太宰
大学内の廊下をふらふらと歩きながら、私は呟く。なんだか頭が痛い気がする。多分低気圧の所為だ。
太宰
このまま講義をしても善いのだが、集中力が持続しないし生徒たちにも迷惑をかけてしまうかもしれない。
私は研究室に戻ることにした。幸い今日は午後の講義が2コマあるだけだし、其れ迄には回復するだろう……と、思っていた。
太宰
私は机に突っ伏して、呟く。講義開始の時間が近付いても、一向に良くなる気配がない。寧ろ悪化してきた様な気がする。
太宰
今日は早退しよう。私はそう決めて、鞄からスマートフォンを取り出すとグループLINEにメッセージを送った。
『すみません。頭が痛いので早退します』
太宰
私は1人で帰路を歩きながら呟いた。頭痛は治まるどころかどんどん酷くなるし、雨まで降り始めた。もう最悪だ。
こんな日に限って傘を持っていない。天気予報くらい見ておけば良かったなあなんて思いながら、私はトボトボと歩くしかないのだった。
太宰
少し歩いたところで、少し先を歩く見知った後ろ姿を見つけた。私は慌ててその人に声を掛ける。
太宰
私がそう呼ぶと彼はこちらを振り向いた。そして私の顔を見るなり目を丸くして言った。
中也
太宰
私はよろよろと歩いて、そのまま中也に飛び込んだ。
中也
中也は私を受け止めて、背中を摩りながら言う。其れがとても心地好くて、私は思わず目を閉じた。
中也
太宰
中也
太宰
中也
中也はそう言って私を支えながら歩き出した。私も其れに合わせて歩くが、如何せん頭が痛くて上手く歩けない。
そんな私に気付いたのか、中也が「大丈夫か?」と声を掛けてくる。
太宰
私はそう答えて、また目を閉じた。頭が痛いのに、眠ってしまいたいような不思議な感覚だ。
そんな私の様子を見た中也は、少し考えた後私に言った。
中也
太宰
正直歩くのは辛いけれど、此の儘でいる訳にもいかない。如何しよう。と迷っていると、身体がふわりと浮く感覚。
太宰
私は驚いて目を見開く。
中也
中也はそう言って私を背負って歩き始めた。
少し恥ずかしいけれど、身体が怠くて上手く歩けない今の状態では此れが最善だろう。私は大人しく背負われた儘でいることにした。
太宰
中也
中也はそう云って笑う。其れを聞いて私は少し安心した。そして暫くして、中也の住むマンションに着いた。
私は中也に背負われた儘でエレベーターに乗って部屋へと向かう。中也は部屋の前迄行くと、鍵を開けた。
中也は靴を脱ぎ、私を背負ったままリビングのソファに腰掛けた。そして私をゆっくりと下ろすと、キッチンの方へと歩いて行った。
中也
太宰
私は薬を水と一緒に流し込む。薬が効く迄少し時間が掛かりそうだ。そんなことを考えていると、中也が口を開いた。
中也
太宰
私がそう答えると、中也は少し考え込んでから言った。
中也
そんな中也の後ろ姿をぼーっと見ていると、キッチンの方から何やら良い香りがしてきた。
其の香りに釣られるようにしてゆっくりと起き上がると、中也がお店に居る時のように、ハーブティーとお菓子をお盆に乗せて持ってきた。
中也
太宰
私はそう云ってハーブティーに口を付ける。其の儘ゆっくりと飲むと、身体が温まって、ほっとする様な気がする。
そして今度はお菓子を1口食べると、少し元気が出た気がした。そんな私を見て中也は安心した様に笑う。
太宰
私はハーブティーを飲みながら、お菓子をまた1つ手に取る。其れはナッツが沢山入ったマドレーヌだ。
中也
中也
太宰
私はマドレーヌをまた一口齧る。
しっとりとした生地の中に入っているアーモンドを噛むと、香ばしい風味がしてとても美味しい。
リンデンティーを飲むと、鼻に抜けていく優しい香りに癒された。
太宰
中也
太宰
そんな私を見て中也は笑う。少し元気が出たからか、何時もの様に軽口を叩ける様になった。其れが嬉しくて、私は其の儘マドレーヌを食べ進める。
太宰
ふと窓の外を見ると雨はすっかり上がっていて、夕陽が射している。此れなら帰れそうだ。
太宰
中也
太宰
私がそう云うと、中也は驚いた様に目を見開いた。そして少し悲しそうな顔をする。そんな顔を見て私は思わずドキリとする。
何故そんな顔をするのだろう……と思っていると、中也は口を開いた。
中也
そんな中也に、私は思わず首を傾げる。
太宰
私がそう云うと、中也は深い溜め息をついた後、少し目線を外して言った。
中也
太宰
私は思わず聞き返す。すると中也は顔を真っ赤にして、「いや……その、」と言葉を濁した。そして其れから意を決した様に私を見据えて言った。
中也
中也
中也はそう云ってそっぽを向いた。私はそんな中也をぽかんと見つめる。暫くして、漸く言葉の意味を理解した。
太宰
中也
私が言葉に詰まっていると、中也が拗ねた様な口調で云う。そして私に背を向けてキッチンの方へ歩いて行く。
私は慌てて立ち上がって中也に抱き着いた。そしてそのまま口を開く。
太宰
中也
中也は驚いて振り返る。其の時の顔が余りにおかしくて、私は思わず笑ってしまった。
中也
中也は顔を更に赤くしてそう云う。其の顔が可愛くて私はまた笑ってしまって、中也は拗ねてしまったのだった。
コメント
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コメント失礼します。主様の描くストーリーとても素敵です!見てるこっちもドキドキしちゃいました!