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side:太宰
其の日から、私達は同じ屋根の下で過ごすことになった。
太宰
私は少し大きめに欠伸をして、目を覚ました。隣の寝台に中也の姿は無い。既に起きている様だった。
私はのそのそと布団から出て、何時もの服に着替えてから洗面台に向かう。
顔を洗い、歯を磨いてから居室に向かうと、其処には中也が立っていた。
太宰
中也
太宰
中也
中也
太宰
中也はそう云ってテキパキと朝餉の支度をしていく。
私は其れを眺めてから、今日の仕事をこなしに居室に戻る。あの日以来私の仕事は書類作業だけになった。
特定危険人物である中原中也の監視をして、報告書を書いて、定期的に書類回収にやってくる探偵社員に其れを渡すだけ。
今迄の様に外を駆けずり回って仕事をしなくなったことが善いか悪いかは私には解らない。
少なくとも中也と居られる時間が増えたことだけは善いのかな、なんて。
そんなことを考えながらちらりと中也の方を見遣る。
中也は慣れた手つきで包丁を操り、食材を次々と美味しそうな料理へと変化させていく。
料理の全く出来ない私はあれを魔法の様だ異能の様だと思っているけれど、昔の中也はそんな訳が無いと云った。
料理をする中也の姿は無駄な動きが無くて、とても綺麗だった。
中也
太宰
私はそう返事をして、居室を後にした。
太宰
中也
2人揃って手を合わせて、そう云う。今日の献立は白米に味噌汁、焼き魚に冷奴だった。
中也が作るご飯を食べたのは、7年振りくらいだろうか。
昔食べた料理の味なんてもうすっかり忘れてしまっていたけれど、其れでもなんだか懐かしくて。
太宰
中也
私が呟くと、中也はふ、と柔らかく微笑んだ。
其れを見て、無性に泣きたくなってしまった。
中也
中也が突然黙った私にそう問いかける。私はふるふると首を横に振ってから云った。
太宰
中也はまた、そうか、とだけ云って食事を進める。私も手と口を動かした。
2人の間に会話は無かったが、其れでも何処か心地よさを感じた。
中也
太宰
中也
太宰
私達は薄っぺらな会話をしながら2人して寝台でごろごろした。
記憶を失い脳を蝕まれた中也はもうマフィアは辞めてしまった。
……というか辞めさせられてしまったし、私も書類作業以外にすることは無い。
暇潰しになるようなものも無く、ただごろごろと寝台で寝転び、会話するだけ。
太宰
中也
私があることを思い出してそう云うと、中也が聞き返す。
太宰
中也
太宰
太宰
中也
中也は少し考えてから、そう云った。
太宰
中也
中也は窓の外を指さす。相変わらず芝と雑草だけしかない庭が目に映る。確かに殺風景ではあった。
太宰
中也
私が頷くと、中也は嬉しそうに顔を綻ばせた。
太宰
太宰
中也
中也は少し考えてから云った。
中也
太宰
私はそう返事をして、2日後に来るという知り合い……
敦君に、青い花が欲しいと連絡を入れてから、今度は2人で居室のソファに腰掛けた。
太宰
中也
太宰
太宰
中也
中也は目をぱちぱちと2、3回瞬かせて、少し頭を搔いた。
中也
太宰
太宰
中也
太宰
中也
そう云ってから中也は窓から庭を眺める。自らの過去に思いを馳せているのだろうか。
中也
太宰
私は思わず笑ってしまった。想像付かないなんて、変なの。
私からしてみれば此んな穏やかな君の方が、ずっと想像付かないのに。
そんなことを考えていると、ふと手に暖かい感触がした。中也の掌が、私の手に重なっていた。
太宰
中也
中也は少し笑った後にそう答える。そしてまた、私の掌をそっと撫でた。
中也
太宰
中也
中也は其れきり黙ってしまった。私も何も云わずに、唯、中也に掌を預けていた。
……何だか、昔に戻ったみたいだ。
私はふとそう思った。
中也
太宰
中也
中也
中也
中也
太宰
中也
中也はそう云った。私は其れを聞いて少し驚いた後、笑った。
太宰
太宰
中也
中也
太宰
中也
中也は私の言葉を遮ってそう云った。
太宰
私は素直に頷いた。中也は其れを聞くとまた優しく微笑んだ。そして私の頭をそっと撫でる。
中也
中也
太宰
中也
太宰
中也
中也
中也
太宰
太宰
中也
太宰
中也
中也
私は其れを黙って聞いていた。そして、ゆっくりと口を開く。
太宰
太宰
中也
太宰
そう云って、私達はまた沈黙する。雨音だけが響いていた。
太宰
私はそう云ってから中也の頬に手を添えた。そしてそっと口付ける。触れるだけの、優しい口付け。
中也
太宰
私は其れから、中也をぎゅっと抱きしめた。温かい体温を感じる。
『君が此んなに優しくて、暖かい人だなんて知らなかった』
だって昔は、私が君に悪戯をして、何時も怒らせていたものね。
君は屹度、ずっと昔から優しくて暖かい人だったのだろう卦度、其れをちゃんと受け取れるのは随分時間が経ってからになってしまった。
本当に、暖かい。
嗚呼でも、少し寂しいな。
君が私に、悪態を吐かないなんて。
寂しいな