉絵は相変わらず嫌がってるけどな。

悠貴
明日今日よりも好きになれる〜

莉絵
溢れる想いが止まらない

悠貴
今もこんなに好きでいるのに〜

悠貴と莉絵
言葉に出来ない〜

智美
もお、ラブラブなんだから♥

莉絵
やっぱ恥ずかしかったわ…。

悠貴
莉絵らしい(笑)

智美
そういう悠貴も林檎だねー♥

悠貴
うっせえわ!!/////

智美
じゃあ、莉絵に聞いて欲しい歌、歌うよ。

莉絵
うん。

智美
悠貴も!

悠貴
おうよ。

悠貴
女の歌とか聞いてねえ!

智美
いいのいいの(笑)

智美
Ah…恋をしたのは〜…

莉絵
あ、これってあの曲だ。

智美と悠貴
伝えたかった事は今も昔とずっと同じままだよ〜

歌が終わった。
その後のことは、よく覚えてない。でも、歌いまくったんだよね。
智美
楽しかった♪

悠貴
僕もだー!莉絵は?

莉絵
…もう、行かなきゃ。

悠貴
っ…!

智美
莉絵…。

莉絵
悠貴、最後の私の気持ち、聞いてくれる?

悠貴
…うん。

莉絵
悠貴、ごめん、大好きだったよ。

悠貴
…!

悠貴
ぼ、僕の方がずっと…好きだった!莉絵の事、忘れるなんて、出来るわけないからな!!

莉絵
…ありがと、悠貴。智美。じゃー、また遊ぼうね!

莉絵は、振り返らなかった。二人の目の前から、莉絵の姿は消えた。
それから今まで、悠貴と智美は莉絵を見る事はなかった。
智美
…莉絵、心残り、ないんだよね。悠貴と私に、伝え終わったから。

悠貴
莉絵の事だから、あれが全部だとは思えないけどな。でも、大切な事を伝えに来てくれた感じはあるよ。むしろ、勝手にそう思ったらおかしいかな?

智美
…ハンカチあげる。

二人は、その後もお互いを支えあっていった。そして、男女ではあるが、相棒になっていた。
莉絵は、今後悔してるのか、僕たちには分からない。でも、天国に行って、会ったら言うんだ。