コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
さくしゃ
さくしゃ
迫る足音
加速する鼓動
シャークん
シャークん
相手は拳銃を持っていた
勝ち目がない
シャークん
シャークん
ドンッ
酷く鈍い重い音
刹那、歩を進めていた足は縺れ
力の抜けた人形のように倒れ込んだ
シャークん
あまりの一瞬の出来事で、痛いとか苦しいとかは感じなかった
自分の伏した地面に赤い華が滲んでいくのを、ただ眺めるだけ
俺が
現実が
…嗟牙が
積み上げてきたものが瞬く間に揺らぎ薄らぎ
無に還っていく
少しずつ
ㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤ
少し、ずつ…
︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎
きんとき
意識が朦朧とする中
俺を撃った男がそう零したのを確かに聞き取った
それは酷く耳馴染みのある言葉
あぁ、どうして忘れていたんだろう
「シャークん」
それは間違いなく俺を指す言葉
ただ1人しか知り得ない言葉
その名を知るのは、俺の、ただ1人の
ㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤ
相手が俺のすぐそばにいることは肌で感じる
声を出すこと
指を、視線を動かすこと
渦巻くこの感情を理解する時間
そんなもの、現実は与えてくれない
きんとき
きんとき
きんとき
きんとき
きんとき
きんとき
きんとき
懐かしい名前を繰り返し発する声は
俺の手に感じた一雫の冷たさは
強烈な眠気に抗う術もなく
永遠の闇に溶けていった
ㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤ
きんとき
きんとき
人間、死んだ後は聴覚が最後まで残ると聞いたことがある
だが、今は死んでからだいぶ時間が経っていた
聞こえるはずがない
ㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤ
俺も
大好きだよ
︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎
''きんとき''