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テラーノベルの小説コンテスト 第3回テノコン 2024年7月1日〜9月30日まで

御田 誠(みた まこと)

コラ、悠斗!

止まった時を動かしてくれたのは、風間悠斗と名の付く生き物を叱るマコちゃんの声だった

御田 誠(みた まこと)

Playは同意が無きゃしちゃダメだって

御田 誠(みた まこと)

授業で習わなかったの!?

結構本気で怒っているらしく、いつもより声が低くなっている

べシッと俺の代わりに風間悠斗の手を叩き落としてくれた

風間 悠斗(かざま ゆうと)

あ、ご、ごめんなさい!

注意を受けた風間悠斗は、焦った風に素早く謝った

それが何となく腑に落ちない

さっき俺にCommandを出したのは、本当にこの男なのだろうか?

風間 悠斗(かざま ゆうと)

あの...

風間 悠斗(かざま ゆうと)

体調、どうですか?

支倉 秦司(はせくら しんじ)

はあ?

支倉 秦司(はせくら しんじ)

ンなもん、最悪に決まって...

支倉 秦司(はせくら しんじ)

...嘘だろ

あんなにしんどかった体が、幾分かマシになっている

素性も分からない男のCommandで、俺のSub性は満足してるって言うのか?

笑えない

本当、Subは気持ちが悪くて笑えない程寒気がする

俺は飲み損ねていたカクテルを一気に体へ流し込んだ

支倉 秦司(はせくら しんじ)

言っとくけど

支倉 秦司(はせくら しんじ)

お前のCommandで良くなった訳じゃないからな

支倉 秦司(はせくら しんじ)

Domなら誰でも良かったんだよ

御田 誠(みた まこと)

秦ちゃん...

風間 悠斗(かざま ゆうと)

良くなったなら、それで良いんです

風間 悠斗(かざま ゆうと)

誠さん、俺にも同じのください

御田 誠(みた まこと)

えぇ、分かったわ

何だか調子が狂う

さっきから、この男が何者なのか全く掴めない

風間悠斗って名前の人間だって事は分かっている

分からないのは、俺にCommandを出したのが本当にこの男なのかどうかだった

さっきのCommandは、威圧感みたいな物が大きかった

だが、隣に座る風間悠斗からはそんなもの微塵も感じられない

穏やかで、見るからに優しそうで、あんな強いCommandがコイツに出せるとは思えない

それとも、DomのCommandは皆そう感じるのか?

産まれて初めて...いや、正確には初めてじゃないが、Commandを使われた

けれど"俺"に向けられたCommandは、風間悠斗のものが初めてだった

御田 誠(みた まこと)

はい、どうぞ

風間 悠斗(かざま ゆうと)

ありがとうございます

支倉 秦司(はせくら しんじ)

...マコちゃん、違うの頂戴

御田 誠(みた まこと)

はいはい

風間 悠斗(かざま ゆうと)

あ、誠さん!

風間 悠斗(かざま ゆうと)

アルコールは弱いやつにしてあげて下さい

御田 誠(みた まこと)

え?

支倉 秦司(はせくら しんじ)

はあぁ?

マコちゃんは驚いた表情で、俺は怪訝な表情で風間悠斗に視線を送る

コイツは今、俺の飲み物に対して言ったのか?

支倉 秦司(はせくら しんじ)

何でお前に決められなきゃいけねーんだよ

風間 悠斗(かざま ゆうと)

体の心配をしているからです

支倉 秦司(はせくら しんじ)

それこそ

支倉 秦司(はせくら しんじ)

何でお前に心配されなきゃなんねーの

風間悠斗は真剣な表情を向けてくる

だが、俺にとってはどんな表情でも苛つく事に変わりは無い

初めて会った他人に心配されるなんて、不愉快でしかない

支倉 秦司(はせくら しんじ)

大体、心配してる奴が無許可でCommand使うかよ

風間 悠斗(かざま ゆうと)

心配だからCommandを使ったんです!

少し煽る様な言い方をしたら風間悠斗の何かに触れたらしく、さっきよりも強い声で返答してきた

目の前のDomにCommandを使われた事実が頭にこびり付いて、その強い声に少し萎縮してしまう

支倉 秦司(はせくら しんじ)

ッ、何言ってんだ

支倉 秦司(はせくら しんじ)

見え透いた嘘言ってんじゃねぇよ!

風間 悠斗(かざま ゆうと)

支倉さんの体がどんだけ危ない状態か分かってますか!?

風間 悠斗(かざま ゆうと)

いつ倒れても...

風間 悠斗(かざま ゆうと)

いつ悪質なDomに襲われてもおかしくない状態なんですよ!?

支倉 秦司(はせくら しんじ)

そんな事言って

支倉 秦司(はせくら しんじ)

お前がその悪質なDomだろーが!

支倉 秦司(はせくら しんじ)

無許可でCommand使いやがって

支倉 秦司(はせくら しんじ)

俺は...

支倉 秦司(はせくら しんじ)

俺は命令に従って喜ぶマゾじゃねぇんだよ!

風間 悠斗(かざま ゆうと)

支倉さ

御田 誠(みた まこと)

そこまでよ!

パンッ!と手を叩いて、マコちゃんは俺達の仲裁に入った

少し驚いてマコちゃんを見ると、いつものニマニマ笑顔はどこかに消えていた

御田 誠(みた まこと)

2人共、少しは落ち着いて

風間 悠斗(かざま ゆうと)

す、すみません...

