空中ブランコ乗り

僕はそらねこ。

あるサーカスで、空中ブランコ乗りとして活躍している。

僕の特技は3回宙返り。並のブランコ乗りでは基本2回宙返りがやっとなので、この技はかなり人気がある。

ブランコを思いっきり降って、あちらのブランコへ3回回りながら移る。

観客席からは割れるような拍手が聞こえる。

「お客さんからの絶対的な人気」 それが、僕の生きがいだった。

ある日、僕たちのサーカス団が、港町のカーニバルで技を披露することになった。

ステージの影から観客席を覗く。

次の日、町は『かもめが3回宙返りに成功した』という話題でもちきりだった。

本当なのか…！？

凄い…！

これで3回宙返りが出来る人は"2人"になったんだな

それまで騒いでいた人も、町の真ん中にある看板を見ると動揺を隠せなかったようだ。

『今夜、そらねこは4回宙返りをやります。』

それからは、かもめさんの話をし出す人はいなくなった。

そして、夜。

もうすぐ出番の僕は、ステージの影で待機する。

そして僕の出番。

ブランコに乗り、観客を見下ろす。

のっきさんからもらった薬を、口にした。

3回目を成功させた後、観客たちは思わず息を呑んだ。

そして……

たっぷり余裕を残して…白鳥のような滑らかな回転で4回宙返りを成功させた僕。

観客席には、泣いて肩を叩き合う人たちが。

ねぇ、聞いた？

あの有名なブランコ乗りのそらねこが、突然消息を絶ったんですって。

聞いた聞いた！

おかしな話だよなぁ。

何せあの4回宙返りが成功した後から姿が見つからないって言うじゃない！

どうしたのかしら？

そういえば、

あのサーカスの大テントのてっぺんに

この間、白鳥が止まっていたんですって。

白鳥が？珍しいな。

もしかしたら……

それが、そらねこかも＿＿？