籠鳥恋雲

あの日以来

朝のHRが終わると私たちはこの階段で話をする

あー、

聞いちゃだめだったかな

けんしん君の顔、一瞬歪んだ。

今まで悟ったような顔して一切表情崩さなかったのに

これだめだったか

1番気になってたことなんだけどな…

違うよ

なにか隠したよ、

自分の気持ち、なにか隠してる。

チャイムの音が鳴る

何となく

気になる。もう少し知りたい。

右隣のひなと話しながら

左斜め前に座って窓の外をずっと眺めてる けんしん君をちらちらと見てしまう

さっき、確実になにか自分の気持ちを隠した

人間らしいけんしん君を初めて見たから 余計と気になってしまう

そうやって窓の外をずっと見てて

何を考えてるの？

けんしん君にとって、人って何？

自分自身って、なに？

日常ってなに？

ききたいことがたくさんあるのに

それを聞いてしまったら崩れてしまいそうな関係で

君は離れていきそうで

怖いから。

…

けんしん君の過去なんて、

知ったところでどうしようもないよね。

私、何聞こうとしてるんだろ

別に、私が気にする話じゃないし…。

…あれ

ひな、一瞬揺らいでたけど。

なにかに動揺してるのかな、

私の考えすぎ？

やっぱり

ひな、なんかおかしい

一生懸命会話を紡いでる感じ。

でも、今ここで聞いちゃいけない気がする。

やっぱり、なんか変。

でも、だめ、本人から言わせないと

ちゃんと本人が言いたいって時に 言った言葉を受け止めないと

次の日

なんでそんなに必死なんだろう

ゆめの恋愛はゆめが自分でしたいことをしたい時にすればいい

もちろん相談だとかはいいけど…

それにしてもひなは不自然すぎる…

ひなはそのままトイレを飛び出し どこかへ行ってしまった

でも、それから確実に、ひなの私たちに対する行動は変わってしまった

ひなはまるで聞こえてないかのように どこかへ行ってしまった

価値観の違い

あーまた。けんしん君の言葉が頭の中に浮かぶ

好きな人が被ったんだろう。何となく予想はついてるけど、それをひなから聞いた訳では無い。

だから確実じゃないことは言えない。

放課後

教室の後戸を振り返ると

けんしん君がいた

あれ、涙が…

どうせ嘘なんだろうな

人って、そういうもんでしょ。？

けんしん君だって、ちゃんと人なんだから

人と自分を区別しないで。

けんしん君も同じだよ。