御田 誠(みた まこと)

秦ちゃんも

御田 誠(みた まこと)

このお店にはDomの子もSubの子も沢山来てくれるの

御田 誠(みた まこと)

秦ちゃんがSubを嫌っているのは知ってるけど

御田 誠(みた まこと)

お客様を傷付ける様な事を言うのは許せないわ

真剣なマコちゃんの表情に罰が悪くなる

周りを見れば、店内のほとんどの奴が俺と風間悠斗のやり取りを見ていた

支倉 秦司(はせくら しんじ)

...悪かったよ

御田 誠(みた まこと)

喧嘩するなら奥の部屋貸してあげるから

御田 誠(みた まこと)

あんまりここで大声出さないでくれるかしら?

支倉 秦司(はせくら しんじ)

良いよ、もう萎えたし帰る

風間 悠斗(かざま ゆうと)

支倉さん!

御田 誠(みた まこと)

秦ちゃん

御田 誠(みた まこと)

そんな状態で帰るのはダメよ

風間悠斗の言葉を遮って、マコちゃんがピシャリと言い放った

俺は出口に向かいかけた足を引っ込め、マコちゃんに向き直る

支倉 秦司(はせくら しんじ)

何でだよ

御田 誠(みた まこと)

そのまま帰ったら、アナタ絶対Sub dropに陥るわ

"Sub drop"とはSubが不安定な状態に陥る事だ

強烈な不安や緊張などから、虚無感や倦怠感などを引き起こしてしまう

気を失ったり、酷いと死んでしまう事もあるそうだ

支倉 秦司(はせくら しんじ)

...なんねぇよ

御田 誠(みた まこと)

いいえ、絶対になる

御田 誠(みた まこと)

大人しく悠斗と奥の部屋に行きなさい

有無を言わさないマコちゃんの声に、俺は少し怯んでしまう

支倉 秦司(はせくら しんじ)

くそ...何で俺が...

御田 誠(みた まこと)

つべこべ言わない

御田 誠(みた まこと)

悠斗を部屋まで案内してあげて

支倉 秦司(はせくら しんじ)

...チッ、分かったよ

マコちゃんには世話になっている

だから店の中で問題を起こすのは俺も本意じゃない

風間 悠斗(かざま ゆうと)

誠さん...

御田 誠(みた まこと)

大丈夫よ、悠斗

御田 誠(みた まこと)

秦ちゃんの事、任せたわね

風間 悠斗(かざま ゆうと)

...はい!

2人の会話を聞こえないフリして、俺は足早に店の奥へと進んで行った

風間 悠斗(かざま ゆうと)

わぁ、凄い...

風間 悠斗(かざま ゆうと)

立派なオフィスですね

店の奥にある従業員用の休憩フロアに入った風間悠斗の第一声は間抜けな声だった

マコちゃんに言われたから仕方なく連れてきたが、こんな得体の知れない奴と2人きりなんてゴメンだ

支倉 秦司(はせくら しんじ)

じゃあ帰って良い?

風間 悠斗(かざま ゆうと)

えっ

支倉 秦司(はせくら しんじ)

もう興醒めだし

支倉 秦司(はせくら しんじ)

何も話す事なんか無いだろ

1秒でも早くコイツから離れたかった俺は早口に告げて踵を返す

風間 悠斗(かざま ゆうと)

"Stay"(待って)

支倉 秦司(はせくら しんじ)

ぐっ

またCommandだ

耳にその音が入った瞬間、体がピタリと動かなくなる

じわじわと色んな感情が滲み出し、俺はギリッと歯を食いしばった

支倉 秦司(はせくら しんじ)

お前...いい加減にしろよ

風間 悠斗(かざま ゆうと)

ごめんなさい

風間 悠斗(かざま ゆうと)

でも、ちゃんと話を聞いて欲しいんです!

支倉 秦司(はせくら しんじ)

だから、嫌だって言ってんだろ!

風間 悠斗(かざま ゆうと)

ダメです

風間 悠斗(かざま ゆうと)

聞いてください、支倉さん

風間 悠斗(かざま ゆうと)

貴方にとって悪い話じゃないんですから

支倉 秦司(はせくら しんじ)

そんなもん関係ねぇ

支倉 秦司(はせくら しんじ)

俺は帰る!

風間 悠斗(かざま ゆうと)

"Shush"(口を閉じて)

支倉 秦司(はせくら しんじ)

ッ...ッ!

少し強めにCommandが出される

俺は何も言い返せずに押し黙るしかない

あぁ、やっぱり違和感がある

穏やかに話している声と、Commandを発する声に微妙な違いがあった

風間悠斗はその体の中に何かを飼っている

表に出ている無害な男は偽物だ

反抗したい気持ちの中で、俺は冷静にそんな事を考えた

風間 悠斗(かざま ゆうと)

支倉さん"Listen"(聞いて)

支倉 秦司(はせくら しんじ)

くっ...ぅ

風間 悠斗(かざま ゆうと)

最後まで聞いてくれたら

風間 悠斗(かざま ゆうと)

沢山...沢山褒めてあげますから

「そんなもんで喜ぶか!」

そう叫んでやりたいのに、俺の口は全く動こうとしなかった

さっきのCommandがまだ効いているのかもしれない

...いや、違う

"褒める"って単語を聞いた時、俺は褒められる事を期待してしまったんだ

風間 悠斗(かざま ゆうと)

"Come"(傍に来て)

"風間悠斗の傍に居てはいけない"

俺の理性はそう告げている

傍に居たら暴かれてしまう

卑しい自分の本当の性を...本来在るべく自分の姿を

そんなのは絶対に嫌だった

支倉 秦司(はせくら しんじ)

...くそッ

なのに、俺の体は吸い込まれる様に風間悠斗へ歩み寄っていた

ーNEXTー

跪くのはお前の方だッ!!

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