菊江楼

六人 , それも全員成人男性となれば広い空間が必要な訳で 。

俺達が案内されたのは , 此の旅館で最も広い菊の間 。

俺だけなのだろうか … あの違和感を感じたのは 。

受付で見掛けた男性のみならず , この部屋に来るまでに出会った 数人のお客さん全員顔が見れなかった 。

角度の問題だとは思うが , そう何人も続くと不気味に思える 。 … それに , 俺達の貸切では無かったのか ?

コンコン

カタン

お膳を隅に纏めて談笑していれば , ちぐの姿が無い事に気が付く 。

まぜの言葉で定点カメラに手を伸ばそうとするが , カメラが見当たらない 。

場所違ったか ?

パリン ____

俺の右側にあたる位置の窓が , 粉々になっている 。

動揺している俺を他所に , 外の壁から黒い何かが這い上がって来た 。

一か八かに賭けて , スマホを其れ目掛けて投げ , あっきぃ達の方へと駆ける 。

痛みは感じるのか , 当たった箇所を押さえて悶絶している 。

押さえているあれは手 … なのか ? ドロドロしていて , どこがどの部位なのかも分からない 。

皆が推測している間にも , ドロドロとした形容しがたい化け物が 壁を這って上って来る 。

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