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今回は素敵なコンテスト開催をありがとうございました!参加出来てとても楽しかったです🙌✨ そして春海暗賞受賞ありがとうございます!😭💕 春海暗さんのお話も今回見ることが出来て凄く嬉しかったです!今回主催者さん、参加者の皆さんの素敵な小説を見ることが出来てとても良かったです🥰
春海暗
春海暗
春海暗
春海暗
春海暗賞
春海暗
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春海暗
春海暗
春海暗
春海暗
〇〇賞
春海暗
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春海暗
春海暗
最優秀賞
春海暗
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春海暗
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春海暗
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窓際の前から二列目。俺の特等席。
ここから見える大きな背中が好きだった。
俺よりも背が高いから黒板は見にくいし、顔面偏差値も高いからその後ろの俺も目立つ。
でも、窓際だから揺れる綺麗な青髪も、たまに外を眺める横顔も、全部好きだなと思った。
ただ、
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軽い口調で告げられたタイムリミット。
俺がこの景色を見られるのはあと、1週間だった。
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土日を挟んで、月曜日。君にいきなり話しかけられた。
いつも眺めているだけで話したことなんてほぼ無いに等しい。
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大きな手が俺の頭を触った。それがどうにも心地よくて、つい頬を緩めそうになる。
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君は俺の頭に手を触れたまま、外を眺めていた。
頬杖を着いたその横顔はいつも見るより綺麗で。
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俺の耳には、不自然に早くなった心の音しか聞こえていなかった。
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火曜日。小さくあくびをしながら、また彼と挨拶を交わした。
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ぷくっと頬を膨らませて拗ねた顔をされる。なにか気に触ることをしただろうか
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そう言うと、更に不貞腐れたような顔になる。普段はかっこいいのに、なんだか新鮮だった。これがギャップというやつだろうか。
頬杖をついて、窓の外を見た。
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すっかり癖になったから気にしてもいなかった。
でも、確かに好きかもしれない。
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水曜日。二人で窓の外を眺めていた時、ふと、君が独り言のように話し出した。
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うるさく聞こえていた蝉の声が、涙を流して泣いている悲痛な声に聞こえてくる。
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この騒がしいなき声の中に、ないていない蝉はいるのだろうか。
もう恋を諦めて、なくことすらしない蝉は。
そんなことを考えて自分と重ねる。
最後までなき続ける蝉とは反対に、俺は、目の前の君にアピールすることすらできない。
鳴かない臆病な蝉が、結ばれることなんてないんだ。
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独り言のように呟いた。
初めて見た君の横顔。あんなに大きな背中なのに、顔は小さくて。儚くて、美しかった。
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臆病な俺は、その声を音にして発することは出来ない。
まだ、窓の外を見つめる青色の瞳には誰を映しているんだろう。
木曜日。教室に入ると、君は別の人を見ていた。
可愛らしい小柄な女の子。
今日も爽やかな挨拶が聞けると思った俺は、静かに君の後ろに座った。
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君が俺に気づいてくれた。でもすぐに視線は戻ってしまう。明らかに君に好意があるその女の子は、楽しそうに君と話している。
窓の外では、相変わらず蝉がないていた。
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ねぇ。君は知ってるかな。
「恋に焦がれて鳴く蝉よりも、泣かぬ蛍が身を焦がす」
じゃあ、鳴かない蝉はどうなるんだろうね。密かに大好きな人のことを想って亡くなっちゃうのかな。
でも、これだけは言える。恋に焦がれて鳴く蝉も、泣かぬ蛍も、必ず同じくらいの思いはあると思う。
目の前で楽しそうに話すこの女の子も、俺と同じくらい、それ以上に君のことが好きなんだろう。
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言葉にはできないその言葉。
俺は鳴かない蝉だから、密かに君を想ってる。
それでも黒い感情は消えてなくなりはしなかった。
今日の空は、曇りだ。
金曜日。今日は、君との最後の日。
今日が終わってしまえば、君と話すことなんて無いだろう。
チャイムが鳴って、扉が開くまでが、俺に残された時間。
君に会いたいけど、今日が終わって欲しくなくて、教室に入るのを拒否する足を引きずりながら、また、君の後ろに座る。
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なんでも許してしまえそうな笑顔。それでも、俺の表情は晴れなかった。
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俺の目を真っ直ぐ見つめる君が言った。
思わず、目を丸くする。
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そう言われ、自分の頬に手を触れる。汗はかいてないのに体温は上昇し続けている。
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悪戯っぽく笑うその表情に胸が高鳴る。
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その続きまで言おうとして、口をそっと塞がれる。
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『蝉ってさ、雄しか鳴かないらしいよ。』
その言葉を思い出して、笑みがこぼれる。
俺が鳴くのは、君にとっては違うみたいだ。
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少し俯きながら答えると、頬に大きな手が添えられた。
そのまま、包み込まれる。
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耳に優しい声が響く。
案外、雌は声が大きい蝉じゃなくて、好きな声に惹かれているのかもしれない。
好きってだけで、誰の声よりも大きく聞こえるものだから。
騒がしい教室の隅で静かに鳴く蝉に、俺は惹かれてしまったんだ。
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君の名前を呼んでから、そっと目を閉じる。
夏の蝉がなく頃。君と過ごす1週間は、弾けた水音と共に終わりを告げた。