『 半 透 明 の 君 へ 』
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その瞬間 心の底から
" しまった "
と思った
窓から見える桜を見下ろしながら
廊下の角を曲がろうとしたのがいけなかった。
前方からやってきた生徒と
不注意で思いっきりぶつかってしまった。
しかし 、
俺が今顔面蒼白になっている理由はそこじゃない 。
問題なのはぶつかった相手だった 。
まさか 。
ずっと密かに絵のモデルにしてた陸上部のエース _
篠瀬 君と衝突してしまうなんて 。
はずみで落としたスケッチブックを急いで拾おうとするけれど
春の風がいたずらに紙をめくる 。
一見冷たく見えるほどの端正な顔立ちの篠瀬君は 、
勝手に描かれた自分の絵を見て思いっきり固まっている 。
… 終わった 。
怒られる事を覚悟してじっと篠瀬君の様子を見守る 。
だけど
彼は怒るでもなく気持ち悪がるでもなく
予想外の反応を俺に見せた 。
「 なんでだよ … 」
静かなつぶやきと共に
ガラス玉のように美しい琥珀色の瞳から _
ぽろっと一粒の涙が溢れた 。
驚いて
『 え … ? 』
思わず心の声が顔に出た 。
篠瀬君はこの学校で1番有名な人 。
だけど心ここにあらずな時もある不思議な人 。
そんな篠瀬君の美しい涙を …
私"だけ"が見てしまった 。
それは _
桜が綺麗なある放課後の出来事だった _
コメント
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わ わ 大 好 き な 小 説 だ か ら と て も う れ し い で す 🥹💭 続 き ま っ て ま す 🙌🏻♩️♡