電車をおりて、先に待っていたみんなと合流することができた。
そのまま、会場である河川敷方面へぞろぞろと歩き出す。
私
モブ
赤葦京治
モブ
会場に近づくにつれて周りが祭り1色の雰囲気になり、私たちのテンションも高まっていく。
(席が近いだけの謎メンだったけど、すごく楽しいな)
夏休みフィルターがかかってるのかもしれないけれど、浴衣を着て歩いているこの道中でさえ、幸せな青春のひとときに思えた。
いい夏の思い出になりそうな予感。
絶景ではないがそこそこ見やすい坂の上の方に場所取りすることができたので、打ち上げ開始までみんなで屋台をまわることにした。
屋台を見ながら食べ歩きすること1時間。
私は、体に異変を感じていた。
(…さっき電車に乗る前に踏まれた足、結構痛いかも。)
祭りの雰囲気に飲まれてなんとなく気付かないふりをしていたが、さすがに1時間以上歩き続けているとそろそろキツくなってきた。
みんなに置いていかれないように、必死に慣れない下駄を引きずるように歩く。
しかし、屋台通りはどこもかしこも押し合うような混雑っぷり。
片足を庇うようにして歩く速さでは追いつけなくなり、一瞬目を離した隙に前にいたみんなが見えなくなってしまった。
どうしよう、ここではぐれたらまずい。
そう思った時、
斜め横から力強く腕を引かれる。
赤葦京治
(え、あかあし…………)
(もしかして異変に気づいて隣に来てくれた……?)
私
はぐれなくてよかったとほっとしながら、 でも歩けるから大丈夫、と言おうとすると
赤葦の腕が私の腰を支えるようにするりと回ってきた。
私
赤葦京治
そのまま赤葦がリードするように、屋台の裏の茂みに向かって歩き出す。
赤葦京治
私
(赤葦の匂いがする。支えてくれてる手、大きくてがっしりしてる。 ……どうしよう何も考えられない!!!)
少し高さのある花壇に腰を下ろした。
私
赤葦京治
ごめんね、なんて口では言っておきながら。
申し訳なさと恥ずかしさともに膨らむ、
''もう少し、このまま二人きりでいたいかも''
という気持ち。
(足、良くなっても痛いふりしてれば、ずっとこのまま居られる?)
なんて、ずるい気持ちが湧いてくる。
1分経ったのか、10分経ったのか、時間の感覚がわからなくなったが、
ヒュ〜〜〜〜〜〜〜…
と、少し遠くの上空で突然口笛の音がしたかと思って顔を上げると
どーん。
花火が夜空に打ち上がった。
はっと我に返って、隣の赤葦を見る。
私
赤葦京治
このまま二人でいたいなんて思ってしまったけど、さすがにそろそろ行かなきゃだよね。
私
言いながら急いで立ち上がったが、赤葦は微動だにしない。
私
赤葦京治
赤葦京治
赤葦京治
私
赤葦京治
それ以上言わずに、じっと私の目を見つめる赤葦。
(…ずるい)
私、
わたし、
今、赤葦が考えてることわかるかもしれない。
たぶん、私と同じこと考えてる。
私
私
明るい屋台と屋台の隙間から部分的に見える、向こう側の空に打ち上がっている花火。
鑑賞スポットとは全く呼べない場所だけど、 今は、今だけは私たちのベストポジションになってると思う。
フッ、と赤葦の目尻が下がって、柔らかな声で囁いた。
赤葦京治
fin.
おもちからひとこと
おもち
おもち
次回更新もよろしくお願いいたします🥰
コメント
4件
やば、最後の赤葦の言葉はずるい、 惚れてまうやろ!?
あかーし!最後のそれはずるい! とても最高でした👍😭👏✨