白い部屋だった。 まるでこの世界の色をすべて洗い流したように、 壁も床も、天井も、光までも白い。
その中心に、一人の少年がいた。
年齢は17か18ほどで、 真っ白な服に、真っ黒な髪。 そして、瞳だけが、 深い闇のような赤色をしていた。
アストル・ヴァン・ノエイン(ARKHE)
アルケーは小さくつぶやいた。 視界にちらつくのは、また“これから起きる未来” ――それは、あまりに鮮明で、あまりに絶望的。
人が殺される。 大勢が焼かれ、崩れ、崩壊する。 そして、自分の手が血に濡れている未来。
「未来視」は便利な力じゃない。 選べもしないのに見せられる悪夢。 彼はずっと、この力に追われていた。
アストル・ヴァン・ノエイン(ARKHE)
壁の一部に備えられた監視窓に、笑みを向ける。 中にいた研究者はビクリと震え、すぐに顔を逸らした。
アルケーは笑った。 どこまでも冷たい、感情のない笑み。
「魔法使いは人じゃない」 「だから実験してもいい」 「使いこなせば、兵器になる」
――そんな風に言われ続けてきた。 誰にも心を許せなかった。 信じても、裏切られた。
だけど、視えたんだ。 未来の中で、自分に手を伸ばしてくる少年たちの姿が。
アストル・ヴァン・ノエイン(ARKHE)
心臓が、少しだけ跳ねた。 ――“その時”は、もうすぐ来る。
部屋の壁が震えた。 何かが外で爆発した音。 次の瞬間、警報が鳴り響く。
アストル・ヴァン・ノエイン(ARKHE)
アルケーは立ち上がった。 この世界で初めて、誰かに会いたいと願った。 自分を壊してくれる誰かを―― 自分を救ってくれる誰かを。
真っ白な部屋に、亀裂が走る。 ――そして、運命が動き出した。
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